Conspiracy どうにかする方法
で、今に至ると。
「(回想長かったなあ……)」
「(いやいや上宮、何を言い出しているんだ?)」
奇妙な目で見てくる飯島に、分かりきった返事を返す。
「(決まっているじゃないか、現実逃避がてらこれまでの経緯を振り返っていたんだよ。随分めちゃくちゃだったけど)」
「(……それは同感だけどね、上宮君。さっきから僕たち、救援信号を送られているよ?良いの、放っておいて?)」
困ったような安藤の声に、内心溜息をつく。気付いているから現実逃避しているに決まっているでしょう。
安藤の言うとおり、さっきから仲井と美樹が必死で視線をこっちに送っている。冷静なままの、唯一の4人だからだろう。
だが、2人とも。冷静という事は、どうでも良いと思っているという事で、事態の収拾に乗り出すほど積極的じゃないんだよ。
「(じゃあ、どうする?助ける方法、あるのか?)」
「(う、それは……)」
言葉に詰まる安藤に、肩をすくめてみせる。
「(無いだろ。だから俺も放っておいているんだよ)」
「(ダチを見捨てるか……冷てー奴)」
「(しょうがないよ、飯島君。私だって、美樹を助けられないし)」
飯島の揶揄に、澪のフォロー。この辺りの割り切りって、男女の差なのかな。
「(でもさ、涁。涁はどう思う?出し物、どうするべきか)」
澪の質問に、その場で思い付いた事を答える。
「(んー……、俺は執事喫茶でも別に良いけど、確かに男子は集まらないだろうな。男女それぞれ集められるようなものがベストだろうけど)」
「(男女両方?できるか、それ?)」
飯島の怪訝そうな声。単なる思い付きだって。
「(外部の高校からも来るから、女子も少なくはないだろ。両方集められる方が良いだろ。例えば執事とメイド両方とか。自由にコスプレさせるのも有りだと思うけど)」
澪のお姫様姿と、安藤の女装を置いていれば、それだけで問題無さそうだけど。
このクラスには、他にも王子服が似合いそうだったり、メイド服が似合いそうだったりと、コスプレ向きの方々が多数いらっしゃる。
その皆様に活躍していただこうかなー、なんて。
「(え、それって、みんな嫌がらない?)」
安藤がちょっと振り返って聞いてきた。心配そうな顔。というか、自分が嫌なんだろうな。
「(みんなでやれば怖くない、ってやつか?お祭り騒ぎだし、恥ずかしくはないと思う)」
「(でも涁、コスプレって、下手な格好するといたいよ)」
その通りだね、澪。例えば飯島が趣味だからって薄幸の王子様の格好なんかしたら、不自然だもん。
「(その辺りは、みんなで話し合うというか、投票制というか。裁縫が得意な人が、どれだけいるかにもかかってるけど)」
そこまで答えて、これは仮定の話だと気付いて苦笑する。いつの間にか、結構マジになっていた。
「(……まあ、再投票するのが1番じゃないか?)」
「いや、俺は上宮に賛成する!」
「な、え!?」
何だか勢いづいた声に、思わず声がひっくり返る。危ない、素が出かかってた。
視線を前に向けて、更に慌てた。クラスメイトの視線が、私に集中していた。
そこで、小声の筈の会話が、丸聞こえだったと気付く。
「(涁、声良く通るもんね)」
後ろからの小声に振り返ると、澪がいたずらっぽく笑っていた。その笑顔で、ようやく謀られたと悟る。
「(……澪!)」
小声で文句を言おうと、時間は取り戻せない。
「じゃあみんな、多数決を取るぞ。上宮の言うとおり、投票制のコスプレ喫茶がいい人!」
勢い込んで聞く早﨑の声に、全員が応えた。
「ええ……」
良いのか、そんなので。その場しのぎとしか思えないんだけど。
というかこれにみんな賛成するって、実は皆さんコスプレ好きですか。
「上宮やる!」
「やっぱ、考えることが違うね!」
「よっしゃ、これで女帝に許可を頂ける……!」
上がるのは歓声と、やる気にあふれる声。まあ、決まったなら良いけどさ。
「誰に何着てもらおうかな……」
「ふふふ、久々に、メイクの腕が鳴るかも……」
「あれ縫ってこれ縫って……」
あれ。既にいろいろ妄想していらっしゃる女子の皆さんが。
…………マズイ。何かを失敗した気がする。