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美月はもう耐えられない  作者: 双鶴


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2/4

2話

美月は、恋に落ちないための努力を始めた。

それは、社内の誰にも知られてはいけない、孤独な戦いだった。


まず、彼の声を聞かないようにイヤホンを常備。

「おはようございます」の破壊力は、朝の脳に致命傷を与える。

次に、会議では彼の隣にならないように席を調整。

彼の横顔は、資料の内容をすべて吹き飛ばすほどの威力がある。

昼休みは、彼が来るタイミングを避けてトイレに逃げる。

社内チャット「Pipin」では、彼の写真が飛び交うが、通知はオフ。

彼が話しかけてきたら、目を合わせずに「はい」とだけ答える。


それでも、彼は言う。


「美月さんって、いつも僕にだけ冷たいですよね」

「えっ、そんなことないですけど…(あるけど)」


彼は天然だった。

そして、なぜか美月にだけ懐いてくる。


「美月さんの資料、いつもわかりやすくて助かってます」

「いえ、そんな…(やめて、褒めないで、顔が近い)」

「今日の服、似合ってますね」

「えっ…(それは…反則でしょ)」


美月は、限界だった。

このままでは、恋に落ちる。

恋に落ちたら、仕事が終わる。

仕事が終わったら、人生が詰む。


だから、美月は“資料”を作った。

タイトルは——


『推しの顔面に耐える方法』


内容はこうだ。


• 目を合わせない(視線は45度斜め下)

• 声を聞いたら深呼吸(心拍数調整)

• 社内チャットはスタンプのみ(文章は危険)

• 推しの顔面を“壁紙”と認識する(背景化)

• 褒められても「ありがとうございます」のみ(感情を挟まない)

• 彼の笑顔は“自然現象”として処理する(感情を持ち込まない)



この資料は、社内プレゼンのフォルダにこっそり保存された。

誰にも見られるはずがなかった。

なのに——


誤送信。


よりによって、送信先は一ノ瀬くん本人だった。


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