逃避行という名の雨宿り
小学校を卒業して、俺と沙奈は同じ中学に進学した。
中学でも同じクラスだった。
イラストを描くのが好きだったアイツは迷わず美術部に入部した。
俺はというと、ヲタク極めてたからパソコン部に入部した。
趣味を満喫できていいじゃん!なんて呑気に構えてたら、数カ月経って嬉しそうに報告してきた。
「あのね!……好きな人ができたの」
「へっ?」
きっと、そのときの俺はマヌケな表情をしてただろう。
「何でも、明人には言ってきたじゃん!だからちゃんと言っておきたくて」
「へーよかったじゃん、どんな人?」
聞きたくないのに、口が勝手に動く。
「美術部の先輩!やさしくて、カッコイイんだ〜」
沙奈の目がハートになっている。
なんだよ、大きくなったらペンギンと結婚するって言ってたのに…
口に出ていたらしく、
「それは小学生の頃の話でしょ?やめてよね〜」
「あっごめん。」
「だからね、しばらく一緒に帰れそうになくて」
「そうなんだ、ヨカッタネ」
ギクシャクしながら居た堪れなくなって、教室をあとにした。
沙奈とは教室で必要最小限の会話しかしなくなっていた。
帰ろうとして、呼び止められた。
「明人!」
申し訳程度に、セーターの裾を掴まれた。
「っ、沙奈、あっえと桜庭さん?」
「なんで苗字?あの、たまには一緒に帰らない?」
「えっでも先輩……」
「いいの!カラオケ行かない?」
「はぁ?」
駅前のカラオケなんて来るの何年ぶりだ?
前に来たときは沙奈のお母さんも一緒だった。
「何、歌おうかな〜」
「で、何だよ話しって」
「話しは、その……先輩のことで」
「ケンカでもした?」
「そんなんじゃないけど、絵のこととなると熱くなる人でね、だからちょっと怖くなっちゃって」
怯えた様子で話す沙奈を見て胸が苦しくなった。
「……俺なら絶対そんな表情させないのに」
「明人!」
沙奈に抱きつかれ、制服のブレザーの肩が涙で濡れた。
はっ、まるで雨宿りだな。
雨が止んだらまた元のところに戻るのだろうか。




