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天界で育った少女の物語  作者: 斗瑚
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生後3ヶ月

ルーナミアが産まれてから3ヶ月、ようやく首が座り始めた頃だ。


「・・・っ!かわい~っ!!ルーナすごいぞ!」


ルーナミアを抱き上げ、自分が左右に動くと自分を目で追うルーナミアに感動しているシュテファン。親バカならぬ兄バカである。


ルーナミアが産まれてからというもの、毎日のようにルーナミアと触れ合う時間を作っているシュテファン。


コンコンッ!ドアが開く。


「テファ!お前そろそろ剣術の時間だろ!」

「兄上!もう少し、もう少しだけ!」

「ダメだ!ルーナ、兄さんはすぐ戻ってくるからな」

「兄上ずる~い!」

「何がずるいだ!お前はもうルーナと遊んだだろ!ほら、行くぞ!」


そう言ってリチャードはシュテファンの襟首を掴み引きずって行く。


「ルーナ~~!!」


シュテファンだけではなく、父親はもちろんのこと、兄のリチャードとブライアン、そして祖父も毎日のようにルーナ愛を爆発させている。しかし、それだけではないのだ。父親の兄弟であるエルヴィスとウィリアム、そしてその子どもたちも時間を見つけてはルーナミアに会いにくる。


「ふふ。ルーナは幸せ者ね」


母であるオリビアがルーナミアに優しく微笑みかける。だが、その顔はすぐに不安気な顔に変わり、「どうかこの子をお守り下さい」と心の中で祈りながらルーナミアを撫でるオリビアであった。



☆☆☆



ここカルレナトゥス王国には、とても大きな湖がある。その湖は季節を問わず雪と氷に覆われており、氷華湖と呼ばれていた。


その名前の通り、湖の回りには色とりどりの氷の華が一面に咲いている。氷華は実をつけることもなく、摘んでしまうと溶けて無くなってしまうのだが、月光色の氷の華だけは違った。それは月光華と呼ばれ、摘んでしまうと溶けて無くなってしまうのは同じだが、月光華は唯一実をつけるのだ。その華の実からとれる宝玉はとても価値のあるもので、どんなに高価でもすぐに買い手が付くほどの逸品だ。


本来であれば数ヶ月で1、2本の月光華が咲くのだが、ルーナミアが産まれてから3ヶ月ですでに数十本の月光華が咲いている。しかも宝玉の質が今まで以上に素晴らしいのだ。この現象ゆえに、氷華姫の生まれ変わりがいるのではないかという噂が国中に溢れている。


“氷華姫”とはこの地を創ったと言われる神姫だ。とても美しい神姫は、この地の安寧のため、度々地上に降り立っていた。その時に人間の男と恋に落ちた神姫は、地上で生きることを決め、幸せに暮らした。そして幸せな神姫のまわりには、いつも氷の華が咲いていたそうだ。そのため“氷華姫”と呼ばれるようになったとか。伝承は物語として語り継がれ、民の間でも知らない者はいないため、今回の噂が広まったと考えられた。



コンコンッ


「レイ」

「君がそんな顔をしていては、ルーナが不安に思ってしまうよ」

「えぇ、そうね」


「ルーナ~!兄さんが戻ってきたぞ~!」

「リチャードか」

「ち、父上!」


先ほどシュテファンを連れて出ていったリチャードがデレながら入ってきた。


「普段のお前からは想像がつかないほどの態度だな」


と、笑いながらレイモンドが言う。


「それを言うなら父上こそ、ルーナの前だと残念なお姿になりますよ!」


と、言い返すリチャード。


「ふふ、どちらも似たようなものですよ。ねぇ、ルーナ」


オリビアは笑う。この幸せがいつまでも続きますようにと願いながら。



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