アロの能力
アロ…お気に入りの場所で出会った私の新しいお友達。地上に降りる時に、アロの力を使いこなせていた方がいいと言われ、早速、私がいつも魔法を練習している所に来た。ここは、ミナが私のために雲を作る要領で作ってくれた、精霊の国上空付近に位置する練習場だ。
「リディ。」
「エル様!」
「ほぉ、そいつがアニマレーゼか。」
虹の丘でアロと出会った時、精霊の国の外で魔法を使ったことがバレて、ちょっとした騒ぎになったのだ。私に何かあったのかと、大精霊たちが私を探しに来た時には、すでにじぃじの神殿で話を聞いた後だった。
「エル様、昨日は心配かけてごめんなさい…」
「そう思うなら…」
エル様は私を抱き上げる。
「今日は俺と過ごせ。いいな?」
「うん!」
最初はドキドキしていたエル様とのこんな会話も、今では慣れてこんな感じに。慣れって怖いよねぇ。
「で、こいつはどんな能力を持ってんだ?」
「えぇっとね、まずは武器かな。アロ。」
私はアロに手を伸ばす。アロが私の手に絡み付き、手のひらの中で動きを止めると、アロが輝きだし、剣へと変化した。不思議なことに、アロにどんな能力があるのか、どうやって能力を使えばいいのかが、すべて頭の中に浮かびあがってくるのだ。
「ほぉ、剣か。」
「これだけじゃないよ。ほら、長さもかえられるの。短剣にもなるし、他にも頭の中でイメージした武器に変化できるみたいなの。」
私は武器の形を頭の中でイメージし、アロの姿を槍、鎌、弓へと変化させる。アロを弓に変化させた時は、無限の矢が出てくるからすごいよね。アロさん、性能よすぎでしょ。
「これだけでも十分な能力だけどな。」
「あとはね、アロの牙には毒があるんだって。」
「毒だと?!」
「うん。眠り、麻痺、幻覚とか。」
「とかって、他にもあんのかよ。」
嬉しそうに話す私に、エル様は半ば呆れ返っている。
「すごいよね!」
私はわくわくする心を押さえきれず、エル様に興奮気味に言った。
「あぁ!俺の姫さんは無敵だな。」
エル様は私を高く抱き上げて笑ってる。
「エル様、アロの剣を試したいわ。今からカーラ姉様のところへ行ってもいい?」
「ダメだ。今日は俺と過ごす約束だろ?」
「う~~~、少しだけ!ダメ?」
「ダメだ。」
「む~~~!」
私は少しだけ拗ねてみる。
「あっはっは!アロの剣を試したいんだろ?これでどうだ?」
エル様が右手を下から上へ動かす。すると足元の雲から何本もの太い木が生えてきた。
「これに切りつけてみろ。」
「やった!ありがとう!エル様!」
私は嬉しくて、エル様の首にギュッと抱きつく。そして、エル様から降り、アロを手に絡み付かせ、剣をイメージした。それから、現れた剣を両手で持ち、構える。
「いくよ!」
シュンッ────!!
「うわっ!すごい切れ味だね。」
「ほぉ、なかなかだな。」
「これって魔法剣とかできるのかな?」
「やってみるか?」
エル様がパチンと指を鳴らして、剣に風を纏わしてくれた。
「あっ、自分でもできるのに!」
「いいじゃないか、ほれ、やってみろ。」
私は前を見据えて剣を振った。
スパンッ!!ズサササササッ───!
「?!」
呆然とする私。無理もない。1本を切るつもりが、エル様の風の威力が凄すぎて、剣から放たれた風の刃が残っていた木を全て倒してしまった。
「いいか、強すぎる力は余計な悲劇を生むからな。」
これを狙ってたみたいな言い方だけど、ここまでとは思ってなかったでしょと思いつつ、力のコントロールは大事だと胸にしまうことにした。
アロを色々な武器に変化させて、一通り試してみた私は、約束通りエル様と1日を過ごした。翌日からは、アロを使いこなせるように日々特訓に励んだ。剣だけでなく、槍、鎌、弓など、思い付く武器すべてを確実に使いこなせるように。もちろん、毒牙も含めてだ。毒牙の練習の時はじぃじに人にそっくりな傀儡を作ってもらったが、この傀儡が本物の人間に見えて毒を使うにはかなりの勇気がいった。だけど、地上では命を狙われるかもしれないので、慣れておいた方がいいだろうということで、今後の練習にはこの傀儡を取り入れることになった。流石に創造神のじぃじが作っただけあって、血の噴き出し方までリアルで最初のうちは随分うなされた。こうして残りの一年は、現実的な訓練を取り入れ、あっという間に月日が流れ、地上に降りる日がやってきたのだった。
 




