三日目(15)
ではボス戦です。次回からが本番ですが。一気にハードな曲面へ振り切ってしまうかどうかの分岐点となる回です。今回もそこそこ面白いよ! 面白と……いいな!
ヒュルルルルルルルルルルルルルルルルルゥ――――。
斜めになって落ちていく金糸雀號。
それは初日に要塞砦へ駆け上がったときのような――浮遊する感覚。
それは二日目に空中へ放り出された時のような――落下する感覚。
それはやっぱり初日や二日目に着地したときのような――――――ドッパッシャァァァン!
ひっくり返らないのが不思議なほどの、豪快な着地。
ビビビビーーッ♪
正面パネルに表示されるタイヤの危険表示。
本当に金糸雀號は、飛んで落ちてばかり居るな。
もうジェットエンジンでも積んだ方が、良いんじゃないかと思う。
でも奴らはスグ実装するから、絶対声に出しては言わないけど。
と言うより、今の猫みたいな着地って、既になんか付いてる証拠じゃんか。
昨日、「姿勢制御用推進装置点火!」とか冗談でも口走ってたし。
実際に逆噴射すらしてたから、多分高高度降下低高度開傘降下だってやってみせるだろな。
水中で使った緊急稼働だって必然さえあれば、鼻歌交じりで大気中でも使えるようにするだろうし。
ゴロゴロロッ!
「皆様ー! お怪我は……御っ座いませんねぇーー!」
又転がってきた美人添乗員が乗客の安全確認を盛大に怠っている。
僕達は耐ショック姿勢(落ちる直前に習った)を解いた。
と言っても、ヘッドレストに押しつけていた頭を離すだけだけど。
◇
外気温は『605℃』と、とんでもない高温だけど、蒸気が噴き出したりとかはしてないから、見てる分には熱気とかは感じない。
酸素濃度は低く、金糸雀號の異世界対応のフィルター性能を以てしても外気を取り入れることは出来ない。
でも受理ちゃん参の説明によれば、7人で3年は持つ程度の酸素の用意があるそうだ。
……ジェットエンジンだけじゃなくて、宇宙船に使いそうなロケットエンジンとかイオンエンジンとか、そう言うのもツッコむ時の候補に入れないといけない気がしてくる。
「「「「「………………」」」」……?」
周囲の様子に、全員が言葉を無くしていた。
落ちた地の底には、見渡す限りの灼熱の水面が広がっていた。
赤く焼けて輻射熱を発しているから粘性が低い高温のマグマか、場合によっては溶解した金属の〝流れ〟だとは思うけど……ひとまず水深が浅くて助かった。
ケリ乃が「はくちゅっ!」とくしゃみ。本当に眩しさ耐性が低くて、少し可哀想になってきた。
辺りは一面の灼熱地獄で、金糸雀號が飛び込んだ衝撃で揺らめく水面が所々、フラッシュを焚いたみたいな、閃光を発している。
それに、ケリ乃さんは〝瞳が大きいから取り入れる光の量が多い〟と言われたら、納得するくらいには眼がデカイ。
彼女の纏っているオーラの半分くらいは眼力に寄るものだし、見てくれが良いのも大変なのかも知れないと思った。
「いやあ、三日目にして、ようやく異世界感が出てきましたねー。ボス戦の最終フィールドとして申し分無いと思われ!」
そんな喜んでる場合では無いと思うけど、辺りを見渡せば確かに、流石は〝最大火力ボスの巣〟と言え無くも無い。
まだボスの他にも、敵兵力が潜んでいるかも知れないけど、コレまでの異世界進攻作戦はソレ程、長丁場になったことは無いから、たぶんもう終わりに近いんじゃないかと思う。
だから、この地の底みたいな場所が、えっと、……『火点観測所τ¸』決戦場とみて間違いは無い。
外部映像の輝度が絞られる。その過程で水面の激しい光線が幻想的な緑色へと変わった。
「「「「「わーーーーっ!」」」」……綺麗です……ね?」
一面の灼熱地獄が、一転。
まるで、オーロラを眺めるパノラマビュー(上下逆転)に息を呑む僕達。
ウゥーーーーゥウゥンッ!
金糸雀號の悪路用車高調節機構が作動する。
これで金糸雀號の底と水面との距離が……『20・5センチ』出来た。
それでも床下の可動式装甲鱗を作動させたら、高熱の水面に浸っちゃうけど、ケフラの体毛構造を模した耐熱耐爆仕様なので、問題は無い……はず。
僕は、片眼鏡を引き出した。
水面温度『2043K』という表示が、スグに『1769・85℃』に切り替わる。
見たことも無い化学式が一瞬で省略されて、『Pt――68・7%』という文字を先頭にした組成表が残った。
ガチンッ!
ゴガガガガガガガッ――――ドッシャンッ、――バッシャンバッシャン!
――――ジジジジッ♪
正面モニタに表示される、金糸雀號を持ち上げる、足場。
たぶん、町中でよく見かける移動式クレーンが倒れないようにするヤツだ。
「乗客の皆様に、申し上げーます。金糸雀號の足回り……タイヤの周りとか装甲板は、新開発の『ネオジムモリブデン鋼』だーから、心配しなくてもー大丈夫ーだよ♪」
僕はさっき灼熱の水面温度を知ったけど、ソレ程は心配してない。
まえに、マグマ溜まりに突っ込んでも平気と甲月が言ったのだからソレは本当に大丈夫なはずだし。
何より彼らの様子はソレ程、緊迫していないからだ。
ウィィィィィィィィィィゥウウウゥゥンッ!
油圧で持ち上げられていく、金糸雀號。
「一応念のためにバスを持ち上げていますので、乗客の皆様は、席をお立ちにならないよーう、お願いいたしーます♪」
勝ち誇る会田さんの力強い台詞。
――が急に、焦りを含んだモノに変化した。
「――あ、やべっ! 金糸雀號外装の『融点』超えてんじゃーん!」
即座に反応した添乗員が睨み付けたのは、正面モニタの下の方。
記載されたバスの車高が、ミリ単位で減り続けている。
「――み、皆様ご心配なく。会田ァ、自慢はそれくらいにして、多段アウトリガー作動準備しとけ! 初段アウトリガーロック解除は手動で任意に行われたし、但し、細心の注意を払うこと!」
自慢? 何のことだろ……これか?
座席モニタの『ネオジムモリブデン鋼』っていう項目の詳細ボタンを押すと、『開発者/Teiji・E』って文字が目に入る。
たしか〝分子物理学専攻〟なんだっけ会田さんは。新開発って事は、たぶん会田さんも博士号とか持ってるんだよな。……侮れないよなー。
正面モニタ上の車高下降が止まることは無いけど、皆が気づかない程度のゆっくりとしたモノだし、ひとまず、安心して良いのかな?
会田さんが何か対策を取ってくれるみたいだし。
◇
空には赤く焼け焦げる岩盤。
高さは、甲月顔の魚礁三個分くらいは有りそうけど、圧迫感が物凄かった。
紛れもなく今居るのは地の底だけど、高熱を発する岩盤や眩く輝く水面のお陰で、暗くないのがせめてもの救いだ。眩しさ対策の遮光シールド(エフェクト?)は最適化されたのか、本来の色味に戻っている。
僕は座席を動かして後ろの方も確認してみた。
360°見渡す限り、水面と岩盤に挟まれた同じ高さの空間が、延々と続いている。
……異世界の地質がどうなってるのが正常かなんて僕に分かるわけもないけど、もしこの地形が地球全体にまで及んでいるとしたら――。
相当ヤバいことになっているのは、測地学のプロ集団所属の大道芸人にもスグに分かったようだった。
「会田並びに受理ちゃんへ業務連絡! 現在地点を基準点測量します。直ちに準備して下さい」
「了解! 金糸雀號、測地モードで再起動後、多段アウトリガー設置を開始する!」
「受理されましたぁー♪ 経過測量並びに私設基準点確保の為、地質解析用探査芯を、進入路直下に打ち込みまぁす。それと、周囲の警戒のため、探査プローブを30基投入しまぁす❤」
受理ちゃんの声が途切れると同時、金糸雀號の外部映像がブラックアウトして、即座に同じ映像を映し出した。
金糸雀號のエンジンは掛かったままだったし、正面モニタの表示はずっと点いたままだったから、多分簡易的な再起動方法で金糸雀號の状態を別なモノに切り替えたんだと思う。
本式に再起動は、出来ないよなやっぱり。……したら異世界からはじき飛ばされたりしそうだし。
そして、まるで今にも三塁を飛び出そうかって感じの受理ちゃん参の気配が行ったり来たりしてるけど、こう言うややこしい状況の時はかわいそうだけど無視だ。
解説モードにチェンジなんてされたら、またどれだけの待機タスクが増えるかわかったもんじゃ無いからだ。
「初段アウトリガーロック解除。二段目アウトリガーを作動!」
ピピピッ♪ ゴッガンッ!
ガチンッ!
ゴガガガガガガガッ――――ドッシャンッ、――――ジジジジッ♪
金糸雀號の床面が一気に高くなった。
一体どこから出したのか分からないけど、金糸雀號の鋼鉄の足が二段になっていた。
ウィィィィィィィィィィゥウウウゥゥンッ!
さらに再び油圧で持ち上げられると、岩盤がグッと近くなった。
――カヒューゥイ♪
次に、車外に突き出たロボットアームが真上に向けられ、正確な位置を測定している。
そしてもう一本の外部機械腕は(何本有るんだ?)金糸雀號のどこかから、巨大で銀色なマッチ棒みたいなの(金糸雀號の全長くらいはありそう)を取り出した。
金属棒は周囲の輻射熱を反射して黄金に輝いている。
金属棒の丸い頭の反対側は、逆さまになった某クライスラービルみたいな複雑な形をしていた。
その鋭利で厳めしい『掘削ドリル』のスペックが座席モニタに表示される。
「わ、アレ凄く良く掘れそうです……ね!?」
と、キラキラ弾ける笑顔を向ける次葉お嬢様。
その意見には同意しかねるけど、多分コレはアレだ。
彼女がココ一時間チョットの間、粉骨砕身に掘削作業に撃ち込んでくれた証なのだ。
「そうだね。超掘れそうだね」
僕はねぎらいの意味も込めて賛同して――。
「……職業病だわ」
――だからケリ乃さん、それは言ってやるなよ。
ガッゴンッ!
ロボットアームが、金属棒を垂直に立てた。
――パシャンッ!
はじけ飛ぶ灼熱の液体。
ギャギュリリリリリリリリッイイイイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ンッ!
火花が水面を超えて吹き上がる!
その掘削能力は、金糸雀號のレーザーシャベルには遠く及ばない。
ましてやさっきまで散々見てきた、線条鉄杭のプリンを削るが如き異世界準拠の暴力的なソレと比べると随分と心許なく――――。
「が、がぁんばぁれぇー……!?」
――応援する声にも力が入るというモノだろう。
「「がんばれー!」」
「……周りにあるのって……溶岩なのかしら――?」
「――そぉーれぇわぁーでぇーすぅーねぇー♪」
車内が騒々しくなってきた頃、金属棒の半分くらいが水面下に沈んだ。
ひょっとして溶解してなくなっちゃったかと思ったけど――。
――ガキリッ!
チュイィィィィンッ、イィィィンッ♪
微かな電子音。外部音声の全ては受理ちゃん零が再構成してくれたモノだけど、本物以上の臨場感で状況を伝えてくる。
フシュシュシュシュシュルルルーーーーッ!
新設された基準点の根元から蒸気が立ち上り、途端に景観が暑苦しくなった。
その丸い頭が光り、チカチカチカッ、チカチカチカッと居場所をハッキリと知らせてくれる。
その先端の高さは僕達の視線のチョット下くらいで、結構高さがある。
これなら、少しくらい移動したとしても、この基準となる場所をスグに見つけられそうだ。
蒸気で見えにくくなってる基準点の根元からピキパキピキパキョ!
ギシギッシシッ! 流氷みたいな音がする。
その音はスグに収まったけど、棒が突き刺さった周りに半径1メートルくらいの小さな島が、なんか出来た。
片眼鏡で見ると、根元の辺りの表面温度がかなり下がっている。
なるほど。基準点には冷却機能が備わってたみたいだ。
そして、『発電量/361KWh』という表示から察するに、熱電変換素子による発電機能も有していると。
そして、この小さい島は純度54%のプラチナ製だと言うことも分かった。
プラチナって言うくらいだから、結構値段が高いモノだと思うけど。
……どうせ、現実世界には持って行けないにしても、この一面のプラチナ湖にはちょっと興奮する。
◇
正面モニタが〝駄目になったタイヤ〟の代りに、〝ホイール内蔵のジャッキ機構付き無限軌道〟を作動させろと警告表示してくる。
ソレを車手が即座にカットした。
「乗客の皆様に申し上げます。ただいまタイヤが故障中ですが、必要になり次第即座に内蔵の代替機構……代りの頑丈なヤツを使えるようにするから、心配しなくても大丈夫ーだよー♪」
途中から思い出したように易しくなるアナウンス。
「「「「はぁーい!」」」……?」
度々、わかりやすくなるアナウンスは、年少組+高1女子に好評だった。
ソレをみた甲月の眉根が寄る。
「――会田は、『超高精度次元変動追跡局第一号』設置に伴う電子基準点設置関連書類一式を、後で作っとくように!」
なぜか挑戦的に運転席方向へ向かって突き出される立てられた親指。
それは即座にきっちり真下に向けられた。
「やい甲月貴様! 鶯勘校の書式って、全部測量法準拠の本式じゃねーかっ!」
ウチの父さんも、年度末になると決まって何日か書斎に籠もって呻ってたし、どこも大変なんだろうなー。
鶯勘校勢の流れるような連携作業(および寸劇)が程なく終了し、座席モニタに表示されたのは『電子基準点:第一号』の詳細なスペック。
見ても分かるわけは無いけど、一番下の数行にリアルタイムに受信してる実データの一部が表示されている。
10秒ごとに現在地点の外気温や立体座標やらを伝えてくる。
そのデータの中には見慣れてきた『975gal◎』ってのもあった。
謎のゲージ表示がおかしいけど、どうせコレの見方は分からないからな。
座標や各種測量の元となる人工衛星や測量システムは今、異世界には無い。
だから、今表示されている全てのデータは金糸雀號(受理ちゃん零)が参照元となっている。
それでも、異世界化してからソレ程たってないし、誤差ってのはまだ考えなくても良いんじゃ無いかと思う。
僕は、制服の袖に巻いた腕時計を見た。
『AM05:10 975gal◎』
やっぱり謎のゲージがおかしいけど、気にしても仕様がない。
モードを切り替え、山アイコンを表示した。
『975gal ALT/-7780m』
えらく潜ったなー。
感心してる僕の目の前を、小さくて短い円筒がまるで水中を進むみたいにシュルシュルシュルルッと、水平に飛んでいく。
受理ちゃんは探査プローブって言ってたけど、あの形はどう見たってミサイルだよなー。
まあ、イザというときには、そのまま突貫してくれそうだから頼もしいけど…………ただでさえ物凄い景観をさらにシュールなものに変えている。
「佳喬様――――」
灼熱の地獄の底で涼しい顔を向ける、添乗員。
やれ、またお馴染みの僕向けのクイズだろう?
僕は今思っている2つの事のウチ、皆を脅かさないですむ方を選んだ。
「あぁ、言わなくても分かるよ。――〝柱が無い〟って言うんだろう?」
「柱? あら、ほんとだわ……一体どうなってんのかしら?」
「「ほんとだっ!」」「無い……ですね?」
皆もこの場所の異常さに気が付いたみたいだ。
しかも、柱が無いが地球丸ごと続いてるってんなら、ソレはもうハードSFの世界だ。
ゲームとかラノベでそう言うのにも触れることはあるけど、学校のクラスメート達みたいな本気のマニアじゃないから、専門用語とかは分からない。
「少なくとも今は、潮汐力とかは考えなくても良さそうだけど……自転の力は考えないとイケナイっぽい……ですか?」
甲月が言わせたいことは何となく分かってるけど、正確な呼び方が分からない。
つい、次葉お嬢様みたいな疑問系になってしまった。
腕組みをし、表情を変えない天才大道芸人。
「まだ、説明が足りないか。要するに自転してブヨブヨになった球形を綺麗に覆うことって、多分凄い大変だけど、今ココは保たれてて。えっと、だから、コレはきっちりとした球形をしてるんじゃ無いかなと思ったんだけど」
僕は金糸雀號の床を指差して見せた。
「そう、それですよぉー! ジオイド高に平行する全球形状強度問題――――えーい、おまけで正解ー♪」
って言いながら僕に飛びつこうと一瞬で駆け寄ってきた添乗員に、座席をぶつける乱暴者。
「ぷぐをわっ!? ――――ぞ、俗に言う『ダイソン球』と考えても良いのではないかと思われまぁすー」
座席に轢かれながらも、解説を続ける見上げた根性を見せる添乗員。
あ、そういやアイツ、添乗員が本職だったっけ。いや、それは世を忍ぶ仮の姿なんだっけ?
あと、ケリ乃さん。いくら僕を守る為って言っても、今のは酷いよ。
仮にも僕達を命がけで守ってくれてる訳だしさ。
あれ? ケリ乃さん? なんで、そんなに思いっきり操縦桿を倒してんの?
「ちょっ――――待っ――――!」
危ねっ! ぶつかるっ!
ウィィィッ――――――ガチンッ!
安全機構が働いて激突はしなかったけど、たとえぶつかったってこの派手な制服が完璧にガードはしてくれるだろうけど!
「いまのは良くないよ! ケリ……莉乃さん! っていうか大丈夫? 何か斜めになってるよ?」
傍若無人に座席を動かすケリ乃の方が、なんかフラフラしてた。
「あれ? ご、ごめんなさいっ!? なんだか、旨く間合いが取れないん――――だけど!?」
ケリ乃の後部右座席が、強制的に定位置へ戻された。
「危なぁいぃーでぇーすぅーよおぉー♪」
ケリ乃の襟首を懸命に引っ張る参ちゃん。
制服の〝体内の慣性制御すら可能なホールド性能〟のお陰で、エチケット袋のお世話にこそなってないけど、三半規管かどこかに戦闘中やさっきの落下の影響が残ってるのかも。
「大丈夫? ケリ乃さん」
「大丈夫。……ケリ乃って言うなっ」
よし、言い返す元気はあるな。
でも、どうしたんだろ?
本人も首をひねってるから、自覚が無いっぽいけど、まさか――。
――すでに攻撃されてたりしないだろうな。
声に出すと、又預言したとか言われそうだから黙っておくけど、僕は念のため周囲を見渡した。
外の様子を眺めてたら丁度、電子基準点の反対側の辺りに、何かが出現した。
バリッと割れるように欠けた景色の中。空中に現れたのは巨大な眼に見える。
ゾエア本体の瞼の緑色がもっと濃くなった感じの色の体表も少し見えてた。
僕と眼が合ったソレは瞳を瞬かせる。
「ぅワッ!?」
僕の叫び声に一斉に反応する総員。
皆が見ている前で、眼を覗かせていた〝空間の穴〟みたいなのが雑に閉じられた。
〝空間の穴〟はまるでしわくちゃに破けた銀紙みたいな切り口で、ソレがアイロンがけするみたいにピンと伸ばされていく。その手つきは不器用だったけど、時間を掛けてきっちりと皺が伸ばされた。
〝破けた銀紙〟みたいなのが、周囲の景色に溶け込んだ時には空間の境目はドコにも無くなっていた。
「車首会田へ業務連絡! 表示中の間接射撃レイヤーを、直接射撃レイヤーへ変更! 電磁界解析は受理ちゃん陸・漆が交互に専従。検証は|受理ちゃん伍任せでフルオート。それから探査プローブの磁界センサ、分解能最大!」
……いけねっ、気を抜くと甲月達の呪文みたいな専門用語がウッカリ分かるようになってる。
受理ちゃん参の解説の賜だと思うけど、一介の男子高校生にはココまでの科学知識や電子戦(?)の初歩なんて必要ない。
「了解! 直接射撃レイヤーへ変更する!」
「「「はぁい♪ 受理されましたぁ~❤」」」
演算を開始する受理ちゃん達(5~7)。
「受理ちゃん壱は測量結果をこっちへ回して! あと複数焦点並びに複数照準を許可!」
添乗員が、ずっと壁にひっつけてあった、得物を再び手に取った。
良作になる可能性があるなら今がまさに分水嶺です。次回「作者VS〝モテ無い(大道芸でお馴染み)〟2大怪人大決戦」にご期待下さい!
自動処理:コード妨害×3




