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第12話 豚肉(オーク)の確保完了

 アトキア王国王都リーマの冒険者ギルドで、Aランク冒険者パーティー『森林の守護者』のリーダーを務めるオズマは、嫌な予感を感じていた。今回、王都リーマから辺境都市クルムへの隊商護衛依頼を受け、他の冒険者パーティー『剣戟の突風』、『火炎奏者』、『暁の四姉妹』の三パーティーと合同で、荷馬車10台の隊商護衛をしていた。『剣戟の突風』はBランクパーティーであり、『火炎奏者』と『暁の四姉妹』はCランクパーティーのため、自ずと、護衛隊の指揮をオズマが任されていた。最初の危険地帯である深淵の森の縁を通る間は、ゴブリンの群れとコボルトの群れに遭遇したが、恐れていたサーベルタイガーや、グリフォンに出会うこともなく、通過することが出来た。それ以降、他のパーティーメンバーに緊張感が抜けてきているのを、危惧していたが、今日は朝から特に酷く感じ、全員に活をいれたところだった。しかし彼らもBランクCランクのパーティーであり、Cランク冒険者と言えば高額報酬対象と認められる実力者で、他のパーティーのリーダーに叱責されることを不満に思う傾向がある。況してや、Bランク冒険者にとっては、余計なお世話である。隊商全体に気不味い空気の状態で、10台の荷馬車の隊列が進んでいた。前方を騎馬の『剣戟の突風』の5人が先導し、中段に指揮をするオズマが『暁の四姉妹』の四人と、魔法使い5人のパーティー『火炎奏者』と一緒に徒歩で回りを囲み、後衛にオズマ率いるパーティー『森林の守護者』の5人が騎馬で付き従うという配置であった。


 突然、前方に火の手が上がる。ファイアーボールを撃ち込まれたようだ。直撃を受けたものは居ないようだが、馬が恐慌に陥っている。手綱を引き絞り馬を落ち着かせた『剣戟の突風』の5人が、馬を飛び降り前方に駈け出す。

 「何事だ。盗賊の襲撃か?」と横に居る『火炎奏者』のリーダーに問いかけると、

 「オークの襲撃だ。オークメイジがいるようだ。」とサーチ結果を答える。

 「ヤバい、上位種が居るようだ。30匹以上の群れが居る。」気配感知で気付いた『火炎奏者』のリーダーが続ける。

 「よし、荷馬車を右手の岩山に際に避難させろ。全員で囲って荷物を守れ!」と、後衛の仲間に命令し、『火炎奏者』と『暁の四姉妹』を引き連れて、『剣戟の突風』の応援に駆け付ける。

 本来、オークはDランクの魔物であり、Cランク以上の冒険者にとっては、肉の旨い獲物でしかなく、通常1対1で引けを取るものではないが、深淵の森に近い地域においては、Cランク相当の脅威となる。そこに、上位種が介在し群れを統率した場合は、Bランクの脅威と見なされる。荷馬車を岩山の際に寄せ、馬と商人達を荷馬車の裏に隠し、『剣戟の突風』がなんとか押せえていたオークの群れと相対する。


 20人の冒険者たちの前方に30匹以上のオークが隙を覗っている。バラバラに襲ってくるものはいない。その背後に一際大きいオークジェネラルが居る。Bランクの魔物だが、本当に怖いのは、オークたちを手足のように指揮する能力だ。その横に小柄なオークメイジも控えている。死人が出るなとオズマは理解した。まさに、オークの一団に向け、『火炎奏者』の5人がファイアーボールを放とうとしたその時、前方から一台の荷馬車が突っ込んできた。

 思わずオークの一団も後ろに下がる。

 「加勢がいるか?」その荷馬車の御者台から少年が聞いてくる。この場面にそぐわない事務的な言葉づかいで、

 「頼む!」オズマは何故か叫んでいた。

 「解った。」そのひと言で、御者台の少年はオークの一団に右手を振る。その一振りで、前面にいたオーク十数匹の首が飛ぶ。次に両手をオークたちに突き出すと雷撃がオークジェネラルの周りに降り注ぐ。オークメイジを含むジェネラルの周りの十数匹が雷撃の直撃を受け倒れる。そして少年の姿が御者台から消えた。

 只一匹生き残ったオークジェネラルに向け少年の影が走った。

 Bランクモンスターのオークジェネラルが、何も出来ず首を刎ねられていた。僅か5秒足らずで、オークジェネラルに率いられた30匹以上の群れが、一人の少年により殲滅された。


 「俺は、クルムのBランク冒険者タクマだ。この獲物全部俺が貰っていいか?」ゆっくり歩いて戻ってきて、護衛団のリーダーらしき男にきくと、

 「私は、この隊商の護衛隊のリーダーを任されている『森の守護者』のオズマだ。王都リーマのAランク冒険者だ。勿論、君が全て倒したんだから当然だ。」と答えてくれた。

 これは、話しの通じる男だなと思い、他の護衛メンバーの顔を伺うと、皆、無言で頷いてくれた。すぐに引き返し、全てのオークを異空間収納に収める。魔法袋に収納するように作っておいた魔法袋擬きをわざと取り出して異空間収納魔法を隠すことにした。オーク32体、オークメイジ1体、オークジェネラル1体の合計34体だった。当分豚肉の心配はしなくてよくなった。カムエルさんが、隊商の商人や護衛のオズマさんと話ているので、そちらに向かった。


 「カムエルさん、獲物の回収は終わりました。すぐに出発しますか?」と聞くと、

 「あ! タクマさん、少し待っていただけますか?こちらのオズマさんや、ゴメスさんに深淵の森周辺の情報を伺っていきますので、しばらく休憩しましょう。」と言う。

 「解りました。」俺はカムエルさんに返事をすると、自分たちの荷馬車に戻り空地の端に移動する。幌の中のフレアさんに声をかけ、土魔法でテーブルとイスを簡単につくり、今朝の作り置きの紅茶を異空間収納から出して、寛いでいた。そこに、4人の20代ぐらいの女性が近寄ってきた。

 「こんにちわ、私たち『暁の四姉妹』という王都リーマのCランクパーティーなんだけど、美味しそうな紅茶の香りに引き付けられちゃった。ごちそうして頂けないかな?」と声をかけてきた。俺がフレアの顔を見ると、了解するように頷くので、

 「良いですよ、どうぞ」と声をかけ、土魔法でイスを四つ、すぐに作る。

 「ありがとう。私たちパーティー名は四姉妹だけど、本当は全員リーマの冒険者養成学校の同期の友達なの。私が、リーダーのエマ、右が、盾役のシーラ、中央が遠距離担当の風魔法担当メグ、で最後は私と同じ剣士のリンダよ。よろしく。」と気さくに話しかけてくる。

 「はあ、俺はタクマ、こちらが依頼主カムエルさんのお嬢さんでフレアさん、火魔法使いですね。」と答える。

 「フレアです。よろしく。今回、王都リーマの魔法学院に入るため同行しました。」とフレアも挨拶する。

 「じゃあ、リーマに住むんだ。三か月後には帰ってくるから、街で会ったら声をかけてね。私たちかれこれ5年リーマで暮らしてるから、安くて美味しい店教えてあげる。それはそうと、メグ、あんたタクマさんに聞きたいことが有ったんじゃないの?」とエマさんがメグさんに話を振る。

 「あ!、はい、タクマさん、先程、最初に使われたのは風魔法ですよね?教えて頂けませんか?」とストレートに問われた。正直すぎるだろと思ったが、嫌いじゃない。

 「あなたも風魔法使いでしたね。あれは、Aランクモンスターフェンリルの風の牙から発展させた風の刃という魔法です。風の牙は、標的を1m幅程度切り裂く単体攻撃だったので、詠唱を改良して20m幅に効果を広げた範囲攻撃魔法が、風の刃です。魔力量をかなり必要としますので、最初の内は風の牙を練習することをお勧めしますね。簡略化してますので、詠唱もすぐに覚えられると思いますよ。」俺はすぐにメグさんに風の牙の術式と詠唱を教えた。お礼にと彼女は自分の持つ風魔法、突風山おろしを俺に教えてくれる。結構強力な魔法で、ゴブリンぐらいなら吹き飛ばしてしまえる威力があったが、魔力消費が大きく、使い勝手が悪いとぼやいていた。しかし、これにファイアーウォールを組み合わせたら絶大な威力の範囲魔法になると確信した。俺とメグさんが風魔法の話し合いをしていた間、フレアさんは、他の3人と、リーマの情報交換に勤しんでいた。カムエルさんと、ゴメスさんの話合いも終了したようで、こちらに向かって歩いてくるので、俺たちもお茶会を終了することにした。


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