夏祭り―約束―
・・・僕は三島 裕介、都市部の全寮制の高校に通う高校2年生・・・
8月、久しぶりに町へと帰ってきた。
前に帰ってきたのはGWのときだったから3ヶ月ぶりだろうか・・・
今日は町の中央グラウンドで夏祭りが行われるらしい。
去年、訪ねることができなかった夏祭りに今年は行って見ようと思う。
― 中央グラウンド ―
会場は多くの人々でに賑わい、熱気が溢れていた。
グラウンド中央には盆踊り用のやぐらが建てられその周りを屋台が円を作るように並んでいる。
心なしか前来た時よりも少し屋台の数が減って屋台の輪が小さくなっているようにも感じる。
中学3年生の頃までは毎年来ていた夏祭り、僕はゆっくりと屋台をみてまわる。
射的、金魚すくい、いか焼き、フライドポテト、クレープ・・・
そしてかき氷の店のそばにたどり着いた時2年前の光景が思い出された。
―2年前―
「裕介君、かき氷食べようよ!」
「シロップ、何味がいいかなぁ??」
淡い桃色の浴衣を身に纏った彼女は普段以上に華やかだった。
彼女の名は山下美優、一つ年下で中学時代 僕と付き合っていた。
祭りの最後に打ち上げられる花火・・・
赤、青、緑の光が夜空を照らす。
「また、来年裕介君と一緒にこの花火を見たいな。」
「約束だよ。」
――
しかし、その約束が実現することはなかった。
今僕は一人だ。
僕は中学卒業のとき、町を離れることを理由に彼女と別れたのだ。
その時僕は、数ヶ月に一度しか町へ帰ることができない僕は彼女を縛り付けることはできなかった。
僕が彼女を束縛することで彼女のすべてを壊してしまうような気がしていた。
でもそれは間違っていた・・・
美優と別れて壊れそうになったのは僕の方だった。
美優と別れたのは彼女を壊さないためではなくて、僕が美優に見放されるのが怖かったから。
自分に自信がなかったから・・・
逃げていただけだった。それらしい理由をつけて。
美優に会えるかもしれない。
もし他に男がいるのならそれでもいい。
一目見るだけでもいい。
この想いがこの祭りへと僕の足を運ばせたのだった。
――
「シロップ、何味がいいかなぁ??」
かき氷の店の傍で立ちすくんでいた僕は、後ろから聞こえたこの言葉で我に返った。
愛しいこの声。振り返ると、彼女はそこにいた。
「久しぶりだね、裕介君。」 彼女は微笑んだ。
2年前ショートだった髪はポニーテールに変わっていたが、あの淡い桃色の浴衣は
そのままだった。
「どうしてそんなに驚いてるの??」
どうやら僕は相当驚いた顔をしていたらしい。当然だ。
「とにかく、かき氷。早く食べよ!!」
彼女は僕の手を引き、かき氷屋の前まで連れて行った。
――
この後2人は、射的、金魚すくい、輪投げ、風船釣りなど夏祭りの屋台を楽しんだ。
そして祭りもクライマックスにさしかかり、まもなく花火が始まるころ僕は美優にいった。
”今まではずっと逃げてるだけだった。自分からも美優からも・・・”
”もっと真正面からぶつかりたい。”
花火が始まった。花火もまた2年前と同じように赤、青、緑の光で夜空を照らしている。
”会えることは少ないかもしれないけど、もう一度付き合ってくれないか。”
花火はラストのスターマインに差しかかる所だった。
「私も、裕介君とまたこうやって花火みたいなぁ」と彼女は言う。
「また来年も一緒に花火見ようね!」
「約束だよ!」
最後の花火があがった時、静かに二人の唇が触れ合った。
彼女とのキスはとても甘い味がした・・・
こんにちは、篠田 佳奈美です。
「夏祭り―約束―」を読んでいただきありがとうございました。
今回の作品が初めての投稿となります。
これからもヨロシクお願いします!!