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スモークキャットは懐かない?  作者: 白い黒猫
ミディアムロースト
27/102

類は友とかを連れてやってくる?

 久しぶりに社食でお昼を楽しんでいると、前に座っていた眼鏡で小太りの男性かチラチラ俺を見てくる。

 何か言いたい事かあるのかと顔をハッキリ上げ、ソイツの目を正面から見つめる事にする。その男が比較的ラフな格好で白衣を着ている所から、どういう人物か察する。

「君が、清酒くん? 営業二課の」

 俺がこの会社で有名だからというのではなく、首から下げた社員証を確認してからの事のようだ。

「ええ、そうですが貴方は?」

 頷きそう答えると相手は嬉しそうに笑う。

「商品企画部の久保田です。まさか清酒くんが、こういう雰囲気の人とは」

 やはり商品企画部の人だったようだ。今当に俺がやりたい事を堪能している相手に羨ましさも感じながらも、将来的には同僚にはなるかもしない相手に俺は取り敢えず笑顔を作る。

「いや、あの君の事、記念イベントの企画書で知って」

 久保田さんの言葉に、相手が何故話し掛けてきたのか理解する。

「ああ、お恥ずかしいモノを」

 久保田さんは、大きく首を横にふる。

「スゴく楽しかったよ! 本音を言うとやりたかったけどね。君の企画。部内でも皆でそう話題にしてたけど、残念だよ」

 まだ社内審査中の企画の結果。ここで漏らして良いのか? とも思う。俺は自分の企画が賞から漏れたらしい事をバラされて苦笑する。

「珈琲メーカーなのだから、味をトコトン追求したいけど、世間の人がソレを、求めているこというのが難しい所が、難だよね」

 そう久保田さんは溜息をつく。

「まあ、ウチでもコンビニでの『ドコでもカフェ』が売上伸ばしているところからも、お手軽な気分転換的要素が大きいのでしょうね。一般の人にとっての珈琲という存在は」

 久保田さんは苦笑して肩を竦める。

「多くの人にとっては豆の違い、焙煎の違い、そんなの関係ないし、違いも分からないそう言う人が大半なんたよね。苦味や酸味などの多少の好みはあっても、そこにトコトンまでの味までは求めない。無難に風味だけを感じられたらそれで満足という人が多い。

 珈琲好きに強く訴えるもの作りたくても、企業として大勢の一般に売れる珈琲を売る必要がある。企画としてのジレンマなんだよね~」

 本当にこの人は珈琲が好きなのだろうというのが伝わって来て、何か話をしていて楽しかった。

「そんな時に、記念すべき年だからそういう究極に旨い商品を作るべき! という君の企画書読んで嬉しかったんだ! しかし、具体的なブレンドの配分や焙煎の事まで書いたあんなマニアックな企画書、君のようなタイプの人が書いたとはビックリだよ」

 俺はどういう意味で驚かれたのか、分からず首を傾げる。

「そうですか? でも私は元々商品企画志望で入社したんですよ」

 久保田さんは、驚きながらも『ヤッパリ! だよな、何で営業を勿体ない! あのこだわりや知識は』と言ってくれるのは嬉しかった。自分が企画を志望するのは間違いではないと言ってもらえた気がしたから。

 その後、昼休みいっぱいまで珈琲談議を楽しみ、メルアド交換して『企画にも遊びにきてよ!』とう嬉しい言葉までいただいてから別れ、それぞれの仕事に戻っていった。


 これが縁で、望んだ仕事への道が少し見えてきた気がした。実際時間があるときは商品企画部に堂々と顔を出し、コーヒー談義に花を咲かせたり自分の意見を述べたりといった事も楽しめるようになる。そして久保田さんと仲良くなったことで社内でのディープな珈琲マニアとの縁も生まれた。企画部だけでなくコアな珈琲好きの知り合いも増え、会社がますます面白くなった。また直で知り合う機会のなかった大関常務、広報戦略企画部の白鶴部長などとも知り合う事が出来た。趣味で繋がった関係だけに部署や地位の垣根も超えて付き合えるところも面白い。

 しかも企画部とのこの接近は、営業部長の佐藤(さふじ)部長に、希望を言い続けるよりも、俺の企画の能力もここで示せる良いチャンス。二重に意味で美味しいこの状況に俺は浮かれていた。そんな俺が、今さらのようにこの名前の事で社内において違った意味で評判になっていたのを後になって知る事になる。


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