旅立ち
エル様と一緒に天光の間へと来た私。扉の前には見送りに来てくれた神様たちが勢揃いしていた。私はエル様の腕の中から降りる。
「リディ、とうとうこの日が来てしまったんだね…」
アト兄様が私を抱き寄せ、頭を撫で、抱きしめてくれる。
「男の子のリディも可愛すぎる!いいかい、変な人にはついていっちゃダメだよ!」
「うん。ついていかないよ。」
「リディ、誕生日おめでとう。」
「ありがとう。アト兄様。」
「キミに生命の神アトラスより、命の加護を。どうか体を大切に。」
アト兄様が私の額に手をあてると、何か温かいものが体の中へ流れてくる。
「ほっほっほっ。アトラスに先を越されたのぉ。ワシ、一応、長なんじゃがなぁ。リディ、ワシらはいつもキミを見守っとるよ。誕生日おめでとう。」
「ありがとう、じぃじ。」
「創造の神ジリウスより、創造の加護を。キミが造りだす物を楽しみにしているよ。」
じぃじが私の額に手をあてる。
「次は私だね!リディ、私が鍛えてやったんだ!負けるんじゃないよ!」
「うん!カーラ姉様!私負けない!」
「誕生日おめでとう、リディ。戦いの神カーラリアより、戦いの加護を。絶対に諦めるな!」
カーラ姉様が私の額に手をあてる。
「リディ、キミがいなくなるのは寂しいよ。」
「ラウ兄様…」
私はラウ兄様にギュッと抱きつく。
「いいかい、時空の歪みには気をつけるんだよ。」
「はい、ラウ兄様。」
「リディ、誕生日おめでとう。時空の神ラウムールより、時の加護を。」
ラウムール様が私の額に手をあてる。
「誕生日おめでとう、リディ。鑑定の力をパワーアップしておいたからね。」
「ありがとう!フゥ兄様大好き!」
「知識の神フラールより、知識の加護を。きっと色々な事が見えるはず…頑張れ!」
フゥ兄様が私の額に手をあてる。
「男の子の格好をしていても、あなたの輝きは隠せてないわね。さすが、私のリディだわ。お誕生日おめでとう。」
ヴィーナリス様はそっと私の頬に手を添え、微笑む。
「ヴィーナ姉様…」
「美愛の神ヴィーナリスより、美愛の加護を。どうかあなたに素晴らしい縁がありますように…」
ヴィーナ姉様が私の額に手をあてる。
「リディ、行ってしまうのね…」
「エテル姉様…」
「どうか気をつけて。あなたが家族と会えるのを願っているわ。」
「うん!」
「お誕生日おめでとう。豊穣の神エテルシナより、豊穣の加護を。実りの大地があなたの心と体を癒してくれるわ。」
エテル姉様が私の額に手をあてる。神々からもらった力が全身を巡るのが分かる。優しく包みこまれているみたいだ。
「リディ、誕生日おめでとう。」
「ありがとう、エル様。」
エル様は膝をついて、私の肩に手を置く。
「いいか、本当にどうしようもなくなったら俺を呼べ。」
「でも…」
「迷うな。俺はお前を守りたい。いいな、お前以外に俺を呼び出せる者はいないからな。約束だ。」
こんなに真剣なエル様見たことがない。
「うん、わかった。」
私が頷くと、エル様は優しく微笑み、私の額に手をあてた。
「お前に精霊王エルフィートの加護を…リディ、行ってこい!」
ここで暮らして3年、期間は短いけれど、神様たちは本当に私を愛してくれた。それこそ本当の家族みたいに。笑顔でいること、幸せになることが、私を愛してくれる人への恩返しになると思ってる。だから、離れるのは寂しいけれど、笑顔で応えなきゃ。
私が地上に通じる扉の前に立つと、扉が音を立てて開き出した。私はみんなの方を向き、背筋を伸ばす。
「みんな、今までありがとうございました!たくさん力を与えてくれて…たくさん知識を与えてくれて…何よりたくさん愛を与えてくれて、本当にありがとう!いつかまた会えるよね!私、絶対幸せになるから!みんなのこと忘れないから!また会えたら家族になってね!」
我慢していた涙が頬をつたう。
「本当に、本当に…」
お別れするのが寂しくて、辛くて、涙がこぼれてしまう。泣きたくないのに…笑顔でお別れを言いたいのに…心配したダウルが私の頬を舐める。そうだね、笑わなくちゃ。私の笑顔を覚えててもらうんだ。私は涙を拭き、みんなにとびっきりの笑顔を見せる。
「みんな大好きだよ!行ってきます!」
みんなに手を振りながら、扉に向かって走り出す。不安と期待を胸に地上への一歩を踏み出すのであった。




