天象の間
神殿を出てからしばらく歩いて行くと、とても大きな広間に出た。かなりの高さがある天井は、円錐のように奥が細くなっている。そこから無数の光が降り注いでいる様は、とても幻想的だ。
「リディ様、こちらは天象の間となっております。」
「てーま?」
(天象の間?)
「はい、こちらは神々の神殿の中央へ位置する広間となっておりまして、行きたい神殿を思い浮かべますと、扉が現れるようになっております。」
「だーもーの?」
(誰でも行けるの?)
「いえ、一度神殿に行ったことのある者、さらに神殿の主より許可を得た者だけに扉が開かれます。ただ、神々は転移が可能ですので、こちらを使うのは、アネラスたちや精霊界など各界からの使いの者のみとなりますが。リディ様もアトラス様の神殿でしたら扉が開かれますよ。」
「んーと?」
(ほんと?)
「えぇ、アトラス様より許可は頂いておりますので。」
それならばと、私はアトラス様の神殿を思い浮かべる。すると目の前に、光輝く銀色の扉が現れた。
「おーぃ!」
(すごぉい!)
ドキドキしながら扉を開けようとする私。私の手が扉に触れる瞬間、
「私のところへおいで。」
私の耳に声が響いた。私は驚いて扉から手を離す。すると、目の前の扉が消えた。
「あ…」
消えた扉を呆然と見ていると私の体が誰かに抱き上げられた。
「クスクス。驚かせて悪かったね。」
私は声の主の方へ振り向く。そこには肩まで伸びた髪がキラキラ輝く極上の笑顔があった。
“イ、イケメン!”
つい心で叫んでしまう。
「クスクス。ありがとう。」
イケメン様の笑顔が眩しすぎる。
「リディ様、こちらは、時空の神ラウムール様でございます。」
「むーま?」
(ラウムール様?)
「可愛いね。」と呟き、ラウムール様は私をギュッと抱きしめる。
「リディ、キミに会えて嬉しいよ。」
ラウムール様は私を見て微笑む。
「扉を潜りたいのかい?ならば、僕の神殿へ招待しよう。」
すると、目の前に紫色に輝く扉が現れた。
「さぁリディ、開けてごらん。」
私がラウムール様に抱き抱えられたまま、扉に触れると、扉がギーッと音を立てながら開かれる。
「行こうか。」
ラウムール様は、私を抱き抱えたまま扉の中へと入っていった。エフィとダウルも後ろからついてくる。
扉の中は、まっすぐな道になっていたが、氷の神殿の外とは少し違っていた。
“とーい?”
(時計?)
「分かるかい?ここは、色々な時が奏でられている“時の狭間”だよ。ここから、落ちたらどこかの時へ飛ばされるからね。気をつけるんだよ。」
「あい。」
(はい。)
私はラウムール様の服をギュッと掴む。
「クスクス。怖いのかい?ほら。」
ラウムール様は私を抱きなおし、私の腕をラウムール様の首にまわしやすいようにしてくれた。
「しっかりつかまりなさい。」
私はラウムール様の首に腕を回し、ギュッと抱きしめる。
「クスクス。やっぱり可愛い。」
と、小さな声でラウムール様が呟く。まさか、ラウムール様も?!と思いはしたが、何も言わなかった。ラウムール様は私の背中をポンポンと優しく叩き、そのまま進んでいった。
「ほら、着いたよ。」
ラウムール様に言われて振り向くと、目の前には、薄紫色の大きな神殿が建っていた。
「うーぁ!」
(うわぁ!)
「時の神殿へようこそ。さぁ、入ろうか。」




