Plan 放課後、部活見学
「さて皆さん、明日は身体測定や内科検診等があります。体育着を忘れないようにして下さい。それから、明日クラスの委員を決めますので、興味のある人は考えておいて下さい。……まあ他には連絡する事もありませんし、部活の見学が待っているでしょうから、これで終わります。起立、礼」
進藤先生の相変わらずの超短ホームルームが終了し、私達は解放された。
「涁君、部活見学どうするのー?」
美樹の問い掛けに、肩をすくめて返事の代わりにした。
「じゃあさー、一緒に弓道部見に行かない?」
「……いや、遠慮する」
入る気がないのに見に行ったら、たたき出されそうだ。
「けどさー、どっか行かないと空手部がここまで来ると思うよー?」
「……そこまではしないだろう」
「甘いぞ上宮、兄貴の話では、そこまでするぞ、この学校」
飯島の言葉に戦慄した。やばい、どうしよう。
「……帰る」
「あー、逃げたー」
からかう美樹。どうせ私はへたれですよ!
「無理だよ涁。ほら、見て」
澪の言葉に窓から校庭を見て、絶句した。
「何だ、あれ……」
校舎から校門までに至る道は、テントで埋め尽くされ、ユニフォームを着た男女がうろついていた。
「つまり帰ろうとすれば、絶対どこかに捕まる、てことだね」
安藤がややびびった声でそう言った。他に考えようはない。
「空手部もいるだろうし、あの道を通るのは自殺行為だぜ?無難な所の見学でお茶を濁すのが正解だろ。第一、見学行かなきゃ空手を続けないにせよ、どこにも入れないぞ」
飯島が正論を吐いた。良いよね、行く所が決まっている人は!
「どうしろって言うんだよ……」
思わず弱音が漏れる。澪がクスッと笑った。
「涁は美術部とかコーラス部って柄じゃないでしょ?野球や陸上に興味がないなら、美樹と一緒に弓道部見学したら?」
「ええっ、上宮、野球部に来いよ!空手の動体視力を活かそうぜ!」
「いや、陸上だって楽しいよ」
飯島と安藤の現金な勧誘は無視。
「……弓道部に行く。まあ、見学で終わるだろうけど」
「おーし、行こっか!……っていうかさ、澪も飯島君も安藤君も、行くとこ決まってるなら一緒に回らない?ひやかしひやかし」
美樹の誘いを、飯島が真っ先に断った。
「俺は行かねえぞ。兄貴にゃ会いたくねえ」
「普段家で顔位合わせるだろ?」
妙に嫌がる飯島にそう聞くと、顰め面が返って来た。
「……あのな上宮、学校で会いたくねえだろ、兄弟なんて」
「そういうものか?俺は弟が丁度3つ下だからそういうのはよく分からないけど」
「そういうものなんだよ」
複雑らしい。大変だね、男兄弟って……
「えー。いいじゃん別にー。ほら行こーよ。大体、見学の時に部長さんが来るとは思えない。練習あるんだからさー」
そう言って美樹が、飯島と安藤の腕を掴んで歩き出した。
「ほらほら、行こーよ。皆で行けば怖くない、ってねー」
「お前は元々怖がってねえだろーが」
「いや、僕は陸上部に……」
飯島と安藤の抗議を無視して、美樹がそのまま廊下へと出て行った。
「何してんのー、涁君、澪。行くよー?」
「皆で行く事決まっちゃったね……」
「……まあ、美樹は昔からああやって皆でわいわいやるのが好きだから」
苦笑気味に言葉を交わして、私達も後を追った。