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第13話 ある魔法使いの呟き

今回は閑話を二話アップします。

 俺は王都リーマでCランク冒険者パーティー『火炎奏者』のリーダーをしているヨーダだ。今回のクルムへの護衛依頼を遂行している途中に、自分達には理解不可能な少年に出くわした。それは、リーマを出発して一週間と少し経っての出来事である。やっと、大きな問題もなく、深淵の森の側を通過して、二日ほど経ったとき、オークジェネラル率いる30匹以上の群れに隊商を待ち伏せされ、何とか、岩山の際に陣を張った直後のことだ。敵のオークメイジが放つファイアーボールから隊商を守るため、うちの防御担当が魔法障壁を張り、攻撃担当の二人がファイアーボールを撃ちかえそうとしていたその時、クルム方面から一台の荷馬車が、オークの集団と俺たちの間に割り込んできた。その御者台に少年がいた。彼は一言「加勢がいるか?」と聞き、『森の守護者』のオズマさんが「頼む。」と答えた途端、無詠唱で、右手を一振りした。オークの一団の前面にいた。十四・五匹の首が飛んだ。次に右手を突きだすと、20発近い雷撃がオークジェネラルの周りに降り注いだ。たった一匹残ったオークジェネラルも何が起きたか理解する前に、少年の剣で首を刎ねられていた。


 少年の名はタクマという。クルムの冒険者ギルドに登録して一か月程しか経っていないのに、既にBランク冒険者である。多分、クルムのギルマス特権での最高ランクを与えたと思われる。上位種に率いられた30匹以上のオークの群れを、僅か5秒以内に殲滅する力は、Sランクと見て間違いない。しかし、彼の使用した二つの風属性魔法は、リーマの魔法学院で学んだどの魔法とも異なる特異なものであった。腕の一振りで発動した風の刃は、15匹ぐらいのオークの首を一瞬で刈り取った。同じ護衛依頼を受けていた『暁の四姉妹』の魔法使いのメグは、直接タクマに聞いて、元がAランクモンスターのフェンリルが使う風の牙を改良して作られた魔法が、風の刃だと教えてくれた。何故、メグがこんな大事な情報を簡単に俺に話してくれたのか不思議に思っていると、メグはこの時、風の牙と風の刃の詠唱術式を、タクマから無償で教えてもらっていた。いや、無償では無かった。代償として、使い勝手の悪い突風山おろしをタクマに教えたようだ。俺たち『火炎奏者』の中で風属性を持つのは、気配感知を使う俺以外いないため、せめて風の矢ぐらい使えるように勉強しておけば良かったと悔やまれる。それから、一度に20発の雷撃を放ちオークの頭を直撃させる魔法制御は、魔法学院の学院長でも不可能な技だ。そのうえ、32匹のオークと、オークメイジ一匹、オークジェナラル一匹を収納しても余裕のある魔法袋を所持しており、それが魔道具開発ギルドのものと少し違ったように思う。魔道具開発ギルドの専売品以外で、もっと容量の大きい魔法袋があるのかもしれない。


 何であの時、『暁の四姉妹』と一緒にタクマくんに話しかけることをしなかったのが、今も悔やまれる。

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