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逃避行という名の雨宿り

作者: 花萌ゆる
掲載日:2025/12/04

小学校を卒業して、俺と沙奈は同じ中学に進学した。

中学でも同じクラスだった。

イラストを描くのが好きだったアイツは迷わず美術部に入部した。

俺はというと、ヲタク極めてたからパソコン部に入部した。

趣味を満喫できていいじゃん!なんて呑気に構えてたら、数カ月経って嬉しそうに報告してきた。

「あのね!……好きな人ができたの」

「へっ?」

きっと、そのときの俺はマヌケな表情をしてただろう。

「何でも、明人には言ってきたじゃん!だからちゃんと言っておきたくて」

「へーよかったじゃん、どんな人?」

聞きたくないのに、口が勝手に動く。

「美術部の先輩!やさしくて、カッコイイんだ〜」

沙奈の目がハートになっている。

なんだよ、大きくなったらペンギンと結婚するって言ってたのに…

口に出ていたらしく、

「それは小学生の頃の話でしょ?やめてよね〜」

「あっごめん。」

「だからね、しばらく一緒に帰れそうになくて」

「そうなんだ、ヨカッタネ」

ギクシャクしながら居た堪れなくなって、教室をあとにした。

沙奈とは教室で必要最小限の会話しかしなくなっていた。

帰ろうとして、呼び止められた。

「明人!」

申し訳程度に、セーターの裾を掴まれた。

「っ、沙奈、あっえと桜庭さん?」

「なんで苗字?あの、たまには一緒に帰らない?」

「えっでも先輩……」

「いいの!カラオケ行かない?」

「はぁ?」

駅前のカラオケなんて来るの何年ぶりだ?

前に来たときは沙奈のお母さんも一緒だった。

「何、歌おうかな〜」

「で、何だよ話しって」

「話しは、その……先輩のことで」

「ケンカでもした?」

「そんなんじゃないけど、絵のこととなると熱くなる人でね、だからちょっと怖くなっちゃって」

怯えた様子で話す沙奈を見て胸が苦しくなった。

「……俺なら絶対そんな表情させないのに」

「明人!」

沙奈に抱きつかれ、制服のブレザーの肩が涙で濡れた。

はっ、まるで雨宿りだな。

雨が止んだらまた元のところに戻るのだろうか。

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