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天界で育った少女の物語  作者: 斗瑚
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34.海の中へ

翌朝、朝早くから出発し、2時間半ほどで島の端っこに着いた。島の端っこは、砂浜ではなく、岩礁海岸になっていた。


「海だぁ!・・・よね?」


海じゃないかもしれないと思い、水を少し舐めてみる。


「しょっぱい!やっぱり海だぁ。問題はここからだよねぇ。船はないし、飛んでいくわけにもいかないし、水の中を進もうか。」


「水の中ですか?」


「うん。水の中なら誰にも見られないでしょ?水中を移動して、陸にあがる時は・・・さすがに人がいるかもしれないから、時の魔法の出番ね。」


「時の魔法?」


「アロは時の魔法を見たことないの?」


「そうですね、アニマレーゼ(魂のある道具)の中には時の能力を持っている者もいるらしいですが、アニマレーゼ(魂のある道具)を同時に持った人がいないので使っているところを見たことがないんですよ。リディ様なら同時に使うことも可能でしょうから、今から楽しみです。」


「早く会えるといいね。私の時の魔法は時間を止めることができるんだよ。止めるって言っても3秒だけだけどね。だから、陸にあがる時に3秒だけ時を止めるから、その間に上陸すれば、海から出る姿を見られることはないでしょ。ダウル、おいで。」


アロは首に巻きついたまま、ダウルは小さくなって私の腕の中へ。いざ、海の中へ出発っ!


アクアバロン(水風船)


全身をまるごと水の泡で包み、海の中へ飛び込む。水中は、地上と同様に見たことのない世界だった。


「すごく綺麗・・・。」


海底には輝く石のようなものがたくさん散らばっており、キラキラと輝いて光を放っていたり、羽のある魚や、ヘリコプターのような生物、小さな金魚のような魚の大群が優雅に泳いでいたりと見るもの全てに感動してしまう。


「アロ、陸が見える?」


「はい。なんとか。」


「なら、潮に流されないように進路をお願い。」


「分かりました!お任せください。」


「水の中だから、少しスピードが出せるわね。」


ダウルとアロに肩に乗ってもらい、正面に向かって泳ぎ出した。


「天然の水族館ね。すごいわ。」


私が海の中の世界に感動していると、ダウルが声をかけてきた。


「リディ、コトバ。陸にアガルと人間いる。リディ、男の子。コトバ気をつける。」


「そうね、コホンッ!そうだね。僕は男の子だからね。名前も変えなくちゃ。う~ん・・・リド!リドはどう?」


「リド・・・イイ名前。」


「リド様・・・どんな名前もお似合いです!」


「ダウルとアロは喋らないようにね。念話で話そう。」


「「わかった(分かりました)。」」


それから、アロに進路を修正してもらいながら、ひたすら泳ぎ続ける私。


「リド、ダイジョウブか?」


「全然、平気!」


「リド様、あと5kmほどで陸に到着かと思われます。そのまま真っ直ぐお進み下さい。」


「分かった。」


アロに言われた通り、真っ直ぐ進み続けていると、何かが近づいてくる気配がした。


「リド様、左の方向3km、かなりのスピードでこちらに近づいてきております。」


私はコクンと頷く。


「気配を消すわよ・・・。」


声を発すると気づかれるため、私達は念話で話す。


“気配を消しても近づいてくるってことは、私達に気づいてる訳じゃなさそうね。”


“はい。”


“油断イケナイ。”


“うん。”


私達は気配を消し、じっと何かが通りすぎるのを待った。


“きた!”


何かはものすごい勢いで私達の前を通りすぎる。余りの勢いに私達を包んでいるバブル(風船)が回転しながら流される。


「きゃっ!」


つい、声がでてしまった私。慌てて口を押さえる。何かは動きを止めた。


「ドイル、どうした?」


「何か聞こえなかったか?」


「いや、何も。」


「そうか?人の声のようなものが聞こえたが・・・。」


「それはないだろ。人間が海の中で話すなんて聞いたことがないぞ。そもそも、海の中じゃ息もできねぇし。」


「それもそうだな、悪い。」


「気にするな。行こう。」


魚のような人のような何かは、ものすごいスピードでまた移動を始めた。私達はしばらくの間、気配を消して、ただじっと待っていた。


「はぁ~、もう大丈夫よね?ごめんなさい!」


「気にスルな。」


「そうですよ、リド様。何も問題ありません。」


「クス。ありがとう。だけどびっくりしたわ。今のって、もしかして魚人?本当にいるのね。」


「間違いありませんね。魚人族です。」


「あれ?何かしら?」


海底を見ると白とブルーが混じった色合いの腕輪のようなものが落ちていた。


「綺麗な色ね。」


「リド行こう。」


「そうね、行きましょう。」


「リド、コトバ。」


「コホンッ、行こう。」


手に持っていた腕輪のようなものを、自分のポーチになおし、また進み始めた私たち。しばらく泳ぎ続けると、コンクリートの壁のようなものが見えてきた。水面を見上げると船のようなものも浮かんでる。


「どうやら港のようだね。」


私は浮上しやすそうな場所を探すため、キョロキョロ見回す。


「あそこはどう?」


「大丈夫です。周りに気配がありません。」


「念のため、時の魔法を使おう。テムス アレテ(時よとまれ)


素早く上陸する私たち。時が動きだす前に、急いで近くの建物の陰に移動する。魔法が切れ、時が動き出すと、ザワザワと人の声や物音が聞こえだした。




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