前編
夕暮れの教室に、ピアノの音色が鳴り響く。
その音色は、驚くほど綺麗なのに。
そう、例えるなら、何気ない空を描いた絵なのに。
空だと分かるのに、青が足りないかのように。
朝焼けの眩い赤でも、夕暮れの切なくなる赤でもない。
青が足りないと分かっているのに、青色が完全に抜け落ちていた。
僕は、彼女がこんなに綺麗な音色なのに、なぜ色が足りていないのか不思議で見つめていた。
見つめていた僕に、演奏を終えた彼女は、訊ねる。
「どうだった?私の演奏。」
僕は、素直に答える。
「とても綺麗な音だった。綺麗な白黒の音。」
「白黒なのは、鍵盤の事なの?」
そうじゃない。
「色だよ。色が、ない。」
「音に、色は無いわ。」
ごもっともです。
「んー。心?が無い。」
「?ピアノに、心は関係ないわ。」
確かに楽譜上では、関係ないけどね。
「僕は、ピアノは弾けないけど、何かが足りてないのは、分かるんだ。」
「心が、足りていないと言うのなら。」
うん。
「貴方が(僕が)、埋めて(埋めて)ちょうだい(あげる)。」
この世界に、色が付けられる日。
◇
チャイムが鳴り、少女は少年の元に。
「今日も、お弁当作りすぎたから、一緒に食べない?」
そう言って、僕に毎日お弁当を作ってくれる。
「何時も、ありがとね、ちぃちゃん」
「べ、別にわたぬきの為に作ったんじゃないんだからね」
無理矢理ツンデレになってきた。
「無理しないで・・・いいんだよ?」
「・・・」
視線を逸らされた。
まぁ、こういう意味の分からない属性付加はよくあることなので気にしないでお弁当を頂く。
「うん、ちぃちゃんが作るご飯は何時も美味しいね。」
「毎日・・・お味噌汁作るわ、私」
お嫁さんの座を、狙っているらしい。
「ちょっと、気が早いんじゃないかな」
「貴方の為なら、私、白みそ派から赤みそ派になるわ。」
人の話を聞いてないだと!?話を強引に変えるしか・・・!!
「わぁ、このタコさんウインナー美味しいなぁ、この卵焼きも美味しいのかなぁ?」
じゃりっ
「!?」
「やだ、私ったらお砂糖の量間違えちゃった★」
分量もそうだけど、砂糖だと・・・!?
「てへっ♪」
「そんな養殖された天然、僕は認めない!!」
また視線を逸らした。
だから、なんでそうやって属性入れようとするんだろう。
「ちぃちゃんは、ちぃちゃんのままが一番可愛いよ?」
「・・・貴方のそういうところは本当に、卑怯よ。」
少女は、静かに俯いて、囁いた。
◇
「さぁ、帰りましょう」
少女は、当然のように言う。だから僕も、当然のように返す。
「うん、だけどなんで自転車無いの?」
少女は言う。
「だって、青春は二人乗りで下校でしょう?」
「だからって学校に自転車置いていくの?」
「朝、貴方に迎えに来てもらえるじゃない。」
生徒指導の先生が黙っていないぜぇ。
「さっ、行きましょう。」
少女はもう、後ろに座って待機している。
僕はサドルに跨り、後ろのお姫様に尋ねる。
「どこまで行かれます?お姫様」
「ヴァージンロードまで、ちょっと」
「そんな気軽に行きたくないよ!?」
この世界は進む。ゆっくりと。
どうも、いよいよ最後の部となりました、わんだーふぉれすとです。
まぁ、つながりほとんど無いんですけどね(笑
最後までぜひお楽しみ頂ければと、思います。
次予定:11/27




