戦いの神
ラウムール様と共に、時の神殿へとやってきた私たちは、ラウムール様のアネラスらしき女性に案内され、大きな部屋へと入っていった。
部屋の中には大理石でできたような丸い石のテーブルと椅子がある。ラウムール様が指をパチンと鳴らすと、椅子の上に厚みのあるクッションが出てきた。ラウムール様はその上に私を座らせる。そして、ラウムール様も私の前に座った。
「さて…」
ラウムール様は手を顔の前で組み、深刻そうな顔になる。私は、少し不安になりながら、ラウムール様の言葉を待つ。
「…どんな話をしようか?」
“えっ…?”
ポカーンとして呆気に取られている私を見て、ラウムール様は笑う。
「クスクス。呆気に取られているリディも可愛いね。」
“やっぱり!”私は心の中で確信した。
「ん?やっぱりって?」
ブンブンと私は首を横に振る。
「お話中申し訳ありません。ラウムール様、リディ様に何かご用があったのでは?」
崩れ落ちていたエフィがラウムール様に問う。
「用?リディに会いたかっただけだよ。スノーの生まれ変わりならば、私の姫でもあるからね。」
「め?」
(姫?)
「可愛い妹ってことだよ。」
「むぅーま?」
(ラウムール様?)
「ラウでいいよ。なんだい?リディ。」
「のーま、んーあーね。」
(スノーラド様は、みんなに愛されていたんですね。)
「そうだね。彼女はまだ幼かったからね、皆可愛がっていたね。」
ラウ様が優しそうな表情になる。
「だけど、彼女は彼女。リディはリディだよ。確かに、スノーラドの生まれ変わりという理由も多少はあるが、生まれ変わりだから可愛いいのではなくて、リディだから可愛いいんだ。今までも、何度か生まれ変わりの者がいたが、誰も興味を示さなかった。だが、キミが天界にやってきた時に皆、何かを感じたんだろうね。落ち着きがないったらありゃしないよ。神なのにね。」
ラウムール様はクスクスと笑う。
「ほら、そこにも一人。」
ラウ様が私の後ろを見る。
「カーラリアいるんだろう。」
「やはり気づいていたか。」
後ろから声がしたと思ったら、ひょいッと私の体が宙に浮き、クルッと向きを変えられ、誰かに抱き締められた。ん?何だかこのパターン多くないか??
抱き締められたと思ったら、私の顔は弾力のある何かに埋められた。
「ん…!しぃ!」
(ん!!苦しいっ!)
「おいおい、カーラリア。リディが苦しんでるよ。」
「おっ?すまないね!」
私に謝り、声の主はアッハッハッと笑いながら、私を弾力のある何かから引き離す。
「私はカーラリア!カーラと呼んでおくれよ!」
私の目の前にいたのは、ほどよく引き締まった肉体が力強さを感じさせるような、とても美しい女の人だった。燃えるような赤い髪を1つに束ね豪快に笑っている。
「リディ、彼女は戦いの神だよ。」
「かーい?」
(戦い?)
「そうだよ!リディ。力をつけてから地上に戻るんだって?私が戦い方を教えてやるよ!」
「おいおい、リディには魔法があるだろ?戦い方なんて教えたら可愛いリディに傷がついてしまうよ。」
「何を言ってるんだい!可愛いからこそ、戦い方を教えるんじゃないか!魔法だけだと接近戦は厳しいからね!リディを守るためさ!」
“そっか、私命を狙われたんだっけ。うん!よしっ!ちょっと怖いけど…”
「ねーしーましゅ!」
(お願いします!)
「アッハッハッ!分かってるね!リディは!」
カーラ様は頭をグリグリと寄せながら、私を抱きしめる。
「うっ…」
コホンッとラウ様が咳払いをする。
「カーラリア。」
咳払いをされたカーラ様が私を見る。
「あぁ、悪い、悪い!どうも力加減が難しくてね!」
謝りながら、カーラ様は私の頭を撫でてくれる。優しさは伝わってくるのだが、力が強い。だけど、地球では大人の人に優しくされることなんてほとんどなかったから、こんなに可愛いがってくれて、心がくすぐったかった。




