実地訓練。
「それでは今からグループ分けをします」
ある朝いきなり廊下に並べられ、そう告げられた。
「能力別にグループに分かれて訓練をします。 今後はそのグループで行動をして下さい」
何? いきなりグループ別にって。
突然の事に頭がついていかない私をよそに、各々名前が呼ばれた。
AグループならEグループまで分けられる。
私は奏斗と同じAグループになった。
(いきなりグループ分けって何の為だろ)
食堂で会って以来、度々お互いの事を話す様になった私達。
勿論声にして話す事はない。
テレパシーみたいな物で意思の疎通をはかる。
しかし、テレパシーの微弱な何かを察知する機械があるらしく、最新の注意を払わなければならなかった。
だが、お互い同じ様な立場なので、不思議と心開いて会話ができる。
奏斗も特殊能力者で、遺伝子操作をされ生まれてきたらしい。
けれど、遺伝子操作意外の能力も備わったと言う。
私との会話もその一つだ。
それは二人しか知らない。知られてしまったら利用されてしまう。
(もうグループ分けになったんじゃないの?)
(色んなデータを集めたんだな……。 あいつの心をちょっと読んだ。 再度ふるいにかけ、 より高度な能力を求めているらしい)
奏斗はラボの人間の深層意識をも読み取れるらしく、心を読んだと言った。
心にフィルターの様な物をかけ、相手に気持ちを読み取られない様にしているラボの人間も、オリジナルには敵わない。所詮は後付けで訓練した人間だ。
しかし本物もいるので気は抜けない。
最初から備わった能力持ちの人間もいる。
数は少ないが。
「今から実際の訓練を行います。 犯罪者と接触し、 心理を探る訓練です。 さほど凶悪ではないですが、 何処と繋がっているか分かりません。 慎重に行動して下さい」
そう言うとエレベーターに乗せられ、別の棟へと移動した。
警察の取り調べ室の様な部屋に、人が三人いる。
私達は六人グループから三人に分かれ、その部屋の隣の部屋へと入った。
壁一面が白く、中央にはテーブルと椅子が置かれていて、壁の一部はマジックミラーになっていた。
隣の部屋には三人の人間。先程少し透視した通りであった。
一人は犯罪者。後は警察だろう。
「では椅子に座り、 隣の部屋の犯罪者の心理を読んで下さい」
そんな事を言われて、はい。分かりました。とはいかない。
相当な集中力が必要だし、邪念や雑音が入ると違う結果になってしまう。
三人でやれなんて……。
だが、私の意志など聞いてはもらえない。
取り敢えず、犯罪者であろう人物の顔をじっと見た。
この人の生い立ちから見なくてはならない。
私は集中した。