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生命魔術と想い出(修正前)  作者: 紗厘
第二章 ~真実と決断~
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コンタクト

 目を開けると、織音家のリビングに立っていた。

 まだぼやけてはっきりと前が見えない。


「織音!早くはっきりさせろ」


 鷹中の乱暴な声が聞こえる。

 自分の頬を叩き意識をはっきりさせると、日葉が床に倒れて繊月が鷹中に抑えられている光景だった。

 何が起きているのか理解が出来ずにただ茫然と立ち尽くしていた。


「早く!繊月を落ち着かせるの手伝えよ!」


 よく見ると、日葉の腕や頬に痣があった。おそらく繊月が何かしらの暴力を日葉にやったのだろう。

 それを理解し、繊月と日葉の間に立つ。


「何してんだよ。なんでこうなってんだよ」


「……」


 繊月も動きを止め、鷹中も繊月から離れた。

 織音の言葉に誰も答えなかった。


「なんでこうなってんのか聞いてんだよ。……答えろよ!」


 少しずつ声も大きくなり、最後には怒りが爆発する。

 大切な妹に何かがあったのだと思い、少し殺意が芽生えてくる。


 静かな時間が過ぎて、突然雪音の声が聞こえる。


「雪、外に出てもいいか」


 織音は静かに名前だけを呼ぶ。

 そして雪音が織音の隣に実体化する。


「ま、皆座ろっか」


 雪音がその場を落ち着けてくれた。


「なんでこんな事になったのか、繊月ちゃんから教えてくれるかな」

 繊月が誰とも目をあわせずに、黙り込んでいた。


「えっと……」


「君には聞いてないんだよ」


 繊月の代わりに日葉が説明をしようとしたら、雪音は睨みながら繊月に言わせようとする。

 また沈黙の時間が流れていく。

 織音は雪音に声を出さずに呼びかける。

 雪音は繊月を見たまま反応する。


「一つ試したいことがあるんだ」


「何をする」


 魔術は何でも使える。

 それなら繊月の記憶を覗けばいいと思った。

 そのことを繊月に説明する。


「それは構わないが、人の記憶を覗くとなると二ヶ月分の寿命は削ることになる」


「大丈夫だよ。コンタクトって言ったら発動できるかな」


「思い込みが大切だ。どこの記憶を覗きたいかを強く思って言ってみろ。……本当は本人の口から聴きたいんだけどな」


 最後の言葉は織音には上手く聞き取れなかった。

 しかし、聞き返すことはせずに早速行動に移す。


 織音は繊月を一点に見つめ、この家で起きた出来事について強く思う。


「コンタクト」

 

 繊月に引きずり込まれるような感覚に陥る。

 気が付くと、全体的に茶色がかったような色をしている。

 しかし、ここは織音家のリビングだ。

 

 日葉がキッチンで食器を洗っていた。

 普段ならもう日葉も学校に行っている時間のはずだが、日葉に急いでいる様子はなかった。


「雪の妹さんは学校になんか行ってないんだろうな」


 いつの間にか、織音の隣に雪音が立っていた。


「でも、いつもは俺よりも先に家を出ているんだぞ」


「だからどこかに隠れて、雪が家を出たら家に入るんだろう」


 どうしてか聞こうとしたが予想がついた。

 そもそも繊月は織音に学校には行くなと言っていたんだ。それと同じことだろう。


 すると、繊月がリビングに入って来る。


「インターフォンくらい押してくださいよ」


 日葉は食器を洗いながら繊月の事を確認した。

 繊月はずっと黙っている。

 

 日葉は何かあったのだと思って、食器洗いをやめて繊月の方へ向かう。


「どうかしたんですか?」


「……かせた。」


 声が小さく上手く聞き取れなかった。

 仕方なく聞き返してみる。


「なんで織音を行かせた」


 繊月は確かに学校に来るなと言っていたが、それは日葉にも注意してもらうために言っていた。


「止めたって行っていたよ」


 それもそうだった。織音は、たとえ朝止められても行くつもりでいた。


「それでも、止めようとはしたの?」


 日葉は止めることなく、優しく送ってくれた。

 正直に首を横に振る。

 その反応を見て繊月は日葉を突き飛ばした。

 倒れた時に日葉は机の角で腕をぶつける。


「どれだけ危険か分かってないの?あいつが死ぬことだってあるんだぞ」


 繊月が必死なのは分かった。口調はさっきまでと変わらなくて冷静を装っているが、織音の事を『あいつ』と呼ぶ事から必死さを物語っている。

 日葉は立ち上がりながら、繊月を見る。


「そんな冷静そうにしなくてもいいですよ、私を突き飛ばした時点でそんな必要ありませんから」


 繊月は日葉の言葉に苛立ちを覚え、カバンからコピー用紙を取り出した。


「来て」


 一言そう呟くと、繊月を囲むように白い竜が現れた。


「ブリガンテは人だけじゃないのか」


 織音もその光景に驚きを隠せなかった。


「私たちだけで話そうとはしてくれないんですね」


「……」


 日葉は静かに防音の魔術を張り、息を吐き大きく吸った。


「そもそも、なんであなたがここに居るんですか!お兄ちゃんが学校に行ったと分かったならそのあとを追う事が賢明じゃないんですか。私に説教する暇があるならお兄ちゃんの護衛でもするべきでしょ。私はあなたたちを信じて学校に送ったっていうのに、あなたは暇なんですか」


 織音はそんな日葉を見たことがなかった。

 日葉が兄のためにここまで怒ってくれることに嬉しさを。

 でも、見たことがなかった姿を見て怖くも感じた。


 繊月は黙って日葉に近づいて顔を殴る。

 屈んだどころでお腹に膝を入れて髪を掴み上げる。


「強い魔術が使えるからと言って調子に乗るなよ。確かにあんたの言った事はあっているかもしれないが、これでもちゃんと遠くから監視できるように魔術を織音にかけてある」


 日葉はとても苦しそうな顔をしていた。その中で繊月を睨んでもいた。

 織音が止めようとするがここは記憶でしかなく、触ることは何もできない。

 

 繊月はブリガンテに何かさせようとしたが急いで隠すように消した。


 その直後に何もない所から織音と鷹中が姿を現した。

 織音は静かに立っているだけだが、鷹中は急いで繊月と日葉を離した。

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