魂の通り道
着替えが終わった私は、エフィに連れられて神殿の外へ出た。私の後ろからダウルもついてくる。
「あー!」
(うわぁ!)
神殿の外は花に囲まれており、出入口は花のアーチになっていた。
「しゅーね。」
(すごくきれいね。)
ダウルが「ふぉんっ!」と返事をしてくれる。
「さぁ、参りましょう。」
エフィが私の手を引いてくれようとすると、ダウルが「ふぉんっ!」と鳴いて私の首元の服を噛み、私を持ち上げたかと思うとポンと上空へ放り投げた。
「あぅ!」
突然のことで驚いた私は投げられるまま、宙へ浮かんだ!かと思うと落下した。“落ちる!”と思い、覚悟を決める私。
──もふっ──
“もふっ?”
恐る恐る目を開けると、柔らかい毛の中にいた。
「うー?」
(ダウル?)
「ふぉん!」
“ダウルの背中の毛…柔らかい?なんで?!”
ダウルの背中の毛は、ハリネズミのようにトゲトゲしているから痛そうなイメージだったのに、実際に触ったらすごくもふもふだった。確かに顔のあたりは柔らかかったけど、背中の毛は痛そうなのに。
「リディ様!大丈夫ですか??」
「ん。ぶーよ。」
(うん、大丈夫よ。)
「毛、毛は痛くないのですか?」
「ん。ぶー。」
(うん。大丈夫。)
エフィも不思議らしい。エフィがそっとダウルの毛に触るがやはりトゲトゲしていて、固く、痛いのだ。そして、よく見るとなぜか私の肌に触れる部分だけが柔らかくなっていた。
「た、確かに、リディ様に触れる部分だけ、柔らかくなっていますね。」
エフィはダウルの毛を触って確かめ、私の肌に触れる部分も確かめると安心したのか、ダウルに向いて注意した。
「ダウル!急にリディ様を放り投げるなんて危ないじゃないの!」
「ふぅ~ん…」
ダウルが“ごめんなさい”と言うように頭をさげる。
「わーいーね。あーと。」
(私を気づかってくれたのよね。ありがとう。)
「ふぉん!」
私がお礼を言うと、ダウルは元気よく返事をし、尻尾を振りだした。
「リディ様はお優しいですから、今回は許しますけど、次は許しませんからね!」
エフィに睨まれると、またしょんぼりするダウルが可愛いくて、ついつい笑ってしまった。
ダウルの背中に乗ったまま花のアーチをくぐる。神殿の敷地から一歩出ると、そこは不思議な空間になっていた。明るいのに色々な物が渦巻いているような感じで、何だか怖い。ダウルを掴む手に、思わず力が入る。
「ふぅ~ん。」
心配そうなダウル。
「ぶーよ。たぁい?めんね。」
(大丈夫よ。痛かった?ごめんね。)
私は怖さを隠して笑いかける。すると、エフィが立ち止まり私とダウルの方へ向き合う。
「リディ様はお分かりになるのですね。神殿の外は人や動物など命ある物の、魂の通り道となっておりますため、様々な感情が渦巻いております。今まで、神候補として来たものは、誰も魂の感情に気づく者はいなかったとアトラス様より聞いております。まぁ、本来は神になった者だけが分かるのですけどね。流石です、リディ様。」
エフィは私の方を見てニコリと微笑む。
「さぁ、参りましょう。あぁ、それとこの道を通る時は、道から外れないように気をつけて下さいね。」
ニコッと笑うと、エフィは、また前を向いて歩きだした。道から外れるとどうなるのか考えるだけで、背筋がゾッとする。私はしっかりとダウルにつかまった。




