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スモークキャットは懐かない?  作者: 白い黒猫
ミディアムロースト
30/102

誕生日の贈り物?

 カップルにおいてマンネリが一番の敵という言葉があるが、俺と初芽にとってのマンネリとは何なのだろうか? デートコース? セックスの仕方? 

 平日はタイミングが合えば夜ふたりでデートして、終末は映画や舞台観にいったり、美術館いったり、それぞれの部屋でまったりしたり。二人の状況をみつつ臨機応変という感じ。先日大喧嘩したものの、それ以外はまあ平穏にやってきたと思う。この平穏をマンネリと言うべきか安定と呼ぶのかは悩ましい。関係をさらに発展させるべきなのか? とも思う今日この頃。しかも身近に次のステージに進んだカップルがいると考えざるを得ない。

 韓国人カップルのようにしょっちゅう記念日を祝う訳ではないけどクリスマス、バレンタイン、互いの誕生日当日は無理だとしてもお祝いして盛り上がる。

 そして俺の誕生日のあった日の週末、初芽の予約したお店で美味しい食事をして、誕生日プレゼントをもらい、二人で腕を組み合ってデートして……。

 いつも以上にイチャイチャした時間を楽んでいた。こういう時間を楽しめるなら歳をとるのも悪くないのかもしれない。

 部屋に戻り俺はソファーの前で背後から初芽を抱えるような体制で抱きしめながら。初芽シャンパンを、俺は炭酸水を飲んでいる。そしてつまみ的なものを食べさせあいながら、他愛ない会話を楽しんでいた。

「そういえば、初芽は久保田、大関、高清水、徳丸、澤ノ井、松島って聞くと何想い浮かべる?」

 初芽はウーンと首を傾ける。

「日本酒?」

 俺は溜息をつく。その息が擽ったかったのか初芽が首を竦める。

「違うの?」

「最近。俺が会社で、つるんでいるメンバーの名前」

 初芽が吹き出す。

「そして清酒って、まさか皆、下戸?」

 俺はウーンと考える。

「酒飲んだ事ないから分からない」

 初芽がクスクスと笑っている。

「だったら、そんなポン酒メンバーで何やってんの?」

「珈琲について、オタクなトークかな」

 俺が、そう答えると身体を震わせ笑い始める。

「そのメンバーだったら、日本酒の未来について語り合ってよ!」

 俺は初芽のうなじにキスをする。擽ったそうに身体をよじる。

「やはり、一般的にこの名前が並ぶとそう思われるんだな。ここに俺が入った事でからかわれまくってるよ。『まさかポン酒会の新メンバー、次にそうくるとは思わなかった』って」

 余程ツボだったのか、シャンパンで笑い上戸になっているのか、初芽は笑い続けている。

「で、そのポン酒の会楽しいの?」

 初芽がわざわざ振り向いてそう尋ねてくる。しかしその目が、笑っている。

「社内で金や商売の事絡まずに、珈琲話に

花咲かせられ最高に楽しい。それに企画の仕事も近くで見れて嬉しい」

 初芽の目が優しく細められる。

「良かった。それに正秀も良い顔してる。充実して仕事している男の顔」

 そう言いながら顔を近づけてきて俺にキスしてくる。俺はキスを受けながら初芽の腰を撫でる。

「そう言う初芽は、どうなの?」

 身体を反転させ、俺の頬や耳に、キスしてくる初芽にそう聞いてみる。顔を離し俺を間近で見つめ初芽はニコリと笑う。お酒のお陰で朗らかだ。

「最近は私も充実しているかな~本当に楽しくなってきた仕事が。

 最近ね、丸山部長とも仲良くて飲みにいったりしているのよ。社外でも私の仕事認めてくれる人がいると違うよね」

 珍しく初芽が穏やかな顔で仕事の事話しているのが意外だった。いつも仕事の事聞くと顔をしかめ、話をそらしていた。その初芽が嬉しそうな顔をしている。仕事がうまく行ってない時にプロポーズするのはズルいと思うし、逆に仕事が充実しているという女性にプロポーズはしにくい。

「俺だって認めているけど、初芽の仕事ぶり」

 そう言うと初芽はニヤリとする。

「直で仕事してない人に、言われてもね。

 それにこう言う状況で言われても睦言にしか聞こえない」

「本音なのに」

 そう言いつつ、キスをしていたら説得力もあったものではない。そして手がチャッカリ彼女のブラウスのボタンを外そうと動いている。しかしその動きを阻止される。

 初芽の、猫のような目が細められる。

「今日は、ダ~メ」

「俺の誕生日なのに?」

 そう言うとニンマリ笑う。

「貴方の誕生日だから!」

 そして覆い被さって深いキスしてくる。身体を起こそうとしてもそのままソファーに押し付けてくる。

「だから今日は、私が貴方を愛してあげる」

 そう宣言して、初芽は身体を起こし、俺の服のボタンを外していく。やけにエロチックな状況と色っぽい初芽がヤバイ。ニヤケが止まらない。俺も手を伸ばし初芽の服を脱がせようとするが、『ダ~メ!』と怒られる。俺は手を挙げ逆らう意思はない事を伝えると満足そうに頷き、今度は俺のズボンに手をかけベルトを引き抜き放り投げる。

 いつになく積極的な初芽にドキドキする。こういうのも悪くない。俺はその日だけは彼女の好きなようにさせることにした。

 そう思っていたものの半分生殺しでもあるそのシチュエーションに途中から我慢できず、身体を反転させ受け身でいることを止めてしまい、後で滅茶苦茶むくれられた。しかし男の性分として仕方がない。愛されるよりも愛したい。

 とは言えマンネリ化しないためにも、たまにはこういうのも良かったかもしれない。いつも以上に燃えた事だし、おかげで素敵で思い出深い誕生日になった事を満足していた。



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