3話 おれはおれだから
静寂。
見渡すと村人どもが呆気にとられているのが分かる。
あまりの反応の悪さに、選別の剣を抜いて、時でも止まってしまったのかと思った。
盛り上がらない村人どもだ。
「お前らは、英雄誕生の瞬間も讃えることができないのか?」
少しの間。
「ま、まさか」「あのカイトが?」「信じられん」
戸惑い、驚き、半信半疑と色々な思いが口から出る。
その姿に、さらに苛立つ。
「いいか!おれはこの世界に平和をもたらす勇者だ。」
「……。」
普段のカイトを知る村人は、人が変わったようなカイトの態度に固唾を飲む。
「お前らが今できる最善の事は、おれの偉大さを知り、おれを崇め奉り、おれの旅立ちに感謝を持って見送る事だ。」
「……。」
「今からおれは旅に出る。だから、高が知れているだろうが、この村の最上級の武器、防具、道具をおれに献上するのだ。」
「……。」
カイトの言葉に、不信感を持った村人たちはそれぞれ顔を見合わせる。
しかし、選別の剣を抜いたカイトに、何か言い返す勇気はなかなか出ない。
「悪魔の子だーーーーーーーーーー!!!!」
村長が叫んだ。
「皆の者カイトを縛り上げろ!!!あいつはたった今悪魔に取り憑かれてしまった!」
村人たちは一瞬躊躇ったが村長の言葉に同調した。
「確かに!あいつはおれたちの知ってるカイトじゃない!」
「よし。縛り上げろ!」
「おぉーーーーー」
村人たちの愚行に呆然としたカイトは、いとも簡単に捕らえられ、村の西にある大樹に縛り上げられた。
「お前ら正気か?おれは勇者だぞ!」
「だまれ!悪魔め!カイトの体から出て行け!」
確かに昨日までのおれは、今と違うように映っていたかもしれない。
自分でも気弱だったと思う。
しかしおれはおれを思い出した。
おれは勇者だ。
7つの世界に平和をもたらした英雄。
そのおれがこんな仕打ちを受けるだと?
そんなことが許されるのか?
あるものは罵倒を浴びせ、あるものは棒でつつき、またあるものは石を投げる。
屈辱に涙をこらえる。
こんなやつらのために世界を救うのか?
そうだ
それがおれの使命だ
こいつらがどういようと
勇者は勇者だから
カクヨムで連載中のをこちらに流してます。
続きが早く見たい方がいたらぜひいらしてください。