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美月はもう耐えられない  作者: 双鶴


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3/4

3話

「…これ、僕の顔に耐える方法って書いてあるんですけど…僕、毒ですか?」


一ノ瀬くんは、真顔だった。

美月は、顔面蒸発寸前だった。


社内プレゼン用のフォルダにこっそり保存していた“秘密の資料”——『推しの顔面に耐える方法』。

それを、誤って一ノ瀬くんに送ってしまった。

よりによって、彼本人に。


「ち、違う!違うけど!これは…その…自己防衛で…!」


「自己防衛…?」


「いや、あの…あなたが悪いわけじゃなくて…顔が…いや、顔が悪いって意味じゃなくて…その…顔が良すぎて…」


「……?」


「だから、耐えられないんです!!」


言ってしまった。

美月は、ついに“耐える”をやめた。


沈黙。

社内の空気が、止まった気がした。

彼は、ぽかんとしていた。

美月は、息を切らしていた。

心拍数は、たぶん140を超えていた。


そして、彼は笑った。


「よかった。僕も、美月さんのこと、好きです。」


「……え?」


「推しって、遠くから見てるものですよね。でも僕は、美月さんの隣にいたいです。」


その瞬間、美月の“推し”は“恋”に変わった。

資料は爆発四散。理性は蒸発。恋が、始まった。


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