協力者
「お兄ちゃん、どうしたんですか」
繰り返し心配そうな声が聞こえる。その声と一緒に肩を強く揺らされていた。
「どうしたんだ」
なぜここまで心配そうにされているのか分からず日葉に聞いてみる。
「どうしたんだ。じゃありませんよ。急に何かを言ったと思ったらその直後、死んだみたいに倒れたんですから」
記憶を覗いている間は、織音の体は完全無防備になるという事。
雪音の方を見ると、織音と同じで寝ているように見えた。ずっと見ていると、急に目を覚まし一つ溜息を吐く。
「繊月、お前はガキか」
目覚めて第一声には誰しも驚きを隠せなかった。
「何言ってるの?」
「今私たちが眠っていたのには理由がある。それは雪が『コンタクト』という魔術を使ったからだ」
日葉がどんな魔術なのかを雪音に聞いた。雪音は素直に質問に答える。
繊月は手に力が入っていた。
その源は『怒り』だった。
それは勝手に記憶を覗いたことに対しての怒りではなく、寿命を代償に魔術を使ったことに対する怒りだった。
「また雪君は魔術を使ったんだ……」
今はどうにか自力で押えているように見えるが、何か一つ間違えればまた暴れ出しそうだ。
「雪の最大寿命は九八歳で今は三か月と半月のマイナス。誰かに殺されない限り、事故でトラックに撥ねられようが、どれだけ高い場所から落ちようが、七九年と六か月と半月マイナス二日は生きていける」
最高にややこしい言い方だ。
ただそう考えるととても長く、余裕があるようにも感じてしまう。
「雪君は何他人事みたいな顔で聞いているの?大体あと696,672時間しか生きられないのよ」
余計にややこしくなった。しかし、年数から時間に変えると短くも感じてしまう。
しかもこの短時間にどうやってそこまで計算出来たのだろうかと、不思議に思う。
「おいお前らやめてやれよ。織音の頭じゃついて行けないだろ」
庇ってくれると思いきや、まさかの煽りに苛立ちを見せる。
すると後ろから声が聞こえた。
「大変じゃの」
宵だった。今は宵だけは味方でいてくれることに感動をしてしまう。
にしてもなぜ、具現化しているのか不思議に思い実際に聞いてみる。
「先ほどそこの女子が主に襲い掛かっている所を見たであろう。その時に勝手に代償を使い止めようとしたところにお主らが来たんだ」
「日葉のためにありがとな」
素直に嬉しかった。日葉のためなら朝食の記憶程のモノ代償にすることに抵抗が無くなっていた。
「やめろ。主のにぃなどに礼を言われる筋合いはない」
そう言いながらもどこか嬉しそうにしているように見えた。
そんな話をしていると、家の近くで車が止まった音がした。
その瞬間にここ居る皆が黙り、音を立てないようにしている。
勝手に玄関の扉が開く音がする。織音の心拍数は今までにないほど早くなっていた。
リビングのドアが開くとそこには織音たちの担任でもある冴月が立っていた。
一気に皆の緊張が解ける。
「なんで冴月先生がいるんですか」
織音は声だけでどれだけ冷静ではないか分かるほど驚いていた。だが織音以外の皆は先ほどとは裏腹にとても冷静になっていた。
「冴月は魔術師ではないが俺たちをサポートしてくれてるんだよ」
鷹中が簡単に説明をしてくれた。
「そういうこと、鷹中からいろいろ聞いて、校長に仮病で抜け出してきたわけ」
サポートをしてくれていたなら織音が魔術師と知っていてもおかしくないが、その疑問よりも仮病で抜け出したという事が衝撃だった。
「大丈夫なんですか?」
「知らない」
恐る恐る聞いてみると、笑顔で返してきた。
もうどうでもよくなってしまった。
「さておき、まずはここであった事、織音君が知ってること教えてね」
冴月の笑っていた顔が真剣な顔に変わり周りの空気も変わった。




