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天界で育った少女の物語  作者: 斗瑚
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47.キースの食材

検索でも調べたが、どうやらこの世界の主食はパンのようだ。たくさんの材料の横にカゴに入った固めのパンが二個置いてある。固さを見るために、そっと触ってみる。


「固い・・・。固いパンにはやっぱりアレよね。よしっ!」


初めての食事作りは、キース版フレンチトーストとミルクスープを作ることにした。


まずはパンを切って、器にガリドルと呼ばれる魔物の卵と、ニューク、そして砂糖の代わりにハルカラという実の中にあるドロッとした汁を入れる。どうやら、キースの人は、ハルカラの実は食べるけど、中の汁は捨てて洗い流しちゃうみたい。実はコレ、地球で言う蜂蜜なんだって。甘くて美味しいのにもったいない!


材料を混ぜたらパンをしばらく浸しておき、その間にミルクスープを作ることにした。


ガリドルの骨付き肉から肉だけを削ぎ落とし、血を軽く洗い流す。骨を砕き、鍋に骨と青ネギ代わりのグリンギ、生姜代わりのジョヤ、そして水を入れ、鶏ガラスープを作る。煮込んでいる間に、具材に取りかかる。紫色のでこぼこした果物のようなものはジャミー、鮮やかなピンク色の細長い人参のようなものはロット、ジャガイモと人参のような味だって。ジャミーとロットに玉ねぎ代わりのアニオン、きのこ代わりのモッシュームを適当な大きさに切る。


鶏ガラスープの煮込みを待っている間、椅子に座り一息ついていると、バウムさんがやってきた。


「お?なんじゃ?サボっとるのか?」


「バウムさん!違いますよ!」


私はバウムさんに手を差し出し、バウムさんを支える。


「今、スープを煮込んでいるんです。」


「スープ?」


「はい!ガリドルの骨で出汁をとっています。」


ガリドルと聞いた途端、バウムさんの顔が青冷めたと思ったら真っ赤になった。


「ガリドルの骨じゃと?!お前は獣の餌をワシに食べさせるのか!」


「いえ、違います!えっと、僕の故郷ではこういった骨で出汁を取り、スープを作るんです!」


「お前の故郷で?」


「はい!」


「・・・だが、骨を食べるんだろう?あんな固いものワシは食えんぞ!」


「違いますよ!骨は出汁を取るだけです。」


「出汁?出汁とはなんだ?」


「鍋に水と骨を入れることで、美味しい肉の旨味がでるんですよ。」


「よく分からんが、本当に食えるんだな?!」


「もちろんです!」


バウムさんは、それ以上は何も言わず、ただ私の作業を見ていた。私は、煮たった鶏ガラスープを少し味見してみる。


「美味しいっ!」


“なにこの鶏さん!この短時間ですごく味がでてる!”


何も入ってない鍋に綺麗な布を敷き、スープをこす。これでいい具合に鶏の旨味がでたスープの出来上がり。今度はこのスープに具材を入れて、具材に火を通す。


「まだ出来んのか!」


「すみません!もう少し待って下さい。」


スープを煮込んでいる間に、今度は卵液に浸していたパンを焼いていく。


「小僧何をしておる!」


「バタタを使うんですが?」


「なぜ中を?そんなもん食えたもんじゃないだろう。」


「パンを焼くときに使うと美味しいんですよ。」


バタタはバナナのような形をしており、中身がバターとして使えるようなのだが、キースの人はこれをそのまま食べて、脂っこくて食べられないと認識しているようで、逆にバタタの皮はチーズのような味がして、こちらの方を好んで食べているようだ。


「う~ん、いい香り!」


鍋にバタタの実の部分を少し切り落とし、熱で溶かすと、バターのいい香りが漂ってくる。そこに卵液に浸していたパンを置き、焦げ目がつくまで焼いていく。


隣で煮込んでいた具材にもいい具合に火が通り、ニュークを入れ、さらに煮込む。


「よしっ!できたっ!」


焦げ目がついたフレンチトーストをお皿に乗せ、横にハルカラの汁を添える。それからミルクスープの味を見て、胡椒がないことを残念に思いながら、器に盛り、完成だ。


「どうぞ、お召し上がり下さい。」








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