魔王グランと剣士アイク
一旦、内容を一新するために、前の話をリセットしました。
二人の青年が、階段を上っている。一人は、青髪で、剣を手にした軽装の青年。もう一人は、重装の鎧に身を固め、巨大な斧を持つ青年である。
「・・・もうすぐだな。」
軽装の青年が、重装の青年に話しかける。
「・・・ああ。もうすぐ玉座の間だ。そこに、奴がいる。」
重装の青年が、言葉を返す。
「・・・ビビってるか、ガイ?」
軽装の青年が、揶揄う様に言う。
「・・・お前こそ、逃げるのなら今のうちだぞ、アイク。」
ガイと呼ばれた青年も、揶揄う様に言う。
「逃げる?とんでもない。せっかく、英雄になれるチャンスだっていうのに、逃げるわけないだろう?」
アイクと呼ばれた軽装の青年は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「・・・だがな、相手は乱心したとはいえ、かつては闘神と呼ばれた、この国の王だ。・・・勝算はあるのか?」
「・・・俺を誰だと思ってるんだ?俺は、英雄になる男、アイク様だぜ?奴が、闘神なら、俺は英雄神だ。」
アイクは、ガイの言葉にさほど動揺せず、むしろ自信あり気に答えた。それを聞いて、ガイは微笑んでいた。
しばらくして、二人は、巨大な扉のある部屋の前に辿り着いた。扉は、二人の身の丈の倍以上の大きさであった。
「・・・開けるぞ。」
「・・・ああ!」
ガイは、手にしていた大斧を振り下ろし、扉に叩き付けた。扉は易々と粉々に砕け散った。
壊した扉をくぐり、二人は部屋の中に入った。部屋は、端から端まで百m以上あり、一番奥には玉座があった。その玉座には、一人の男性が座っていた。男性は、立派な身なりをした壮年の男で、側には剣が立て掛けられていた。
「・・・よくぞ、ここまで辿り着いた。まずは、誉めてやろう。」
玉座に座る男性は、二人に語りかけてきた。しかし、その声は、まるでこの世の者とは思えないような不気味なものであった。
「グラン王・・・いや、魔王グラン!俺は、アイク!お前を倒し、英雄になる男だ!」
「お前の悪行も、ここで終わりだ。潔く、殺されろ。」
「面白い。ならば来るがいい。」
「行くぜ!ガイ!」
「・・・ああ!」
アイクとガイは、得物を手に、玉座の男に向かって行く。玉座の男は、不気味な笑みを浮かべると、鞘から剣を抜いた。
最初に仕掛けたのは、アイクだった。アイクの剣が、男に振り下ろされる。男は、剣で防ぐと、アイクの剣を払い除けて、アイクを斬り付ける。アイクはそれをかわす。アイクが攻撃をかわしたと同時に、ガイの大斧が男に振り下ろされる。男は、信じられないほどの跳躍で、軽々とそれをかわす。斧は、そのまま玉座を直撃し、粉々に砕く。かわした男は、上空からガイに斬りかかる。男の剣を、ガイは斧で受け止め、そのまま振り払う。振り払われた男は、壁に叩き付けられそうになるも、壁を蹴り、それを推力にガイに向かって突進する。その男を、今度はアイクが迎撃する。アイクと男は、剣で斬り合う。何十回と剣がぶつかり合うも、お互い一歩も引かず、一旦互いに距離を取るべく後ろに下がる。
「やるな!さすがは、闘神と呼ばれただけある!」
「・・・アイク、俺が奥義を出して足止めする。その隙に、奴をやれ。」
「分かった!」
ガイは、斧を自分の周囲で振り回し始めた。
「俺の奥義!戦斧術!剛力乱旋風!!!」
ガイはそのまま、男に突進する。男は、ガイの攻撃を剣で易々と防いでいく。
「くだらん技だ。力任せに斬りかかるだけではないか。」
「・・・アイク!やれ!」
ガイの声と共に、アイクが上空から男に斬りかかる。しかし、男はガイの斧を剣で止めると、そのままガイを突き飛ばしてしまう。
「な・・・何・・・!?」
男は、ガイを突き飛ばすと、アイクの攻撃を受け止める。
「悪くはない。・・・だが、猿でも分かる手だ。」
「ちぃ!」
手を読まれていたアイクは、再度男から距離を取った。
「こうなったら、小細工はなしだ!俺の全力で叩き斬ってやる!」
「・・・来い。」
「・・・行くぜ!虹彩剣!」
アイクは、掛け声と共に剣を構える。すると、アイクの剣が、虹色に輝き出す。
「・・・ほう。」
「虹彩剣奥義!七彩光烈破!!!」
アイクは、光り輝く剣を振り下ろす。その光は、衝撃波のように男に向かって行く。
「・・・む!」
男は、剣で止めようとするが、アイクの攻撃は凄まじく、刀身にヒビが入っていく。
「行け~!!!」
アイクはさらに、気合いを入れると、光の衝撃波は、さらに大きくなる。男の剣は、とうとうそれに耐え切れず四散し、男を貫く。貫かれた男は、頭部から真っ二つに斬り裂かれた。男の身体は、斬り裂かれた場所から夥しい血を吹き出しながら、崩れ落ちていった。
「・・・やった・・・!やったぜ!」
男を倒したアイクは、フラフラとその場に倒れた。
「・・・やったな、アイク・・・。」
倒れたアイクを、ガイは助け起こす。
「ああ・・・これで・・・俺は、英雄に・・・!」
『ふふふふふふふ・・・。』
突然、部屋中に不気味な声が響き渡る。
「!?誰だ!?」
『・・・魔王は滅びぬ・・・我は、不滅なり・・・。』
すると、斬られた男の身体から、黒い靄のようなものが出てきた。
「!?何だありゃ!?」
「・・・分からん・・・何なんだ・・・あれは・・・?」
黒い靄は、部屋中に広がり、二人を覆い尽くしていった。