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天界で育った少女の物語  作者: 斗瑚
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44.バウムさん

「あ、あのっ!ギルドから来ましたリドと言います。バウムさんですか?」


私は、椅子に腰かけた男性に声をかける。よく見ると、白髪頭の男性は、とても鍛えられた体つきをしており、その腕は私のウエストぐらいの太さがある。男性はチラッと私の方へ視線を向けると、すぐに視線を戻し、ため息を吐く。


「ギルドのやつらめ。こんな子どもを寄越しおって。小僧、お前のような子どもに頼むことは何もないわ、帰れ!」


「そんな・・・、帰れなんて。」


「・・・おぉ!1つだけお前に頼むことがあったわ。」


「なんですか?」


「ギルドに戻って別の奴を寄越せと伝えてもらおうか。」


「困ります!僕はギルドで正式に依頼を請けたんです。何もしないで帰るなんてできません!」


「なんだ?違約金を心配しとるのか?わしからギルドに言っとくから心配はいらん。理由を話せばお前のような子どもから金は取らんだろう。」


「そうじゃなくて!」


「なんだというんだ、まったく。」


「バウムさん、僕を試しに使ってくれませんか?」


「何だと?」


「一度だけでいいんです。僕にチャンスを下さい!お願いします!」


「・・・。」


バウムさんは、杖を手に持ち、立ち上がろうとする。慌てて手を差し出し、バウムさんを支える私を見て、バウムさんは“ついてこい。”と呟いた。


「はい!」


奥の部屋に入ると料理場があり、大きな樽が3つ並んでいた。


「お前にこの樽の中を満たすことができるか?」


「3つともですか?」


「そうだ!水汲み場はこの家から1()()歩いた所にある。お前にできるか?本来なら、わしが()()()()を引いて水汲みをしておるんだ。お前にギューニが引けるか?出来たとしても樽をどうやって持ち上げる?どうだ?出来ないだろう?無理だと分かったなら、さっさと帰れ!」


“1()()()()()()?”


“リディ様、1レロは距離のことです。ギューニは荷車を引く動物ですよ。”


“ありがとう、アロ。距離に動物・・・。そうだ!フゥ兄様がサーチ機能を、パワーアップしてくれたって言ってたわよね。検索できるかな?”


私は頭の中でグー○ルのような検索画面を思い浮かべる。


“わぁ。何これ!”


天界では、そんなに使うことのなかった検索だけど、久しぶりに開いてみると、画面がリニューアルされていた。早速、検索してみようとするとメッセージが表示された。


≪やぁ、僕の可愛いリディ。元気かい?フゥ兄様はいつもリディを見守っているからね。さて、パワーアップしたサーチ機能だけど、キースで分からないことがあったら、検索をかけてみて。地球の物に絡めて検索結果がでるからね。体に気をつけて、頑張るんだよ。キミの兄様より リディへ愛を込めて。≫


“フゥ兄様・・・。ありがとう。”


少し潤んだ目をそっと拭きながら、検索を続ける。


“えっと、1レロは・・・1kmのことね。ギューニは、牛のような動物。確かに牛みたいな名前だもんね。牛と違って食べることはできないが、その乳は美味しくニュークと呼ばれ、一般家庭でよく飲まれているだって。そっか、ニュークってギューニのミルクなのね。”


「──いっ!おいっ!小僧!聞いとるのか!出来んのなら、さっさと帰れ!」


「いえ、やります!」


「そうだろ!ほれ、出口はこっちだ・・・?!何だと?!」


ドアを開けて、私を見送るつもりだったバウムさんが、驚いたように振り向く。


「はい、終わりました!」


「?!」


私の終わったの一言に、バウムさんはさらに驚く。


「な、何を寝ぼけたことを言っとるか!」


「いえ、確認して下さい。」


私は樽の方を見る。あまりに堂々と“終わった”と言う私の言葉に、バウムさんは半信半疑で樽を覗く。


「──っ?!み、水が・・・、た、樽が・・・。」


一瞬の戸惑いのあと、 物凄い早さで私の方を振り向き、私を見る。


「小僧!何をした!!」


「な、何をって、水魔法を使っただけですよ。」


「水魔法・・・、そうか、お前はその歳で水魔法が使えるのか。」


「はい。」


「いや、いくら水魔法が使えるといっても、お前のような子どもがこんな大量な水を一気に出せるはずがない!それに、お前は、今一言も詠唱を・・・いや、呪文すら唱えてない。」


「水を出すことなら、詠唱も呪文もなくてできるんで。」


私は手の平の上に大きな水の塊を出して見せる。


「なっ──っ?!」


言葉にならないほど、驚いているバウムさん。私は水の塊を消し、バウムさんに微笑む。


「どうですか?バウムさん。僕に依頼を請けさせて頂けませんか?」






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