想い出の人
これからどうするべきなのだろうか。
考えているつもりだが、実際は何も考えられない。
「これで完全に黒となったわけではない。だが鷹中に気づかれないように警戒はしておけ」
「でもさっきおかしいって」
冴月の言葉に織音は口答えをしてしまうほど、混乱していた。
「そうだ、九割黒と思っていい、だがあと一割を信じてみるよ」
冴月も確実に白にしたいがためにやったことで、こんな事になるとは予想もしていなかったのだろう。その証拠に先ほどよりもお茶を飲むスピードも上がり、乾いた唇を舌で舐めている。
「案は四つ。信じていつものように接するか。もしくは、警戒してこちらが鷹中に送る情報を減らし私たちの見えないところでの行動を抑えるか。それとも、監禁して情報を聞き出すか。もう一つの案は――鷹中を殺すか」
「雪音、今冗談はよせ」
雪音の出した最後の案を言った直後に織音が黙らせる。
「冗談のつもりはないよ。最後のは最終の手段だよ」
「だとしてもそんな事を言うな」
「……ごめん」
織音は怒っているつもりはなかった。
だが、目つきは悪くなり口調も雑になっている。
雪音は何かを察したように黙り姿を消した。
「今日はもう帰るとするよ、これからどうするか考えておけ」
冴月も今はこれ以上何も進まないと思い、荷物をまとめて部屋を出て行った。
「すまない、部屋にいるよ。少し一人になりたい」
織音はそう言って、リビングに日葉と宵を残し部屋に戻った。
織音は部屋に入りすぐさまベッドに倒れる。
どうするべきだろうか、どうすれば……。
いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
「雪、何か俺に隠してないか」
公園の中に立っていて、目の前には白髪の男の子が立っていた。
とても夕日が眩しく男の子がうまく見えない。
「何も隠してなんかないよ」
僕は否定した。
「それは嘘だよ」
「嘘なんか吐いてない」
「……またあいつらにいじめられたんじゃないか?」
すごいな、本当は同じ小学校の人にいじめを受けていた。それを見抜いたんだ。
僕はもう隠せないと思った。
「だって、またあいつらが健お兄ちゃんに聞こえないところで健おにいちゃんの悪口言ってたんだもん」
本当のことをぶちまけた。
僕は涙を流していた。
悔しくて、負けたくなくて、でも負けて、悔しくて。
「そっか、でも雪は何でも一人で抱えて一人で全部を責任取って一人で何かをしようとするんだから。俺をお兄ちゃんと言ってくれるならお兄ちゃんらしいことをさせてよ」
健お兄ちゃんは笑っていた。
その笑顔は夕日よりも優しく温かいものだった。
余計に涙が流れ、健お兄ちゃんに抱き着く。
「もう喧嘩しないって約束したのに、また喧嘩して最後は泣くんだから、雪は馬鹿だな」
「うるさい!」
そう言いながらも僕は健お兄ちゃんから離れようとはしなかった。
ゆっくりと目を開ける。時計を見ると午後五時を指していた。
「かなり寝てたんだな」
すると隣から、声が聞こえた。
「健お兄ちゃんの夢を見ていたんですか?」
「に、日葉!驚かせるなよ」
いつから隣にいたのだろうか。
「ごめんなさい、でもお兄ちゃんも何度呼んでも起きなかったのも悪いと思います」
「そうなのか、それはすまない」
今日はかなり疲れていたのだろう。
「お風呂沸いたので入っておいてください。ご飯はまだかかりそうなので」
「分かった」
それだけを言って日葉は部屋を出て行った。
「雪、今の夢はお前の記憶か?」
雪音の声が聞こえた。
夢は雪音も見れるのか。
「そうだよ、健兄さん。前坂健、俺と日葉の幼馴染で兄のように慕っていたんだ。事故で死んじゃったけどね」
「生き返させたいと思った相手か」
織音は頷き、ベッドから立ち上がる。
クローゼットから着替えを取り出し、部屋のドアの前に立ち止まる。
「でも今は、もう生き返させたいって願いはないけどね」
そう言って部屋を出た。




