最果ての村の少年アイク
「はっ!?」
青髪の少年が、ベッドの上で目を覚ました。少年は、全身汗びっしょりで、荒い息を上げていた。
「・・・またあの夢か・・・一体何なんだろう・・・?」
少年アイクは、最近、この不気味な夢を毎晩見ていた。自分と同じ名前の男が、魔王と呼ばれる男と戦い、最後に霧に呑まれる。そんな夢である。
(・・・あの人・・・僕と同じ名前の人だったな。・・・でも、僕と違って、すごく勇敢で、強い人だったな。・・・でも、あの戦っていた男は、誰なんだろう?王とか言われていたような・・・。・・・それに、あの戦いの迫力や・・・まるで、本当に戦いをまじかで見ていたような感じがする・・・。)
アイクにとって、これは悩みの種であった。当然である。面識のない男が、知りもしない男と戦い、まるで死んでしまう様な光景をまじかで見ている夢なのだ。しかも、妙に生々しさがあった。まるで、現実のような。
(・・・まさか・・・ね。)
「おーい、アイク。起きてるかー?」
その時、外から少年の声が聞こえてきた。
「!ゲイルだ。もう、そんな時間か。」
アイクは、ベッドから起き上がると、窓まで近付き、開けた。
「おはよう、ゲイル。」
窓を開けたアイクは、側にいる少年に挨拶をした。そこには、茶髪の少年が、アイクを見つめていた。
「遅いぞ、アイク。今日は、山で剣の練習をするって約束したろ。」
ゲイルと呼ばれた少年が、困った様な顔をして言う。
「ごめん、ゲイル。・・・今、支度をするよ。」
アイクはそう言うと、窓を閉めると、服を着替え、壁に掛けてある剣を取り、腰に差した。
「・・・よし!」
アイクは、キリッとした表情になると、家の扉を開けた。
ここは、最果ての村ハーテ。グラン大陸の北東にある、小さな島の村である。大陸とは、定期的に来る船でしか行き来ができず、大陸の人間も、ほとんどこの村の存在を知らなかった。
この村に住む少年、アイク・グランツは、いつかは村を出、騎士になることを夢見ていた。だが、お世辞にも剣術がうまいわけではなく、体力もそこまでなかった彼は、村の子供達からは、いつもからかわれていた。そんなアイクの夢を応援してくれたのは、親友のゲイル・コートニーだけであった。
今日は、彼と共に、村の近くの小さな山で、剣術の練習をする約束をしていたアイクは、待っていたゲイルと共に、山へと向かうのだった。
だが、少年はまだ知らない。自身の運命が、今日で大きく変わるということを・・・。