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後編

昨夜の一件を経て、僕らはようやく付き合うこととなった。


今までだってずっと一緒だったし、特別、変わったことはない。


・・・ないと、思っていた。


「何がどうしてこうなる!?」


僕はつっこむしか無かった。


「今日はちょっと、作りすぎたから、たくさん食べて」


僕の前には五重の弁当が広げられていた。


「ちょっと、作りすぎたとかそういうレヴェルじゃないよねこれ。」


「だって、ようやく私たち一つになれたんだなぁって・・・。」


お腹をさすりながら、ちぃちゃんは言う。


「!?昨日、僕らそこまで大人になってないよ!?」


思わず呟く僕の悲鳴に、ちぃちゃんは悪意のある屈託のない笑顔で答える。


「大丈夫、私への愛があれば食べられるわ。」


愛が、試されている!?


「やってやるぁああああ!!」


「きゃー、わたぬきかっこいいー☆」


棒読みの台詞を、糧に食べる、食べる…




僕が半分目を覚ますと、病院の匂い(なんとかナトリウムとか科学の先生が言ってたけど、忘れた)がする部屋でベッドに横になってた。


すぐにお弁当二つ目の途中で食べ過ぎで、保健室に行って寝ていたことを思い出した。


だから、僕は分かっていても、呟くしかなかった。


「知らない、天井だ・・・。」


ぬ、天井



「遊び過ぎよ。」


「あ、はい。」


隣に、ちぃちゃんがいた。


10分ぐらいしか寝てなかったと思うんだけど、ずっと居てくれたのだろうか。


「ごめんね、食べ切れなくって。」


僕らの愛は3分の2ぐらいまでしか、まだ無いのだろうか。


「こういうので試される愛を、私は、愛とは呼びたく無いわ」


「うそつきぃいいいい!!」


1番遊んでるのはちぃちゃんじゃないですかぁあああ


「あれだけ食べてくれて嬉しかったのは、ホント。だけど、それで倒れられたら、意味が無いわ。」


「心配、かけてごめんね。だけど、作り過ぎだよ。」


「ふふ、私もごめんなさいね。」


僕らの間に爽やかな風が吹く。僕も釣られて微笑もうとして、


「帰れ、お前ら。」


保険医が、僕らの時間を呆気なく終わらせた。




僕らが付き合って一月ぐらいが経って、今日もちぃちゃんのピアノを聴く。


夕暮れの赤が、切ないほどの赤、オレンジ、少しの赤紫が、教室を照らして、影を浮かす。


影もまた、光を侵食するほど朧げで、毎日のように見ている風景なのにどこか幻想的で、

こういうのが、逢魔が時、とか言うのかなぁとか。ちょっと知識人ぶってみたりする。


「今日も、何時も練習してるのを聴かせてくれるの?」


「えぇ。ただ、今日は貴方が言う色を付けて見せるわ。」


そう、僕は付き合ってからも聞いているけど、やっぱりどこかモノクロな音にしか聞こえない。


何時もちぃちゃんはそれに「ごめんなさいね。」しか言わなくて、僕が何故か申し訳なくて。


ちぃちゃんは言う。


「だから、目を閉じて。」


耳に集中して聞いても、きっとこの色は変わらないと思うけれど、僕は言われたとおり目を閉じる。



目を閉じて3秒後、唇に感触。


慌てて、目を開けるとそこには、夕陽を背にしたちぃちゃんがいて。


その姿は影でほとんど見えないのに、やはり、光を侵食するかのようにそこに居る安心感を、僕に与えてくれて、


だから、僕は思わず言ってしまう。


「今のこの気持ちを愛と呼ばないで、なんと言えばいいか分からないよ、ちぃちゃん。」


少女はそれに嬉しさを隠し切れずに、


「そう言う時ぐらい名前で呼んでよ、わたぬき。」


「ごめん、好きだよ、千春。だから、何時もの曲を聴かせてくれる?」


「ようやく、私の気持ちが貴方に響いたんだね…。」



青の旋律が流れ出す。


僕は確かに、感じた、僕の心に青が染み込んでくるのを。


彼女が白黒なのではなく、僕に青が足りなかったのか。それは分からない。


だけど、確かに、僕が君の隣で見るこの世界に青が色付いた。


夕暮れの赤が、影に負け、黒に染めていく中、今日の青の旋律は、響く事を中々止めなかった。

どうも、わんだーふぉれすとです。

これにて、4組の恋愛は終わりとなります。

この次は、ファンタジー系の中編小説を予定しています。

ぜひまたお会いしましょう。

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