私はあなたを救いたい
リディアが一人呟いている頃、アリアも同じ夜を過ごしていた。
※アリア視点です。
その日の夜。
アリアは屋敷の温室にいた。アリアはいつからかこの温室が気に入り、カリスが特別に改装を施してソファなどの家具を置いてくれたので、この温室はアリアの隠れ家みたいになっていた。
温室の花々に囲まれて座り、アリアはホッと息をついた。
「リディア様、私を憎む目がお辛そうだったな……」
リディア様は、私にどうして欲しいのだろう?
カリス様を、どうしたいのだろうか?
あの小瓶には、何が入っていたのかしら?
カリス様が「とても恐ろしいもの」だとおっしゃっていたけど……
恐ろしいもの……
今の私にとって恐ろしいのは、実家にいた頃の侍女たちの冷たい視線でも、母からの叱責でもなくて。
ーー今はカリス様を失うのが本当に怖い。
カリス様は時々怖くて、意地悪になる時があるけれど……
誰よりも私に愛を伝えてくれる。
ふと、温室の天窓から射す月明かりが、花々の葉を透かして白く揺れた。
その光が、まるで優しく包み込むように私の肩を照らした。
でも、どうしてかしら?
「……私はリディア様を見捨てる事ができない」
なぜならリディア様も、私と同じ人ーーカリス様を見ているから。
目を閉じると、花々の香りがやわらかく胸を満たした。
その中に、カリス様の温もりを感じた。
「……リディア様、私はあなたを救いたいの……どうしたらあなたは救われるの?」
呟きが静かな温室に溶け、アリアの指先がひとつの花弁に触れる。
その花は、夜の静寂の中でゆっくりと揺れた。
リディアとアリアは対照的ですね。
皆さんはリディアとアリア、どちらが好きですか?
私はどちらも好きです。
ここまでお読みくださってありがとうございました。




