48.見知らぬ料理
「な、なんだ、これは!パンが柔らかいぞ。」
バウムさんは、柔らかくなったパンをフォークでつつく。
「これはフレンチトーストです。」
「フレンチトースト?」
「はい。そのまま食べてもいいですし、ハルカラの汁をかけて食べても美味しいですよ。」
「ハルカラの汁だと?!食べられるのか?!」
「はい、食べられますよ。」
私は余っていたハルカラの汁を指につけ、それを舐めて見せる。
「う~ん!甘くて美味しい!」
「・・・。」
バウムさんは、そのままの状態のフレンチトーストから食べるようだ。フォークで切り、口に入れる。
「?!」
バウムさんの目が大きく開かれる。それから、ハルカラの汁をかけ食べるようだ。一瞬、躊躇したのち、思いきって口に入れた。
「っ!!美味いっ!!!」
余程美味しかったのか、一気にフレンチトーストが無くなっていく。
「ハルカラの汁をかけると、また違った美味さだ!ハルカラの汁がこんなに美味いとは・・・このパンは何と言ったかの??」
「フレンチトーストです。」
「フレンチトーストか。明日もこれを作ってくれ!」
「分かりました。ぜひ、スープも食べてみて下さい。」
「あ、あぁ。」
バウムさんは、ガリドルの骨が気になっているのか、スープをスプーンにとり、少しだけ口に含む。
「!!!!!」
口に含んだ瞬間、驚いた表情になり、凄い勢いで食べ出した。
「バウムさん、そんなに急いで食べたら、体に悪いですよ!」
あっという間に具材を食べ終わり、両手で器を持って一気に飲み干した。
「ふぅっ!うまかった!」
「それはよかったです。」
「小僧は変わった料理を知っとるんだな。」
「僕の故郷の料理ですよ。」
「小僧、どこから来た?」
「産まれは分かりませんが、ノトスという島から来ました。」
「ノトスだと?!まさか・・・あの島に人が住んでおったとは・・・。信じられん!・・・そうか、何も知られていない島だ、小僧の力といい、料理といい信じがたいが嘘とは思えん。」
信じられないように私を見るバウムさんに、私はニコリと微笑む。私の笑顔につられてか、バウムさんも呆れたような笑顔で私を見る。食事を終え暖炉の部屋へ戻るバウムさん。私は食事の片付けをし、バウムさんへ挨拶をする。
「スープはたくさん作ってあるので、夜にでも温めて飲んで下さい。夜ご飯と明日の朝ご飯の用意は大丈夫ですか?」
「あぁ、今晩は久しぶりに息子夫婦が来るからな。明日からは3食分の用意を頼む。」
「分かりました。」
明日は息子さん夫婦が昼までいるそうなので、昼過ぎにバウムさんの家に行くことになった。バウムさんの家を出て、まっすぐ街へ向かおうとしていたら、ダウルが思い出したように話しかけてきた。
「リディ、アイツわすれテル?」
「えっ?あいつ?・・・あっ!」




