心理を読む
犯罪者の生い立ちは、実に悲しい物だった。
小さい頃両親に捨てられ、施設へ入る。孤独との闘いの中、ある人物と出会った……。
勿論これは心を読んで分かった事で、本人から伝わった物ではない。
本人は黙秘を貫き、何も語らない。しかし何故何も語らないのか……。
大体においてまあそんなものだろうと思うのだが……。何か違う物も感じた。
それは奏斗も同じだった事は後で知ったのだが。
施設を出た彼はその人物にある組織を紹介される。
何処かの島の……。分からない……。何かを必死に隠そうとしているのか、それ以上心を読む事は困難だった。
それ程までに何かを隠そうとしていて、奥深い物は読み取れない……。
そうして私達の訓練は終わった。
「後で報告書を作成してもらいます。 夕食までに終わらせて下さい」
(おい……。 お前、あいつの心理読めたか? オレは途中までしか分からなかった。 何か隠そうとしてるのは分かったけど……。 組織ってのが気になるよな。 報告書には書くけど……)
(私もそれは思ったよ。 てっきり軽犯罪者かと思ったけど……。 何かありそうね。 明日もあるのかしら? )
(いや……、ないだろ? あれだけ神経を集中させるんだ。 連日だと情報が狂うし、こっちの身がもたない)
(それもそうね……。 あ、見回りが来た!)
私は慌てて自室の机に座り、報告書に今日の事を書いた。
それにしても……。やっぱり気になるな。あれだけ頑ななんだもん。それにある人物と組織って何だろう。
報告書に記載しながら、私はそんな事を考えていた。
心理を探るくらいだから、きっと何かあるのだろう。その情報を集めて、私達を使って何かさせる……。
直感力が私にそう訴えていた。
ここにいる人の、この上にいる人達の本来の目的……。犯罪者を減らすなどそんな慈善的なものではきっとない。
確かに犯罪を減らすことも考えているだろう。けれど根本的な何かを解決したいはず。
それには私達の様な能力者が必要なんだ。
そこまで考え思考をシャットアウトした。
これ以上は疲れるから……。
それに今考えても分からない事だらけだし。
その内何か見えてくるだろう……。
ふとそんな事を考え、ある事を思いついた。
……オリジナルではない人の心を読む。確かに誰がオリジナルではないか分からないけれど。私達に指示する人は……。オリジナルではない?
明日奏斗に相談してみよう。
その後、報告書を提出し、夕食を食べ私達の一日は終わった。




