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Confession 本音

 翌日。



「忘れていた……」

「あん?体操服忘れたのか?」

「いや、持ってる」

「じゃあ、何を忘れたの、上宮君?」

「……気にしないでくれ」



 今日は身体測定。体操服に着替えて教室集合との先生の指示に、私は思わず言葉を漏らしてしまっていた。



 あの時は部活の事で頭がいっぱいで、失念していたけれど。



 ……身体測定って、着替えるんだったね。確か男子は、上半身裸で内科検診とか、受けるんだよね。



 中3の3学期は受験前で体育が無い。という訳で、幸運にも着替えは無かったのだけど。



 ……逃げられない、よね。



 無言で背中を叩かれた。誰が、というのは、考えるまでも無い。



 ……うん、諦めるよ。



******



「おっし、昼飯だ。食おうぜ、上宮」


 数時間後。全ての測定、検診が終わって(一言で終わらせる理由は……察して欲しい)、再び制服に着替えて教室に戻ると、妙に嬉しそうな飯島に声を掛けられた。


「ああ。……って、何か量が増えていないか?」

「だってここから毎日練習参加する事になったんだぜ?これでも足りねえくらいだ」

「僕、これだけだと足らないから、パン買って来る……」


 ……あの小さな体のどこに、そんなにたくさん入るのだろう……

 男子の謎である。





「んで?上宮、部活決まったんか?」


 猛スピードでご飯をかっ込みながら飯島が尋ねて来た。一応気を使われていたようだ。

 黙って首を振ると、飯島が眉間に皺を寄せた。


「……何つーかさ。上宮、選ぶ気ある?」

「……ある」

「マジで?中学のときみたく、積極的に探そうとしてるか?なんだかんだ理由つけて、選択肢減らしてねえ?」


 ……図星だった。どうして分かるんだろう……


「見てりゃ分かる。要するによ、上宮。お前結局、空手部に―」

「よしてくれ」


 言葉を途中で遮る。それ以上は聞きたくなかった。



「前にも言ったけど、俺は新しい事を始めたい。で、後悔したくないから、いろいろ見て回っているし、マイナス要素は出来るだけ減らしたいと考えている。空手を続ける気は、無い」



 例え……やりたいと、思っていても。


 認める。昨日一日回っていて、空手以外の選択肢に魅力を感じられない自分に気付いた事を。部活動紹介で、一番楽しそうと思ったのが空手部だった事を。


 それでも……続けるわけにはいかないんだよ、飯島。



「……ふーん。まあ、いいけどな」

 そう言って飯島が立ち上がった。どうやったらそんなに速く食べられるのか、既に弁当箱は空だった。



「ちっと足らねえから、食堂で唐揚げでも食ってくるわ。んじゃな」

「まだ食べるのか……」

「上宮が少ねーの。俺は運動部男子としては、平均」

 飯島は手をひらひらと振って、教室を出ていった。



「……上宮君。飯島の言った事、余り気にしないで、満足できる部活探しなよ。僕は、迷うのも良い事だと思う」



 今までずっと黙って食べていた安藤が声を掛けて来た。引き摺っていない事を見せる為に、笑顔を浮かべてみせる。



「ああ。今週中はずっと見学できるみたいだし、ゆっくり考えるよ」



 何となく感じる視線をそのままに、私と安藤はそのまま昼食を食べ続けた。


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