49.坊主さんの後悔①
「なんだ?!なんだってんだ?!何で俺がこんなことに・・・。」
数時間前のこと───。
俺はギルドで請けたDランク星3の依頼に失敗し、罰金を払っていた。そこに“Cランク”の言葉が飛び込んできたんだ。ギルドに登録して7年、コツコツ頑張ってきて、3年前にようやくDランクになれた。そんな俺が、喉から手が出るほど欲しいCランクに、すんなりとなれるほどの実力の持ち主を見てやろうと思い、振り向くと、そこには綺麗な顔立ちの少女ともとれるような小さく華奢な少年がいた。
「なっ!!!あいつがCランクだと!」
なぜだ!なぜだ!心の中に沸々と何かが込み上げる。つい力強く奴の肩を掴んでしまった。
「おい、ボウズ!」
俺が掴んだ奴の肩は、本当に小さく、こんな奴がなぜCランクなのか、ますます分からなくなった。
「おい、お前だよ!」
ボウズは、肩を掴まれているのに、自分のことだと思わないのか反応が鈍い。
「プッ。」
俺の顔を見たボウズがなぜか吹き出した。俺を見て笑ったのか!?バカにされたのか?!俺がDランクだから?ふざけやがって!
「おい、何を笑ってやがる!」
「いえ、別に。ところで、手をどけてもらえますか?」
ボウズは肩におかれた手を指さして、どけるように言う。
女じゃあるまいし、肩に手を置いたぐらいで軽蔑するような視線を向けやがって!
「あと、そんなに大きな声を出さなくても聞こえます。周りの方に迷惑ですよ。」
「なっ、なっ!!!」
周りの奴等から笑い声が漏れる。自分の顔がカァーッと赤くなるのが分かる。プチンッ!何かが切れた。
「このクソガキが!バカにしやがって!!」
依頼に失敗したこと、Dランクから中々上がれないこと、周りの奴等からバカにされていること、色々なことが心の中でぐちゃぐちゃになり、あっさりとCランクを手にしたコイツにぶつけようと、俺はつい少年に殴りかかってしまった。
一回りも違うであろう小さな子どもに・・・。
ハッ───!
俺は何てバカなことを!コイツは何も悪くないのに!腕が止まらねぇ!俺が振りあげた腕は勢いよく少年に向かう。
ダメだ──!
「おいっ!何をしている!」
俺の勢いづいた腕が、少年の目の前でピタリと止まった。
「ったく、こんな子どもに拳を握るなんて、お前血の気が多すぎるぞ。」
「ギ、ギルドマスター!」
ギルマスが俺の腕を止めてくれたのだ。
「いいか!ここは依頼を請ける場所であって喧嘩をする場所じゃない。ましてやコイツは同じギルドの仲間だ。なぜ、喧嘩をする必要がある?こいつのランクにケチをつけるならその判断を下した俺に文句を言え!」
「チッ!」
ギルマスに怒られてしまって、ついつい舌打ちしてしまった。
あぁ、俺は何てことを・・・。舌打ちしてしまったことで、ギルマスの顔を見づらかった俺はギルドを出て行った。
ギルドを出てからも、恥ずかしさや怒りで、腸が煮えくりかえっていた俺。あのボウズのせいだ!アイツのせいで、恥をかいたんだ。アイツのせいでギルマスに怒られてしまった。アイツのせいで!!
今思えば、完全な八つ当たりだった。ただ、どうも俺はすぐにカァッとなってしまう性分らしく、あの時は完全に少年のせいだと思い込んでいたんだ。そして、少年にガツンと言ってやらないと気がすまず、少年が出てくるのを待った。
ギルドから出てきた少年は、街の外れの方へと歩いていく。街から少し離れたところで、声をかけると決めた俺は、少年の後ろをつけて行った。
「?!」
そろそろ声をかけようかと思っていたところ、少年が急に道をそれた。俺は慌てて走りだし、小道に入る。
「どこだ?!どこに行った?!」
少年の姿を探し、キョロキョロと辺りを見回す。少年を見つけられない焦りからか、口調が荒くなる。
「野郎!どこに行きやがった!」
ポトッ───。
「痛っ!」
なんだ?頭の上に何かが落ちてきた。痛みが走ったので、慌てて俺はその何かを払い落とした。
「痛っ!!」
払い落とした手にも、何かのトゲのようなものが刺さり、痛そうに呻く俺。攻撃にあったのかと思い、ギョロギョロと辺りを探すと、小さな生き物と目が合った──。




