4話
翌朝、美月は出社した。
社内はいつも通りだった。
でも、自分の中だけが、まるで別世界だった。
一ノ瀬くんは、いつも通り「おはようございます」と言った。
でもその声は、昨日より少しだけ近くて、少しだけ甘かった。
美月は、いつも通り「おはようございます」と返した。
でもその声は、昨日より少しだけ震えていて、少しだけ照れていた。
社内チャット「Pipin」では、非公式グループ『顔面国宝観察会』がざわついていた。
【美月】:みんな、報告。推しが彼氏になりました。
【同僚A】:え!?え!?え!?
【同僚B】:え、推しって…あの一ノ瀬くん!?
【美月】:そう。顔面に耐えられなくなって、暴走しました。
【同僚C】:暴走って何したの!?
【美月】:告白という名の感情爆発。
【一ノ瀬】:(スタンプ:照れてるペンギン)
【同僚A】:うわあああ!!!尊い!!!
【同僚B】:顔面偏差値で恋愛脳焼き切れた人、初めて見た。
美月は、スマホを見ながら笑った。
こんなふうに恋が始まるなんて、思ってもみなかった。
恋は、もっと静かで、もっと計算されたものだと思っていた。
でも違った。
恋は、爆発だった。
恋は、暴走だった。
恋は、耐えられないほどの感情だった。
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美月は、恋に落ちるまでにたくさん耐えた。
でも、耐えすぎて——壊れた。恋は、耐えるものじゃなかった。
恋は、暴走するものだった。これからは、見つめることにした。そして、彼もまた——
“見られる”ことに、少しだけ慣れていく。




