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第2話 雷撃と風の牙

 気がつくと、何処か医務室のような部屋に寝かされていた。目の前に先程のエルフのお姉さんの顔がアップに飛び込んで来た。思わず目を見ひらいてしまう。

 「あ!、気がつかれましたか、先程は魔力量測定のオーブが暴発してしまい、申し訳ございませんでした。治癒師の診断では、どこも異常は無いようですが、痛い所とか有りませんか?」と聞いてくれる。両手を見ても何もなっていないし、身体の方も何処も痛み等無いので、

 「はい、大丈夫です。」と答え、起き上がる。親父も傍に座っていたが、そんなに心配していたようには見えない。俺よりエルフのお姉さんの方に興味津々な様子が、手に取るように見て取れる。

 「良かった。一応私も治癒魔法をかけておきますね。」と、お姉さんが言って、俺の手のひらを向けヒールをかける。ああ、水属性魔法のヒールはこうするのか、どこも悪くないので、すぐに効果は消えたが、俺にも使えるようになった。一度見た魔法は、すぐに自分でも使えるようだ。術式もイメージもすぐに理解できた。

 「ああ、やはり大丈夫みたいですね、私はギルドの受付をしていますリルカです。タクマさんには、魔力量の測定が出来ませんでしたので、Fランクからのギルドカードの発行となりますが、宜しいですか?、お父様がBランクハンターですので、ご一緒なら殆ど全ての依頼は受けられますが、お一人での場合は、Eランク以下の依頼しか受けられませんので、ご注意下さい。はい、これがギルドカードです。」

 リルカさんからカードを受け取る。

 「親父、まだ昼前だから何か依頼受けるか? 」とリルカさんばかり見ているゴンズイ親父に声をかけ、夢から覚ませようとする。やっと我にかえって、

 「ああ、お前の登録申請中に依頼を見てきて、ひとつ受けてある。ここから北に300キロの魔の森からフェンリルが出てきたようだ。このまま南下されたらオーマ山岳地帯に近づいてくる。家の山の獲物を喰われちまっては溜まらんから、これから仕留めに行く。」それを聞いたリルカが慌てて、

 「フェンリルはAランクの魔物です。風属性魔法も使い雷撃まで放ってくる非常に危険な相手じゃないですか。今日冒険者になったばかりのタクマさんを同行されるのは、無謀です。」と親父にくってかかる。非難されているのに嬉しそうに、

 「大丈夫だよ。こいつは俺がよちよち歩きの時から鍛えあげた息子だ。そんじょそこらのCランク冒険者より頼りになるさ。」とリルカさんを宥める。

 「親父、フェンリルと地竜じゃ、どっちが強いんだ?」と親父に聞くと、

 「そりゃあ、フェンリルの方が断然強いぞ。言っても地竜はBランクの魔物だし、魔法攻撃も無かっただろうが、尻尾と爪と牙さえ注意してりゃ、皮が固いだけの 相手だが、フェンリルの雷撃や風の牙は強烈だからな。」と親父が面白そうに説明してくれた。それから、リルカさんに向かって、

 「こいつ、この前一人で小屋の近くに来た地竜を仕留めやがったんだ。俺が留守の間に、おれのハルバードを使って地竜の首を落としていたぜ。実力はBランクを超えている筈だ。魔力量測定のオーブがぶっ壊れたのも、こいつの魔力が大き過ぎたんだと思うぜ。」と説明している。その話を聞いたリルカさんは、俺の顔をまじまじと見て、本当かと確認してきたので、頷いた。

 それから俺たちは馬2頭と荷馬車を借り、クルムの街を出て北に向かって移動しだした。昼夜問わず交代で走りたいが、馬が持たないので、夜は馬を休め、昼間だけ走り続けた。6日後の夕方、フェンリルの痕跡に辿り着いた。

 「流石だね、親父の予想通りこのままだと、オーマ山岳地帯に入られるね。」

 「ああ、近くにまだ居るぞ、あの森の中に潜んでいそうだな。」親父の鼻が、フェンリルの臭いを嗅ぎ取ったようだ。相手も俺たちの気配に気付いたようだ。森の中から唸り声が漏れてきた。

 「奴は速いぞ、雷撃と風の牙にやられるなよ。奴は先ず馬を狙ってくる。先に俺たちの相手をしてもらうとしようか。」親父の言葉とともに、馬車を飛び降り、二人は森に向かって駆け出した。15才の成人祝いにBランク冒険者時代に買ってあった、ミスリルのショートソードを親父に貰ってから、初めての相手が、魔法を使うフェンリルとは、よくできでいると思った。親父をまねて身体強化し、ショートソードに魔力を纏わせる。何かが凄いスピードで飛んでくる。ショートソードで叩き切ると無効化できた。これが風の牙のようだ。親父も剣で叩き切って無効化している。親父の大剣もミスリル鋼だから、魔術師相手でも戦えると自慢していた。

 風属性魔法を無効化され、怒ったフェンリルが森の中から姿を現した。大きい。3mはある純白の狼のように見える。だが、全身に紫電を纏った姿は、決して狼のような可愛いものではなかった。俺はショートソードを振り抜き、今見た風の牙を3重にして叩きつけた。一発目は、纏った紫電で無効化されたが、二発目が毛皮を裂き、三発目が右前足を切り裂いた。耳を劈くような咆吼をあげ、フェンリルが俺目がけて雷撃を浴びせてきた。身体強化した身体を真横に飛ばし、避けるのが精一杯で、逃げ回ることに専念する。奴の雷撃魔法を見て、すぐに理解出来たので倍の威力の雷撃をお返ししてやる。紫電を纏う位だから雷耐性もあると予測していたが、痛めた右前足に打ち込んだおかげか、切り裂いた部分から吹き飛ばすことが出来た。苦痛で倒れかかったフェンリルの首に親父がミスリルの大剣を叩きつけた。俺に奴の注意を引きつけさせて置いて、一番美味しい止めを持って行かれた。

 「タクマ、すぐに剥ぎ取りだ。フェンリルの毛皮は高く売れるんだから、注意しろよ。それから、内蔵は錬金術の原料になるから、馬車の壺に全部分けていれるからな。爪と牙も売り物になるから捨てるのは肉だけだ。」

 「ええ、肉は捨てちゃうの? 地竜はあんなに旨かったのに、Aランクのフェンリルの肉が食えないのか?」と俺が驚くと、

 「食えなくはないが、臭いうえに焼けば固くなりすぎてとても食えたもんじゃないぞ。前に一度チームで仕留めたとき、何とか食おうとしたが、誰も料理できなかったんだ。肉以外は全て良い値になるから我慢しな。」と言って毛皮を剥ぎだした。物心付いた時から手伝っていたので、解体は暗くなる前に完了した。肉は穴を掘り埋めた。来る途中に仕留めてあったホーンラビットを焼いて夕食にした。

 周囲に血の臭いが立ちこめているので、暗いなか、クルムを目指し出発する。

 「親父、フェンリルってAランクの魔物の割には、簡単に仕留められたな。」と言うと、

 「あれは運が良かっただけだ。本当は、Aランク冒険者が5人ぐらい係って討伐するもんだ。お前は、一度見た魔法がすぐに自分のものにできる力がある。奴が最初から魔法を使わず、牙と爪で俺たちに向かって来ていたら、反対に俺たちが簡単に仕留められていた。とにかく、こいつは依頼書にも、やたらに魔法攻撃してくると書いてあったので、俺たち向きの相手だと思ってたんだ。」

 「何だ、だから俺にミスリルのショートソードなんて高いものくれて、魔法を受けさせてたのか、さすがに元Bランク冒険者は脳筋じゃ務まらないってことか。」

 「だれが脳筋だ。馬鹿いってんじゃない。ちゃんと警戒してろ。」

 二人は、1時間程、夜の街道を南下して、野営した。

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