大きな友達
“うっわぁ~!!”
アトラス様が案内してくれた神殿は、白とブルーを基調とした可愛らしい感じの神殿だった。
“すっごく可愛いです!”
「気にいってくれたならよかった」
“本当に、こんなに素敵な神殿を私が使わせてもらってもいいんですか?…私…神様じゃないのに…”
「この神殿はね、スノーラドが使っていた神殿なんだ。だから、他の誰よりもキミが使ってくれる方がいいよ。ほら、神殿のアネラスたちも嬉しそうでしょ」
アトラス様が向けた視線の先には、ピョンピョン跳ねて喜んでいる子たちが5人と綺麗な大人の女性が1人、それとパンダ?ハリネズミ?…う~ん、2匹を足して2で割った感じのすごく大きな動物が一匹いた。
「アネラスっていうのはね、神殿のお世話係のようなものだよ。この子たちはね、スノーラドがいなくなった後もこの神殿を管理してくれているんだ」
“何千年も主人がいないまま?スノーラド様の代わりの方はいらっしゃらなかったんですか?”
「う~ん、何度かスノーラドの代わりを考えたんだけど、この子たちは姿さえ見せなかったからね。自分たちが遣えたいと思わないとアネラスたちは姿を見せないんだよ。その権利がこの子たちにはあるからね」
“じゃあ、私には心を開いてくれたと?”
「そういうことだね」
アトラス様が私の方を見て微笑んでくれる。うん、何だか嬉しいぞ。私はアトラス様の腕の中から降りて、アネラスさん?たちの前にトコトコと歩いて行った。
「あーと。よーしゅ。」
“ありがとうございます!よろしくお願いします!”
言葉と心の中で挨拶&お礼をする私。すると、綺麗な女の人が一歩前に出て膝をつく。私と目線を合わせてくれたようだ。
「ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。私エフィと申します。よろしくお願い致します。」
綺麗な女の人は頭を下げ、私に微笑みかけてくれた。私も微笑みながら頭を下げる。おや?どうやら、彼女たちにも私の心の声が聞こえているようだ。
「「「「「「僕たちはね!」」」」」」
「ラオだよ。」
「リオです。」
「ル、ル、ルオ」
「レオだ。」
「ロオ。」
「「「「「よろしく!」」」」」
5人の男の子は、順番に1人ずつ前にでて自己紹介をしてくれた。
「よーしーねっ。」
“よろしくね”
うん、安心して会話ができる。よかった。
「ふぉんっ!!」
と、元気よく挨拶してくれたのは、パンダとハリネズミを足して2で割った感じの大きな動物さん。ふわふわの尻尾をパタパタしている。
「こーちゃ。いーい?」
“こんにちは、触ってもいい?”
パンダハリネズミさんは、いいよと言わんばかりに頭を下げてくれた。私はそぉっと、パンダハリネズミさんの鼻に触れる。
“ひんやりしてる。”
それから、口元に手を持って行き、ほっぺたのあたりを触らせてもらう。
“うわ~、柔らかい。”
頬のあたりは毛が短いのに柔らかく、ふわふわしていた。思わず頬を擦りよせてしまう私。すると、パンダハリネズミさんも私に頬をよせてくれる。
“う~、可愛い!それにしても見たことない動物だけど…”
「その子は霊獣だよ。よほどキミが気に入ったようだね。」
“名前は何て言うんですか?”
「名前?そんなものないよ。あえて呼ぶなら狼霊獣かな。」
“ろうって…狼っ?!パンダハリネズミじゃなかったの?!そう言われて見ると鼻がシュッとしてるし、足もそんなに短くないような…。”
「ふぅ~ん。」
「めんね!」
“あぁ!ごめんね。”
パンダハリネズミさんが悲しそうに鳴く。
“狼さんなのね。そっか…でも、狼霊獣さんって呼びにくいよね…う~ん、狼さん?いやいや。”
私は、狼霊獣さんの呼び方を考えだす。
“パンダ、ハリネズミ、狼…?狼は…ウルフ…?…パンダ…ウルフ…ハリネズミ…パンダウルフ…パンダウル…ダウルッ!!”
「ふぉんっ!!」
私が呼び名を心の中で勝手に思い付くと、狼霊獣さんは大きく一声鳴いた。
“えっ?気に入ってくれたの?”
「ふぉんっ!!」
“ダウルって呼んでもいいの?”
「ふぉんっ!!」
“ありがとう!ダウル。これからよろしくね。”
「ふぉんっ!!」
ダウルは私に頬をよせてくる。私も小さな腕でダウルの鼻を抱きしめる。
“うふ。嬉しいな。”
小さな私に大きな友達ができた。




