41.Cランク
「リドくん、お待たせしました。えぇっと、リドくんはCランク・・・えっ?!Cランク?!ちょっと待っててね!」
テラさんは、カウンターの奥へと走っていった。周りがやけにざわついている。
「おいっ、今Cランクって言わなかったか?!」
「Cランク?あんなガキんちょが?」
どうやら私のランクのことでざわつきだしたようだ。ルイズさん、目立ってます!
“リディさま、“堂々と”ですよ。”
“うん、そうだね。”
私は胸を張り、テラさんが戻ってくるのを待った。
「ごめんなさい、お待たせして。リドくんは、Cランクなので、本日よりBランクの星1つまでの依頼を請けることができるわ。このプレートが身分証代わりになるので、失くさないようにね。」
「ありがとうございます。」
私はチェーンのついたプレートを受け取った。銅色のドッグタグのようなプレートの表には、剣と盾が合体したような形の真ん中に蠍のような生き物が刻印されているギルドのエンブレムが施されており、裏には、名前、年齢、ランクなど個人の情報が刻印されていた。
「プレートは、ランクによって色分けされているのよ。CからEランクは銅、Bランクは銀、AとSランクは金で、Sランクはさらに宝玉が埋め込まれるわ。売却すると、お城を建てられるぐらい価値のある宝玉がね。だから頑張ってSランクを目指してね。」
「僕には無理ですよ。」
「何言ってるのよ!最年少記録保持者が!」
「最年少記録?」
「そう!ギルドは誰でも登録できるけど、ランクなんて簡単にあがるもんじゃないわ。ましてや、10才の子どもがCランクなんてありえない!未だかつてないことなのよ!大人の優秀そうな人でもDランク始まりでCランクからなんて滅多にいないんだから!」
“ルイズさ~ん!!”
「だから、リドくんならいけるかもよ!まぁ、Sランクなんて世界中の冒険者を集めても5人しかいないんだけどね。」
テラさんが、身を乗り出し、急に私に顔を近づけて小声になった。
「うちのギルマスも怪我さえしなかったら、Sランクにいけてたんだけど。」
「そうなんですね。」
テラさんはまた元の姿勢に戻り、説明を始めた。
「依頼は、あそこにあるリクエストボードで確認できるわ。内容をよく見て、自分の力にあった依頼を請けた方がいいわよ。請けたい依頼が見つかったら、その依頼のナンバープレートを受付に持ってきてね。」
「はい。」
「あぁ、そうそう。身分証のプレートは偽造ができないように施されているから気を付けてね。」
「そんなことしませんよ。」
「クスッ。なら、大丈夫ね。」
私は、テラさんにお礼を言って、早速、依頼を確認しに行った。リクエストボードの前で依頼を確認していると、誰かに声をかけられた。
「おい、ボウズ!」
“ボウズ?私のこと?”
「おい、お前だよ!」
肩をガシリと掴まれ、呼ばれた方に振り向くと、筋肉ムキムキの坊主頭の男がたっていた。ダウルとアロが私の肩を掴んだ失礼な男に飛びかかろうとしたが、急に動物が出てきたら、騒ぎになるから堪えてもらった。
「プッ。」
“ボウズって、自分が坊主じゃない。”
心の中でつっこんでつい吹き出してしまった。人の肩を急に掴むような失礼な男に礼儀なんていらないならね。
「おい、何を笑ってやがる!」
「いえ、別に。ところで、手をどけてもらえますか?」
肩におかれた手を指さして、どけるように言う。
「あと、そんなに大きな声を出さなくても聞こえます。周りの方に迷惑ですよ。」
「なっ、なっ!!!」
男の顔が真っ赤になり、こめかみには青筋が。
“うわ、やっちゃったかな?でも、こういう失礼な男って嫌いなんだもん。”
“リディ、アイツやっていいか?”
“ダウル我慢して。”
“ならば、私が!”
“アロも!”
「このクソガキが!バカにしやがって!!」
男が私に殴りかかろうとする。
“なんて短気なの!だから嫌いよ!”
触るのも嫌なので魔法で吹っ飛ばそうかと考えていると声がかかった。
「おいっ!何をしている!」
男の振り下ろされた腕が私の顔の前でピタリととまった。




