ブックマーク10件記念SS 「ちょっぴり、うらやましい」
ブクマ、感想、評価、本当にありがとうございます。
ひし形模様を持つ猫は、各地に生息する猫とはまるで違います。
生き方も。
寿命の長さも。
その小さな頭に蓄えた知識の量と質も。
◆◇◆◇
「――――――っ……うぅ……」
小さな女の子が泣いています。
物言わなくなった毛玉――飼っていた猫を抱きしめながら。
その様子を見て、私はふと思いました。
普通の猫よりも、人間よりも、長く生きている私にも、いつか最期の時が来るのでしょうか?
もし、死んだら、私の為に涙を流してくれる人間はいるのでしょうか?
(…………あ、それは無理でしたね)
だって、私は命尽きた契約者の人間を食すのですから。
いつか息絶えたら、虫や鳥に体を食され、自分という存在がこの世から消え去る――きっと、それが私の終わり方。
私がしているみたいに、魂まで食べられてしまうのかはわかりませんが。
「――――生まれ変わっても……私の……傍にきてね……絶対よ……」
飼い猫にポタポタ降り注ぐ女の子の涙。
あの猫は私と違って、寿命が短く、多くの知識を知り得ることは出来ないけれど、
その最期が、ちょっぴりうらやましい。
「――!!」
あの香りがどこかから漂ってきました。
行かなくては、魔法使いになることを望む人間の元に。
(――さぁ、次の人間はどんな魔法を望むのでしょうか。どんな味がするんでしょうか)