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Attention 人目と叱責

「……なんか私達目立ってない?」

「うん。……視線が集まってるよね」

「うう、いづらいなあ……」

「……おい松井、どうしてくれんだこの状況。兄貴も気付いちまったじゃねえか」

「もー、飯島君しつこいなあ。いいじゃん別に。麻菜も香奈も安藤君も、気にし過ぎー。堂々としてたって問題ないよー」

「……お前が全ての元凶だと思うぜ?松井」

「うわっ、江藤君ひどー。涁君、彼ひどいと思わない?」

「俺に振るな……」



 弓道場前。美樹が飯島と安藤を引き摺って廊下を歩いていると、弥丘中メンバに出くわした。それぞれ目をつけている部活に行こうとしていたのを、どうせならばと美樹が強引に弓道部への道連れにしたのだ。


 あんな部活動紹介をした部活に早々人が集まるはずも無く。これだけの大所帯で見学に来た私達は、思いっきり目立っていた。



 更に、メンバも良くない。

 澪は男女どちらから見ても可愛いし、麻菜や香奈、美樹は、タイプは違えど魅力的な女の子。

 江藤や飯島は典型的なスポーツマン。江藤も中学の頃から一部の女子に熱い視線を送られていたし、飯島がモテるであろう事は雰囲気を見れば分かる。一応私も女だし。

 そして安藤は、「カワイイ男の子」である。女子が放っておくはずも無い。



 目立つのは不可避。そしてそれを実現をさせたのは、間違いなく美樹だ。正直、江藤に賛成している。



「……他人事みてえな顔をしているが上宮、目立ってんのの大部分はお前のせいだぞ?」

「江藤、その主張には全力で抗議するぞ」



 何で私なんだ。さっきから視線の行き先を辿れば、大抵は澪か漫才している美樹と江藤、後は女性陣の品定めの視線が安藤、飯島、江藤に各々のタイプに従って集まっている。私はどっちかというと、影が薄い方に分類される。


 ……いやまあ、あえて人目を避けられる位置に立って、可能な限り気配を薄くしているのは認めるけど。だってこの1年のくせに目立っているメンバと一緒にいて平然としていられる程、図々しい性格していないし。



「いや、上宮……。その位置をさりげなく確保しやがったお前に思う所は多々あるが、そもそもここに来るまでに俺達が目立ちまくったのはお前のせいだぜ?」

「だから、なんで俺なんだよ。全員等しく目立ってたって。大体、本当に俺1人が目立っていたなら、既に俺は捕まってるじゃないか」


 誰に、とはわざわざ言うまい。


「……説得力あるね、上宮君。というかそんなに捕まりたくないんだ……」

 安藤がやや呆れたような口ぶりで言う。

「断るのに苦労すると分かっているからな」

「まあ、そりゃそうかも知れねえけどよ……」

「江藤君はラグビー万歳でも、涁君はそうじゃないってことだねー。っていうか、江藤君がまだラグビー部に捕まっていないってことがちょっと意外だったりー」



 この漫才コンビは……まだ目立ちたいのだろうか。



「お前がこんな所に引っ張って来るからだろ!俺は速攻で入る気でいたんだぜ!?」

「そりゃ俺もだな。「何で直ぐ入らなかったんだ」とか、後で絡まれそうだ」

「今週は見学だけって名目なんだから、問題ないでしょー」

「てめえ、反省の色無しかよ!」



「そこ、うるさい!」



 遂に弓道部が我慢の限界に達したらしい。講堂に来ていた唯一の女子部員―たぶん副部長―が怖い顔でこちらを睨みつけ、歩み寄って来た。


 止めるタイミング逃しちゃったな……

 ちょっと反省しつつ、更に目立たないように一歩下がる。何となく咎めるような雰囲気を感じたけれど、だって私は悪くない。



「……貴方、上宮君ね?新入生総代なんだから、少しは自覚を持って周りの子を注意しなさい」

 ……なのにこうやって絡まれやすいんだ、私は。今日だけで何回絡まれた事か……


「……すみません。ご迷惑をおかけしました」

 とはいえ、この威厳という言葉がよく似合う少女には、頭を下げる事しか出来なかった。怖い……


「……それにしても貴方達、随分な大人数だけど、まさか全員入部希望ではないわよね?入る気もないのに冷やかしに来て、練習の邪魔をするなんて、何を考えているの?もう高校生なのだから、自覚を持ちなさい」

「……すみませんでした」

 全員の声が揃った。謝らざるを得ない程の正論と迫力。マジで怖い……


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