Audience 平和な朝
教室に入ると、どういう事か、元弥丘中のメンバが勢揃いしていた。澪と飯島、安藤までいる。
「あ、彬君、おはよう!」
真っ先に気付いた麻菜に手を振り返し、鞄を置いてから歩み寄った。
「おはよう。どうしたんだ、皆揃って?」
訪ねると、江藤がにやにや顔でのたまった。
「そりゃあ、昨日の上宮の勇姿について、語り合ってたんだよ。昨日はあのまま部活で、皆でゆっくり話す暇は無かったからな」
……暇な奴らだ、と思った私に、罪は無いと思う。
「勇姿、ってなあ……」
「いや、上宮君、すっごくかっこよかったよ!」
「ホントにねー。蹴り凄かったよ」
「始めに2点連続で取られたときには、はらはらしたけどね」
麻菜、美樹、香奈の感想に、曖昧な笑顔で答えた。
「……思わぬ結果になったけどな。まあいいさ。良い先輩も多そうだし」
「そうなんだ。良かったね、涁」
「まあ、な」
澪の言葉に、笑みを返した。
澪には昨日、メールをもらった。
『良い試合だったよ。よかったね、涁』
ただそれだけだったけれど、言いたい事は十二分に伝わった。澪は、事情を知っているから、いろいろ気にしてくれていたみたいだ。ホントの事情を知って、喜んでくれる人がいるというのが、素直に嬉しかった。
「兄貴は残念そうだったけどな。上宮も、あそこで一試合してみせるくらいの根性見せろよ」
無責任な事を言う飯島に、顔を顰めて見せた。
「絶対嫌だ。文字通り吹っ飛ばされるんだぞ。勝ち目も無いのに吹っ飛ばされるような趣味は無い。……入るからには、どうせまた相手させられるんだろうけどな」
「それは嫌だよね。荻原先輩、本当に強いんだ……」
安藤がしみじみとした口調で呟く。麻菜が続いた。
「上宮君も、凄く上手なのにね。それでも歯が立たないって、本当に強いんだ」
「俺は、そこまで上手いわけでも無いよ。荻原先輩が強いのは事実だけど」
軽く首を振って見せたとき、チャイムが鳴った。
「げっ、ヤベ。じゃあ、俺教室戻るわ」
江藤がそう言って、教室を去った。麻菜、香奈も慌てた様子でそれに従う。入れ違いに進藤先生が入ってきた。