夢と記憶
「なんでですか!」
女性の叫び声が聞こえる。
その女性は教会の中に立っていた。
「何故とは?」
女性の怒鳴り声に対し、白衣を着た男の声が反応する。
教会の中にはこの二人しかいない。
よく見ると、女性の方は雪音だ。
「なんで魔術師同士を殺し合わせる必要があるんですか!」
「人間は殺し合う事で存在意義を見出す。一部の人間に存在意義を見出す手伝いをしてるだけだ」
雪音は狂っていると思った。
「そんなことはない!人間は一人ひとりにちゃんと意味がある」
「これからお前はその殺し合いをさせるための力の元となるんだ。殺し合いをさせ、殺し合いで死ぬために生み出された存在なんだ」
雪音は全身に力が入り、唇をかみしめる。
そんな事のために生み出された自分が悔しく、そんな事のために自分を生み出した目の前の男が憎らしく思えた。
その男は手を顎に当て少し考える。
「力が手に入るだけでも人は変わるが、そうだな。何か勝者に相応しい物を用意するべきだ」
「なんでそこまで殺し合いをさせたいんだ」
必死な雪音を見て、男は舌打ちをした。
少しずつ雪音に近づき、頬を殴る。
雪音は床に倒れこんだ。
「さっき理由は言ったはずだ。君の考えは甘すぎるんだよ」
そう言って、雪音に近づいていく。
雪音の近くでしゃがみ、髪の毛を掴み上げる。
「君は殺し合いの道具になったらいいんだよ。こう生まれた以上感情は変えられないが、記憶は消せるんだ。だからさ、少し眠っていてよ」
そして、雪音の視界は暗くなった。
そしてすぐに織音がベッドの上で目覚める。
……夢?
嫌な夢だった。
生々しく、とても嫌な夢。
「……さっきの見たの?」
小さく雪音の声が聞こえた。
静かに頷いた。
「そっか」
「ごめん、でも聞かせて。今の夢は雪音の記憶?」
雪音から返答がなかった。
「お願い、教えて」
もう一度聞くと、答えてくれた。
「そう、今のは私の記憶。記憶がなかった理由は分かったけど雪には知られたくなかったな」
織音は、返す言葉が見つからずに黙り込んでしまった。
これからどうするべきなのか。
何も分からなかった。
そこに、日葉が織音を起こしに来た。
「お兄ちゃん今日は起きてたんだね。じゃあこの時間に来なくても良かったかな」
「日葉、おはよう。わざわざありがとな」
日葉は、ドアを開けたまま話を続ける。
「うん。にしても空気が重いけど何かあった?」
隠そうと思っていたが隠しきれなかった。
「今日の夜、また四人で話せるか?」
日葉は何かを察したように頷いた。




