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第19話 レガート侯爵再び

 俺は、カムエルさんに20キロ前方の状況を説明して御者台を飛び降り、後ろの『火炎の魔戦士』のメンバーたちの元に行く。

 「20キロ前方に待ち伏せされています。30騎の騎兵です。多分レガート侯爵を待ち伏せていると推測されます。皆さんは、ちょっと待機してもらえますか?」とソフィアさんに声をかけると、

 「お爺さまを待ち伏せしてるんですか?」と、ニーナさんが声をあげる。

 「ええ、ニーナさんは、レガート侯爵の御孫さんですか?」俺もびっくりして声をあげてしまった。

 「はい、私はニーナ・レガートと申します。でも、居ないお爺ちゃんを何故待ち伏せているんですか?」とニーナさんが聞いてくる。

 「ソフィアさんたちは、もうお気づきでしょうが、一キロ後ろを付いてくる馬車がレガート侯爵の馬車です。二週間前くらいに、一度、待ち伏せされていまして、その時依頼を受けて俺が殲滅しました。あれからずっと一キロ後ろを付いて王都を目指しています。良かったら皆さんで引き返してレガート侯爵に連絡して頂けませんか?」とお願いしてみると、

 「でも、30騎も騎兵が居るなら、一緒に戦った方が、被害が少ないのでは?」とソフィアさんがひと言挟んできたが、

 「大丈夫ですよ。俺たちは、皆さんが追いついてくる頃に待ち伏せ地点に辿り着く位にゆっくり馬車を進めますから。」と言っておく。

 「それなら、皆、すぐにレガート侯爵を迎えに行こう。」とソフィアが宣言し、『火炎の魔戦士』のメンバーは引き返し出す。それを確認してから、俺はカムエルさんの側に戻り、

 「カムエルさん、彼等が追いついてくる前に、殲滅しときますので、このまま進んで下さい。」と言うと、

 「やっぱり、そうしますよね。」と、引きつった笑いを浮かべる。それを無視して、

 「フレアさん、水属性も有りましたよね。ちょっと見せてもらえませんか?」とお願いすると、

 「ほんとに、小さいウォーターボールしか出来ませんよ。」と言いながら詠唱して直径30cm程のウォーターボールを作ってくれた。前方にうちだしたが、途中で壊れてしまった。俺は、その詠唱の術式を簡略化して、無詠唱で発動させてみる。頭上に3mぐらいの水球が出現したのを確認して、キャセルすると、消えた。これで、全員生け捕りに出来る確信が持てた。


 突然、馬車の扉をノックされ、少し居眠りをしていたレガート侯爵は起こされた。窓を開けると護衛隊長のブースが、馬を添わせている。

 「何事じゃ、魔物でもでたか?」と聞くと、

 「いえ、ニーナ様がお見えです。御前に急用とのことですが?」とブースが言うので、前方を見ると、荷馬車を降りて、ニーナが歩いてくる。

 「御爺様、ご無沙汰しています。タクマ様に言われて、お伝えにきました。前方20キロ程のところで、30騎ほどの騎兵が待ち伏せしているとのことです。なんでも御爺様を狙ってのものとのことですので、すぐにお知らせにきました。」とニーナが言うので、

 「お前たち、タクマ殿と面識が有ったのか? 彼には先だって、20騎の待ち伏せを殲滅してもらったんじゃが、まだ30騎も居ったのか? 彼の後をついて王都に向かったのは正解じゃったの。しかし、ノームの馬鹿はどこから30騎もの兵を調達したのかのう? 王都の屋敷は完全にノームに制圧されとったようじゃな。しかし、困った。どこの兵かも解らんうちに殲滅されては、向こうの状況を聞き取れんわ。ブース、急いでタクマ殿の荷馬車に追い着いてくれ。生け捕りをお願いするんじゃ。」すぐにブースに指示を出し、ニーナに馬車に乗るように言うが、

 「私は仲間と一緒に付いて行きます。先だってBランクに昇格しました『火炎の魔戦士』のメンバーといっしょですから。」といって、前方の荷馬車に駆けていく。仲間よりも、久しぶりに会ったお爺ちゃんじゃろと文句が出かかったが、我慢して見送る。


 一時間程で、待ち伏せ地点に辿り着いたが、もう戦いは終わっていた。右手の空き地にタクマ殿たちの荷馬車が止められており、その荷馬車に30頭の馬が繋がれている。その周りにロープで縛られた30人の男が転がされており、全員気絶しているようだ。その傍で、カムエルとか言った商人と娘が忙しくテーブルの準備をしており、タクマ殿は竈で、肉を焼いていた。丁度、昼食時でもあり、いい匂いにリガート侯爵の腹が鳴った。

 「タクマ殿、もう曲者を成敗して下さったのですか?」と侯爵が声をかけると、

 「ああ、レガート侯爵様、今回は一人も殺さずに捕縛できましたよ。全員、気絶しているだけですので、もうすぐ気が付くと思います。馬たちは、つい先程気が付きましたから。早速、全員の顔を検めてもらえますか?」と、タクマ殿が言うので、捕縛されている者たちをブースと共に検めに行く。すぐに二人の男が目に付いた。

 「ブースよ、あれは、ノームとその養育係のゲオルス男爵ではないかの。」と一際豪華な鎧姿の二人を指さす。

 「はい、仰せの通りです。レガート侯爵家の寄り子のゲオルス男爵に相違ございません。残りの騎兵はゲオルス男爵家の兵のようです。見知った顔がありませんので、屋敷の護衛兵はこの反乱には加わっていないようです。」と何故か安心したようである。

 「しかし、全員ずぶ濡れじゃのう、前のように炭にされては敵わんが、どうやれば無傷で30騎の騎兵を捕縛出来たんじゃろう。もっと礼金を追加せねばならんの。」とレガート侯爵が言う。

 「じゃが、寄り子とはいえ、ゲオルスも陛下から男爵位を授けられた者ゆえ、儂の一存で首を刎ねる訳にはいかんのう。すぐに陛下に謁見してご裁可を仰がねばならんことになってしまったわい。」と溜息を吐いた。その時、意識を取り戻したノームとゲオルクが、声をあげる。

 「父上、あ奴は何者です。我らは父上をお迎えに来ていたのです。」

 「左様、侯爵閣下、私は、ノーム殿に請われてお迎えにあがった次第です。それなのに、あの冒険者は有無を言わせず我らを攻撃してまいりました。すぐにあ奴を捕縛して、我らの戒めをお解き下さい。」と追従する。

 「たわけが! ノーム、そなたの腹心も先の襲撃で捕えておるわ。己の企ては既に露見しておるのじゃ。何がお迎えじゃ、重装備の騎兵で待ち伏せしておって、そんな言い訳が通ると思ってか。」とレガート侯爵の怒声に、二人は顔を伏せ震えだす。

 「みなさーん、昼食の用意ができましたよ。ご一緒にいかがですか?」とのんびりしたタクマの声が聞こえてきた。そちらを見ると、ニーナを先頭に、『火炎の魔戦士』のメンバーがテーブルに駆けて行く。

 「儂らもよろしいのかの?」とレガート侯爵が聞くと、

 「曲者たちの分は有りませんが、皆さんの分も用意しましたので、テーブルに着いて下さい。ああ、護衛の皆さんも一緒にどうぞ。」とタクマが答えた。ブースと顔を見合わせ、レガート侯爵はテーブルの方に歩いて行った。

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