45.開き直る
「バウムさん?」
唖然としているバウムさんに再度声をかける。
「ん?──コホンッ!水が満たせるのは分かった。だが、わしが頼みたいのは水汲みだけではない。掃除や洗濯など家のことを全部じゃ。お前にできるかの?」
「もちろん!任せて下さい!」
「うっ、ならば試しにやってみろ。」
「はい!ありがとうございます!」
私はまず、掃除から始めることにした。実は家事全般得意なのよね。前世では、毎日のように家政婦さんのお手伝いをしてたから。カヨさん元気かな?
「あのバウムさん、掃除の道具はありますか?」
「道具?あぁ、ボロ布と桶ならそこにある。」
「・・・ありがとうございます。」
“キースの掃除って拭き掃除だけなのかな?検索っと。ええっと、やっぱり拭き掃除だけなのね。とにかく拭く!だって。”
「よしっ!」
気合いを入れて袖まくりをし、掃除を始める。まずは手始めにたまったホコリを風魔法でかき集める。
“リディ、風マホウ使うノカ?”
“うん。もう細かいことは気にしないことにしたの。最年少Cランクになったことで目立っちゃったし、もう坊主さんみたいな人に目をつけられちゃってるしね。それに、私の性格上、隠そうとしてもボロがでちゃうから、無理に隠そうとしないことにしたわ。せっかく魔法が使えるんだし、使わなきゃもったいないわよね!楽しまなきゃ!ふふ、開きなおると楽よね。”
優しい風が渦となり、家中のホコリを一ヵ所に集める。
「なんじゃ、なんじゃ!今、風が・・・?!小僧!風魔法も使えるのか?!」
私はニコッと笑う。
「バウムさん、ゴミはどうしたらいいですか?」
「あ、あぁ、ホコリはそのまま外に捨ててくれたらいい。」
「分かりました。」
私は風魔法で窓を開け、そのままホコリを外へ飛ばす。それから、拭き掃除へと取りかかる。水魔法で霧状の水を吹き掛け、とにかく拭きまくる。
“せめて、たわしがあったら、もっとピカピカに磨けるのに。”
中々落ちない汚れと戦いながら、黙々と拭く。
「お、おい。そんなに必死に拭かんでもいいぞ。」
「あの、石鹸や洗剤はないですよね?布がすごく汚れてしまったので。」
「石鹸?洗剤?なんじゃ、それは?代わりの布ならたくさんあるぞい。」
“やっぱりないのか。”
「ありがとうございます。」
それから、しばらく拭きに吹きまくって、掃除を終えた。
「う~ん、イマイチだけど、拭き掃除じゃこれが限界よね。」
“リディ様、床がピカピカしてますよ。”
“そぉ?よく見ると頑固な汚れが結構残ってるのよね。”
“リディ、ソウジじょうず。”
“うふ。ありがとう。”
「バウムさん!洗濯するものどこにありますか?」
「汚れとる服は裏口のところにおいてあるわい。」
「裏口はこちらですか?」
「・・・まて、わしも行く。」




