Review 試合の後で
サポータを外して、歩み寄る。仲井は、悔しげながらも、どこかすっきりとした表情で手を差し出してきた。
「荻原先輩に注意されてたのに、見事にやられたよ。上宮、足上がるんだな」
「まあな」一応女子なんで。
「……上宮。ありがとな、俺の我が儘に付き合ってくれて。おまえはやめたがってたのに」
いきなり仲井が頭を下げてきた。礼を言われることでは無いので、笑って首を振る。
「いや、俺も楽しかったよ。仲井、強いしな。良い思い出になった」
「はい、二人ともお疲れ〜。良い試合だったね」
「……部活中ですよ、荻原先輩」
二人の会話に割って入ってまたまた抱きついてきた荻原先輩を、無造作に振り解く。邪険と誹られようとかまうものか。こっちは試合直後で暑いんだから。
「それにしても涁、戦い方変えたね。あんな慎重派だった?」
やっぱり気づかれたか……
先輩の言う通り、私は今までもっと突っ込んでいくタイプだった。相手の動きに合わせて……というのが、どうも苦手だったから。
けど、まさか私だって、男子相手に突っ込んでいくほど馬鹿じゃ無い。だから仕方なく、全国大会で見たスタイルを、付け焼き刃どころか見よう見まねでやってみた。
勝ち目が限りなく0に近いと分かっていたので、最初の2,3点は捨てる気でいた。男子の速さに慣れることを最優先にしていた。…慣れても避けられるとは思っていなかったけど、まあ、駄目元、という事で。
「それにしても、仲井君。ダメじゃない、あんな見え見えの引っかけにかかっちゃ。足はフェイクって、思い込んだでしょ」
「……すみません。あの至近距離から足がくるとは思わなくて」
モロ悔しげな仲井。やってみたかいがあったというものだ。