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僻地の英雄  作者: レイス
プロローグ
5/9

最悪の襲撃者

 「うわー!助けてくれ!」

 「何なんだよ!こいつら!?俺達が、何したっていうんだ!?」

 村人達は、突然の襲撃者の襲来に、逃げ惑っていた。

 それは、数分前のことだった。ハーテの村に、二人組の男が現れたのだ。最初は、来訪者と思い、近付いた村人達だったが、男達は、近付いて来た村人数人を切り殺すと、どこからか魔物を呼び出し、村人達を襲わせたのだ。

 「あいつら・・・何で魔物を!?人間じゃないのかよ!?」

 「とにかく逃げろ!港に逃げれば、臨時用の船がある!それに・・・!」

 その時、村人に何かが襲い掛かった。それは、村人と同じ丈の狼のような生き物で、襲い掛かった村人に、鋭い牙で噛みつき、貪り始めた。

 「ぎゃあああああああ!?助けてくれええええ!!!」

 襲われた村人は、一緒に逃げていた村人に助けを求めるが、その村人は、恐怖のあまり、その場から逃げ出そうとする。

 「・・・三人目。」

 しかし、その村人を、襲撃者の一人が剣で切り捨てる。村人は、頭のてっぺんから股まで、真っ二つにされていた。

 「・・・張り合いのない。人間とは、ここまで弱かったか?」

 そう言うと、襲撃者はフードとローブを脱いだ。男の姿は、黒い鎧を着、人間と似た姿をしていたが、頭には角のようなものが生え、肌の色も灰色と、とても人間とは思えない姿であった。

 

 「俺達の村から出て行きやがれ!」

 「こいつら!俺達を舐めるんじゃねー!」

 「おらおら!俺の剣の錆にしてやるぜ!」

 村の別の場所では、数人の村人達が、魔物達を相手に戦っていた。手には、剣や槍を持ち、魔物達を薙ぎ倒していた。彼らは、かつては騎士になろうと志し、村を出たものの、結局果たせず、村に戻って来た者達であった。だが、戦う術を知らない他の村人に比べれば、十分に強かった。

 「結構倒したな。」

 「これなら、追い払えるかもしれないぞ。」

 「よし!次に行くぞ!」

 「ほう・・・こんな僻地にも、戦う術を持つ人間がいたのか。」

 「!」

 そこに、襲撃者の片割れが現れた。手には、剣が握られていた。

 「こいつ・・・!あの時の・・・!」

 「お前のせいで、村が!この野郎!覚悟しやがれ!」

 二人の男が、武器を手に襲撃者に飛び掛かる。しかし、次の瞬間、二人の身体は、両腕と両足、首が胴体から離れていた。

 「!?」

 「・・・だが、所詮はこの程度か。魔物は殺せても、俺は殺せない。」

 「こいつ・・・いつ切ったんだ・・・!?」

 男達は、目の前の襲撃者に戦慄した。当然である。いつ攻撃したのか、まったく分からなかったのだ。

 そんな男達を尻目に、襲撃者は、男達に尋ねる。

 「・・・お前に聞きたいことがある。お前達の村に、アイクの末裔が他にもいるか?」

 「な・・・何の話だ?・・・アイクって・・・グランツの家のアイク坊やのことか?」

 「家名など知らんが、坊やと言うなら、そいつだろう。奴に、他に家族はいるのか?」

 「い・・・いない!アイクは、孤児だったんだ!俺達の仲間のグランツが、赤ん坊のアイクを拾って、自分の子供として育てたんだ!」

 「・・その、グランツはどこだ?」

 「も・・・もう、死んでいる!・・・数年前に・・・病気で・・・!」

 「・・・そうか。なら、もうお前達に用はない。」

 襲撃者は、残りの男達も、一刀の下に切り伏せていた。男達は、自分達が死んだことも理解しないまま、死んでいた。

 「・・・そうか。ここに、アイクの末裔は、あの子供以外いなかったのか。・・・まあいい。どうせ、皆殺しにするのだからな。」

 襲撃者はそう呟くと、着ているものを脱ぎ捨てた。その襲撃者も、片割れ同様、鎧を着、頭部に角を生やし、灰色の肌をしていたが、鎧の色は、白かった。


 「おう、ザガン。そっちはどうだった?」

 黒い鎧の男が、魔物達を引き連れて、白い鎧の男の許に来た。白い男の側にも、大勢の魔物が控えていた。

 「片付いた。お前の方は、どうだった、マーガン?」

 「抜かりはない。皆殺しだ。・・・それにしても、五千年も見ない間に、ずいぶん人間は弱くなったな。昔は、もう少し骨があったと思うんだが・・・。」

 「・・・マーガン。一つ、悪い報せがある。」

 「悪い報せ?・・・まさかお前、逃がしたのか?」

 「逃がしてはいない。・・・だが、アイクの末裔に関して、問題が発生した。ここは、アイクの末裔の故郷ではない。あの子供は、孤児だ。」

 「孤児?じゃあ、あいつの家族は、大陸にいるのか?」

 「それは分からん。ひょっとしたら、既に死んでいるかもしれん。・・・今となっては知りようがないが・・・。」

 「なんてことだ・・・俺達の手柄は、ガキ一人か・・・。」

 「子供一人でも、戦果としては十分だ。アイクの血族は、一人たりとも生かしてはいかんのだからな。」

 「だな。・・・さて、次はどうする、ザガン?」

 「無論、逃げた者、外に出ていた者がいないか、島狩だ。同時に村も焼き払う。」

 「分かった。じゃあ、ドラゴンでも出すか。」

 「ああ。徹底的にやる。虫一匹たりとも、島から出さん!」

 二人は、手を上げると、どこからともなく巨大な竜が姿を現した。

 「すべて破壊しろ!何もかも焼き尽くせ!すべては、魔王様のために!」

 「魔王様のために!」

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