彼女の月は
はじめまして。ことのはゆみです。
まだ慣れてなくて読みづらいところや、よくわからないところなどもあるかもしれませんがよろしくお願いします。
ごゆっくりどうぞ。
「いつか、月を抱きしめたいんです。」
彼女は言った。よくわからないことを。月は寂しそうだ。悲しい光なんだ。と俺に説明してくれた。
部活終わりに彼女の大好物の桃の缶詰をコンビニで買う。それを食べながら帰るのはもうおなじみとなった。
彼女と言ってもべつにガールフレンド等ではない。部活の先輩と後輩である。そこから発展もしない。
彼女は食べかけの桃をフォークにさしたままかかげて言う。
「月には旗がたっているらしいです。自分のものになるわけじゃないのに・・・。」
「じゃあ自分のものにするにはどうすればいいんだろう。」
それは・・・と桃を一口食べて少し考える。
「この桃みたいに・・・うーん。」
また一口。
「食べちゃえばいんです。無くなって、自己満足。早い者勝ち。やったぁー。」
最後の一口を食べて残り汁の入った缶をフォークでカチャカチャと鳴らす。あのさ・・・と言いかけた時、彼女が話しだす。
「なんで旗をたてたんだと思います?」
あ、そのまえに汁捨ててきますね。と公園に走っていった。なんでって言われても・・・。
「月に来た印、とかじゃないか?」
走って戻ってくる彼女に少し大きな声で言った。それもそうですが・・・と定位置になりつつある俺の左にまわりこむ。
「月を・・・月を愛していたからです。恋焦がれていたからです。きっと。」
その後そんな会話などなかったかのようにいつも通り他愛もない話をして歩いた。
俺の家まであと約百メートル。さっき言いかけた言葉を言う。
「あのさ・・・俺・・・。」
「知ってます。知ってますよ、先輩。」
いつもとは違う少し震えた声で彼女は話し続ける。
「彼女・・・できたんですよね?もう一緒に帰れないですねー。彼女さんに怒られちゃう。」
えへへと少し困ったような顔で笑う。俺は何も言えなくなった。もう、家の前だ。
それじゃ・・・と顔を見れないまま家に体を向ける。
「先輩。」
手を掴まれた。
数秒してすぐ手を離し、さよならぁ~と間延びしたようなしゃべり方で別れを告げる。
掴まれた方の見ると可愛い柄の絆創膏が貼ってある。
「なにこれ・・・。」
と聞くと振り返らずイヤホンを取り出しながら言う。
「・・・旗ですー。」
といってイヤホンをつけて帰って行った。
俺は十分後に彼女の携帯電話を鳴らした。
ありがとうございました。とても短くてすみません。
私が高校生の頃、初めて書いた小説になります。
この作品は三題噺で四十分ほどで書いたお話です。
卒業した同行会長とお話してるときに三題噺の話になり二人でお題を出し合って書かせていただきました。
少ない時間で書いた割には自分ではこの作品はとても気に入っています。
読んでくれる方々それぞれがお好みのラストを想像、そして創造できると思います。楽しんで読んでいただければ私も嬉しいです。