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第1話 覚醒

 勇者や魔王は出てこない、タクマ少年のノンビリ異世界ライフ

が書きたくなりました。どうなるんでしょうか?

 十五才で成人と認められ、冒険者ギルドに登録出来る様になったタクマは、養父ゴンズイと、クルムの街にやって来た。タクマは、獣人族のゴンズイが盗賊に襲われていた乗合馬車から助け出した人間族の赤ん坊であった。盗賊は、ゴンズイたちの冒険者パーティー『森の守護者』に全員討たれたが、御者を含め、客も全て殺されていた。只、その死んだ客たちの中にタクマの両親と思われる者はなく、誰が赤ん坊の身内なのか解明する事は不可能であった。そんな訳で、虎族の獣人であるゴンズイが、父親となって、タクマを育ててくれたのだ。そんな義父ゴンズイの役に立ちたくて、タクマは、必死に訓練して、今日やっと、冒険者登録に連れてきてもらったのだ。二人が住むオーマ山岳地帯から2週間歩いてこのクルムの街に辿り着いたところである。

 「親父、冒険者ギルドはどこかな?」

 「真直ぐ歩け、中央広場の前にあるから、心配いらん。その前に何か腹に入れ ておくか?」ゴンズイが道沿いの屋台から、肉の串焼きを二本買って、一本を俺に手渡してくれた。山岳地帯で育ったタクマには初めての街と、人の多さに気圧されていたが、一口肉を齧って少し余裕ができた。良く見ると、この街は獣人族と人間の割合が半々位で、殆ど諍いもないようである。オーマ山岳地帯は獣人の村があるだけで、自分以外の人間は見た事が無かった。と言っても、タクマとゴンズイが村に住んでいた訳ではなく、二人は山の中の小屋に住み、狩りをして生きてきた。元Bランク冒険者のゴンズイにとって、魔物や野生動物は全て獲物であり、物心ついた時からタクマに戦い方や、捌き方を見せ、自分でできるように教えてくれた。引退前は、クルムの街の冒険者ギルドを拠点に活動していた義父ゴンズイにとっては自分の家の庭のような物であり、懐かしそうに屋台の親父たちに声をかけながら歩くため、なかなか冒険者ギルドに辿り着けない。串焼きを食べ終わると、またイライラしてきたので、親父を急かしてなんとかギルドに辿り着く。ギルドの扉を抜け中に入ると、受付はガラガラの状態であった。

 「もう昼前だから、皆依頼で出払っているさ。朝一と夕方が一杯になるがな。」と親父が囁く。エルフのお姉さんがいる受付に向かう。他の受付は客がないので閉まっているのか、誰も居なかったのだ。

 「オーマ山から来ましたタクマと言います。15才になったので冒険者登録に来ました。手続きをお願いします。」義父ゴンズイに教えられたとおりに言えた。

 「はい、解りました。文字は書けますか?」と聞かれたので、頷くと、記入用紙を出され、「では、これに記入して下さい。」と渡される。隅の記帳台に行き記入することにした。名前は、「タクマ」出身地「オーマ山」年齢「15才」武器「剣」特技「解体」この位かな、魔力「解りません」と追記して先程の受付に提出する。

 「はい、ありがとうございます。それでは、冒険者ランクについて説明させていただきます。通常はFランクから始まりE、D、C、B、A、Sランクへと昇格いたします。依頼達成実績と、保有魔力で決まりますので、まずこのオーブで、タクマ様の保有魔力を測定します。では、このオーブに手を翳して下さい。」

 俺は、言われるままに、オーブに手を翳した。何故か掌が温かくなってきたら、透明なオーブが、水色になり、次に赤、緑、黄色、黄金色と変わり最後に真っ黒になると突然破裂してしまった。掌にすごい衝撃が飛び込んできて、俺は、意識を失った。

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 目を覚ますと、真白な世界に私はいた。前世の記憶が蘇る。私は、65才で会社を定年退職し、天涯孤独となった離婚歴のある男だった。子供も居ない一人ぼっちの老後を、唯一の趣味の渓流釣り三昧で送ろうと、紀州山地の古民家を買い、自分でリフォームして移住してきた。その日も家から車で30分位の川で夕間詰めのアマゴ釣りをして、車で家に帰る途中だった。目の前に子鹿が飛び出してきた。ハンドルを目一杯切って山側に避けることができたが、停まりきれず杉の木に激突して反対側の谷に飛ばされてしまう。あ!だめだと思ったとき、大きな牡鹿が道に出てきたのが目に入る。何とも言えないような牡鹿の目と額の有り得ないものが目にとまる。あれ、何で3本も角が有るんだよと不思議に思い、後は谷に落下した。その後の記憶が無いのはやっぱり死んでしまったようだ。それからこの異世界にタクマとして生まれ変わった様である。タクマとして物心付いてから、ゴンズイにこれまで育てられたことは、はっきり記憶しているから、前世での記憶が戻っただけかと思ったが、こんな白い世界は来たことがないので、起き上がり警戒する。

 「やあ、覚醒したようだね。そのタクマの身体は、息子が転生する予定だった身体なんだ。貴方が、身代わりになったためにそのまま転生して終ったようだ。ああ、私の姿が見えないのか、これで解るかな?」

 突然、声のした方を見ると、谷に落ちる前に見た3本の角を持つ牡鹿が現れた。

 「ええ、貴方、神様だったんですか、神様が自分の子供を私に轢き殺させようとしたんですか? そうなりますよね。」と問いかけると、

 「いや、すまぬ。どうしてもこの世界に自然を守る神が必要だったのだ。この世界コームリアには、人族の神、獣人族の神、エルフの神、ドワーフの神、魔族の神とそれぞれ己が種族を護り祝福と加護を与える者たちがおり、強力な魔法で戦いに明け暮れ、自ら魔物を生み出し続けている。自然界の野生動物や植物は蹂躙され続けるしか無かったのじゃ。その楔に我が子を転生させ、奢れる神々の目を覚ませたかったのじゃが、思わぬそなたの優しさから計画が狂って終った。そのタクマの身体には、コームリアにいる全ての神々の魔力属性と魔力量を与えておる。そなたに、その力を使って神々を諫めよとは我には言えぬ。そなたは、このコームリアで自由に過ごしてくれればよい。我が子の器となる身体は、また造ることにするが、千年程、親子で過ごせる時間をそなたに頂いたと思うことにする。詫びにそなたが望むことを、一つ叶えようと思うが、何かないか?」

 「特に何もありません、強いて言うなら、あの可愛いバンビの息子さんを成長するまでそのような使命に縛らないで頂きたいです。私は、何処かの山で、渓流釣りを楽しみ、小さな田圃と畑を耕して気楽に二度目の人生を謳歌させてもらいます。」

 「ははは、やはり其方は面白いな。好きにやってくれ。只、力は程々に押さえた方が、良いぞ。また会おう。」と言って消えてしまう。別に会いたくは無いんだけど。

 

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