Exchanging 同情の応酬
無事対面式が終了して、試合の時よりも遙かに強い疲労感に襲われつつ講堂を去る私を、江藤が出迎えた。
「……上宮。お前、入学してから苦労続きだな」
開口一番に飛び出た、同情の滲み出た言葉に、溜息で返した。
「何かに取り憑かれているとしか思えないな、まったく」
実際、去年の12月から散々だと思う。
「可能性あるな。お祓いでも行ったらどうだ?」
江藤の言葉に苦笑を漏らす。お祓いで何とかなれば良いけど。
「……神頼みすることでもないな。まあ、流石にもうないだろう」と信じたい。
「……上宮、それは希望的観測っていうんだぞ」
「うるさい。そんなに他人の不幸がおもしろいか」
半眼になって言い返すと、江藤がにやついた。
「何か、上宮がトラブルで四苦八苦してるの、見ていて飽きないんだよな」
……いつか、唐辛子入りチョコレートでも騙して食べさせよう。
「ところで上宮、校歌聞いたか?」
「ああ、上手かったな。レベル高いな、ここの学校」
「噂じゃ、部活の勧誘終わったら練習させられるらしいぞ。リーダは河合先輩だそうだ」
それはそれは、結構な練習内容になりそうだ。
適当な感想を抱いた所で、江藤が嫌そうな顔をしていることに気がついた。そして思い出す。
「ああ、江藤は歌、苦手だったな」
「うるせえ。どうせ明日から鬱だよ」
「はは。まあ、頑張れよ」
さっきの仕返しで、爽やかな笑みでそう言ってやった。江藤がやや苦い顔をする。
「……ん、あと五分で授業か。早いな。じゃあな、江藤」
「おう」
軽く手を振って、私たちは別れた。
……教室で似たような会話をした事は、言うまでもない。