第14話 ある戦士の呟き
俺は王都リーマの冒険者ギルドで、Bランクパーティー『剣戟の突風』のリーダーを任されているタイロンと言うものだ。今回、クルムへの護衛依頼を受け、Aランクパーティー『森の守護者』のリーダー、オズマ氏の指揮下で隊商の護衛を遂行していた。深淵の森周辺を通過して、ほっとした時、オークジェネラル率いる30匹以上のオークの群れに遭遇した。俺たちが、騎馬で隊商の先頭を進んでいたら、ファイアーボールを眼前に撃ち込まれた。幸い直撃は無かったので、すぐに馬を落ち着かせ、荷馬車を護る陣形を作る時間稼ぎの目的で、馬を下り、5人でオークの飛び出しを押さえにいった。だが、本来なら我先に飛び出してくるオークが、この時は隊列を組んで、俺たちを押してきた。幸いその御陰で隊商の陣形は完成したので、岩山を背にした防衛陣に帰還する。オークたちはオークジェネラルの指揮で、俺たちの前方30m程のところで隊列を組んだ。護衛隊の人数は20名、対するオークは、オークジェネラルとオークメイジを含む30匹以上である。無キズで撃退は出来ないと覚悟した。その時クルム方面から荷馬車が一台、オークの一団と我々の中間に突っ込んできた。
「加勢はいるか?」御者台の少年が、何の緊張もなく聞く。断ればそのまま進むつもりだとすぐ解った。オズマさんが透かさず「頼む。」と答えた。その後の展開が、魔法使いをメンバーに含まない『剣戟の突風』の俺たちにとって、信じがたいものだった。右手の一振りで15匹以上の前面にいたオークの首を刎ね、ジェネラル以外の残りのオークを雷撃で仕留める。直ぐさま、剣で鍛えた俺たちにも視認出来ないスピードでジェネラルの首を刎ねていた。僅か5秒以内の殲滅劇であった。数多の武闘大会に出場し、数多くの剣豪や冒険者の戦いを見てきた俺が、未だかつて見た事も無い強さであった。
少年は、クルムのBランク冒険者タクマと名告った。どう見ても俺たちと同じランクの筈がない。15才と後からオズマさんに聞いて、納得した。ギルマスの権限で与えられる最高ランクがBランクである。実力は既にSランクと思って間違い無いだろう。使用している剣もミスリルのショートソードであり、獲物を収納した魔法袋も、俺たちが持つ魔道具開発ギルドの専売品より遙かに大容量に見えた。世界にはとんでもない化け物が居る事を、改めて認識した。クルムに到着したら、彼の生い立ちや師匠について調べてみよう。そしていつか、一緒に討伐依頼に参加させて貰おうと思う。その時は、彼の魔法袋の入手先を教えてもらえればいい。




